〈パリ五輪〉スケートボード世界ランクTOP10に日本人が5人…それでも日本がメダルを獲得するのが簡単じゃないワケ「堀米雄斗は土壇場で…」
文春オンライン / 2024年7月27日 6時10分
![〈パリ五輪〉スケートボード世界ランクTOP10に日本人が5人…それでも日本がメダルを獲得するのが簡単じゃないワケ「堀米雄斗は土壇場で…」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_72195_0-small.jpg)
堀米雄斗 ©︎Yoshio Yoshida /World Skate
東京五輪でスケートボードは計5個のメダルを獲得し、快進撃を見せた。メダルの獲得という観点でみれば、パリ五輪でも最注目競技のひとつと言える。
なぜなら日本は予選大会を通じてどこよりもハイレベルな代表権争いを繰り広げてきた国であり、出場するだけで「メダル候補」といえるほど充実した陣容を誇っているからだ。
ここではその根拠と言える各種目の世界ランクをベースに、注目選手や見どころ、メダル争いに焦点を当てていきたい。
層は厚いが大本命は不在
その前にまずはパリ五輪におけるスケートボード競技の出場枠から話していこう。
フランスへの開催国枠と、国際オリンピック委員会(IOC)の三者委員会で決定されるユニバーサリティ枠を除いた80枠を本大会までに行われたストリート9戦、パーク6戦の合計ポイントで争ってきた。
ここでポイントとなるのが1国あたりの出場可能人数で、男女各3名までとなっている。このレギュレーションの場合、強豪国ともなると世界ランクトップ10に入っていても出場を逃してしまう選手が出てくるのだが、日本はその典型例となっているのだ。
まず最注目競技である男子ストリートから見ていくと、世界ランク1位に小野寺吟雲(おのでらぎんう・14)、2位に白井空良(しらいそら・22)、3位に堀米雄斗(ほりごめゆうと・25)とトップ3を独占しているので、これだけで出場枠が埋まってしまう。他にも5位に根附海龍(ねつけかいり・20)、10位に佐々木音憧(ささきとあ・17)とトップ10に5人もランクイン。さらに17位には青木勇貴斗(あおきゆきと・20)もランクインしている。
スケートボード発祥の国であるアメリカですらトップ10に3人しかランクインしていないのだから、いかに層が厚いのかがおわかりいただけると思う。
となると、当然メダル独占への期待も膨らむが、実情はそう簡単にはいかないだろう。
メダル独占への期待も膨らむが、そう簡単にはいかないワケ
男子ストリートは日本勢全員にメダルの可能性があるが、言い換えれば絶対的な大本命がいないということの裏返しでもある。世界のスケートボードシーンは2010年代末より堀米雄斗とナイジャ・ヒューストン(アメリカ代表)の2強時代が続いていたが、東京五輪以降は下の世代が急成長を遂げ、群雄割拠の時代へと突入してきた。
パリ五輪ではより成熟したアメリカ代表で東京五輪の銅メダリスト、ジャガー・イートンやポルトガル代表のグスタボ・リベイロ、地元フランス代表のオーレリアン・ジローらも十分優勝の可能性はあるだろう。
最年少記録を更新する小野寺吟雲
対して日本勢はと言うと、東京五輪にも出場している白井空良は経験を積み重ねたことで精神面が大きく向上、以前のような危うさは消え、最近は安定した力を発揮している。もともとハマった時の爆発力は随一なだけに、今回こそは本番に照準を合わせてくるだろう。
次に日本選手権やX Gamesの優勝、世界選手権の表彰台入りなどで次々と最年少記録を塗り替えている小野寺吟雲。
彼の特徴はものすごく複雑な回転をするトリックでも、あっさりと乗ってしまうところ。それは業界関係者の多くが「まるでゲームを見ているようだ」と語るほどで、特にラン(自由に45秒間滑る競技)では彼ほどあらゆるところでクルクルと回す選手はいないため、無類の強さを誇る。
唯一の課題はベストトリックで点数が伸び切らないところか。大人と比べると癖のある大きなセクション(障害物)への対応に体格差が出てしまうところもあるが、そこに関してもトリックやセクションの使い分けで十分に対策をしてくるだろう。
“スーパースター”堀米雄斗の時代が続くのか
では最後に前回の東京五輪での金メダリストの堀米雄斗。彼はパリ五輪予選の最終戦で劇的な優勝を飾り、土壇場で国内3番手に滑り込み出場権を獲得している。世界ランクでも3位と、メダルを狙える位置にはいるが、日本の若手の急成長を考えると今回は厳しいと思う方もいるかもしれない。だが、それでも彼には何かを期待せずにはいられないのだ。
東京五輪では後半のベストトリックで大逆転、およそ2年に渡って行われたパリ五輪予選大会では圏外から最後の最後で大逆転。しかも過去の自分の最高難度のトリックをアップグレードさせての優勝は、まるで漫画の主人公のようだった。
彼は自身の著書『いままでとこれから』で、これまでの人生を“得体の知れない誰かに導かれているような感覚もある”と記している。彼を小学生の頃から見続けている筆者にとって、これほどしっくりくる言葉はなかった。神通力を持っているのでは? と思わせてくれるほどの圧倒的な存在感は「堀米雄斗」にしかないものであり、多くの人にそういった期待を抱かせてくれる彼は、やはり真のスーパースターなのだろう。
堀米時代が続くのか、それともナイジャ・ヒューストンの逆襲が待っているのか、はたまた小野寺吟雲らが新時代の幕開けを告げるのか。勝負の分かれ目はパーク中央部にあるメインセクション、バンクから幅と柵を飛び越えて入るハンドレールの使い方になるだろう。
パリ五輪、スケートボードは今月28日に開幕する。
〈 「13歳、真夏の大冒険」西矢椛まさかの落選…パリ五輪女子スケートボード予選でドラマを見せた14歳の選手とは 〉へ続く
(吉田 佳央)
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