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「泣きじゃくり、抱き抱えられた選手も」あれから3年…前回金メダルのスケボー女子がパリ五輪予選でさらに“劇的な進化”のワケ〈世界ランクTOP10に4人も〉

文春オンライン / 2024年8月6日 6時0分

「泣きじゃくり、抱き抱えられた選手も」あれから3年…前回金メダルのスケボー女子がパリ五輪予選でさらに“劇的な進化”のワケ〈世界ランクTOP10に4人も〉

開心那 ©︎Yoshio Yoshida /X Games

〈 「13歳、真夏の大冒険」西矢椛まさかの落選…パリ五輪女子スケートボード予選でドラマを見せた14歳の選手とは 〉から続く

 世界ランク1位で東京オリンピックに臨みながらトリックを全て成功させられず4位に終わり、泣きじゃくりながら多くの仲間に抱き抱えられたスケートボードパーク女子代表の岡本碧優。3年前の印象的なシーンのひとつとして、今も思い起こす人もいるだろう。

 あれから3年の月日が流れた今、パークスタイルはどのような変化が起きたのだろうか。

 ここでは最新の世界ランクをベースに、注目選手や見どころ、メダル争いに焦点を当てていきたい。

世界ランクトップ10の中の4人が日本人

 まずは前回ワンツーフィニッシュを飾った女子パークから。

 世界ランク1位に開心那(ひらきここな・15)、3位に四十住さくら(よそずみさくら・22)、5位に草木ひなの(くさきひなの・16)とここまでが出場権を獲得。以下、6位に長谷川瑞穂(はせがわみずほ・13)、19位に菅原芽衣(すがわらめい・17)、28位に中村貴咲(なかむらきさ・24)となっている。

 ここで注目したいのが2位のオーストラリア代表アリサ・トルー(14)と4位のイギリス代表スカイ・ブラウン(16)。スカイ・ブラウンは東京オリンピック銅メダリストということもあり、宮崎生まれで母親が日本人ということを知っている人も多いだろう。そして同じく注目選手のアリサ・トルーの母もまた日本人である。

 となると、女子パークは世界ランクの1位から6位まで全てが日本人、もしくは日本にルーツを持つという他に類を見ない種目となっているのだ。となれば、当然メダル争いも出場権を獲得した上位5名に絞られてくるが、ポイントはをセクション(障害物)の使い方になってくるだろう。

 というのも7月9日に競技を統括する「WORLD SKATE」より、パリ五輪で使用されるパークデザインのアナウンスがあったのだが、ストリート種目で見られるようなレールが付いていたり、エアーからグラインドやスライドに入るようなセクション(障害物)が随所に散りばめられているのだ。

 最近の採点傾向だと、こういったセクションを使ってストリートで見られるようなトリックを入れた方が高得点に繋がりやすいので、そこを各々がどう判断し、自身の持ち技と照らし合わせて組み込んでいくかがキーになりそうだ。

あえて王道で勝負しない開心那、高難度トリックのアリサ・トルー

 それらを前提にすると、際立つのが開心那のスタイル(個性)だ。彼女はパークスタイルで王道と言われる「540(空中で身体を1回転半する大技)」などの空中戦で勝負することはせず、ストリートスケーター受けするトリックチョイスをする。

 ボードとウィールをつなぐ金属パーツ、トラックを使ってコース最上部の縁をゴリゴリと削るグラインドや、ボード部分で滑らせるスライドがそれに当たるのだが、他にも女子では誰も触ることのないコース外に設置されたセクションを積極的に使うのも特徴だ。

 派手さはないものの、玄人が見て唸る類のトリックで高得点を叩き出す。コースとの相性がバッチリとハマれば、彼女が金メダルを獲得する可能性はグッと高まるだろう。

 エアートリックではアリサ・トルーが他を引き離すバリエーションを持つ。マックツイストという高難度トリックをスイッチスタンス(左右の足を入れ替えて真逆のポジションをとること)で、さらに「900(空中で身体を2回転半する超大技)」も女子史上初の成功者となっている。

 パークスタイルで「900」を見ることはないだろうが、女子でスイッチスタンスをここまで乗りこなせるのは彼女しかいない。その出来もメダルの色を左右する大きなポイントになるだろう。

豪快さが武器の草木ひなの、独自技のスカイ・ブラウン

 純粋にスピードがあり、「540」を最も高く跳ぶという点では、草木ひなのに軍配が上がる。スピードが一番の武器と話す彼女の憧れのスケーターは、冒頭で少し触れた岡本碧優。

 豪快なエアーを武器とするところは、岡本の系譜を受け継ぐ選手といって良いだろう。草木が挑むのは、五輪決勝で岡本が決められなかった「キックフリップ・インディー」だ。成功すれば必ずメダル圏内に食い込んでくるだろう。

 スカイ・ブラウンも独自のエアートリックを持つ。バク宙のように身体ごと縦回転するバックフリップや、お腹側に回転する「フロントサイド540」は彼女の専売特許だ。6月の五輪予選シリーズ最終戦、ブダペスト大会は4月上旬に負った膝内側側副靱帯断裂からの復帰戦にも関わらず2位に輝いた彼女は、本番でさらにコンディションを上げてくるだろう。

 そしてスカイとは大の仲良しでもある東京五輪女王の四十住さくらは、コース最上部の縁を使った繊細なリップトリックが強み。ベテランらしく落ち着きと安定感のある滑りで2大会連続の表彰台を狙う。

 このように女子パークはメダルの可能性はかなり高いが、その分ライバルも手強い。表彰台に立つのは誰になるのか。スケートボードパーク女子は8月6日に開幕する。

日本人に不利な男子パークで唯一出場の永原悠路

 では最後に男子パークとなるが、これはストリートを含む他の3種目と様相が異なる。

 日本から出場するのは世界ランク17位の永原悠路のみ。スピードやエアの高さが加点対象に大きく反映される男子パークは、元来持っている身体能力も重要であると言われている。体格で劣る日本人が勝つのはかなり難しいのだ。 

 前回大会に出場した平野歩夢も世界ランキングでの出場は叶わず、開催国枠からだった。スノーボードハーフパイプでの実績からくる抜群の知名度で期待を寄せられていたが、世界の壁は厚かった。だが日本勢も少しずつではあるが、着実に進歩している。

 今回出場する永原は五輪予選大会にて決勝進出を果たした経験があり、自身の持てる技を全て出し切れば、決勝進出はもちろんその先の表彰台も狙えると語ってくれている。キーとなるのは前述の「540」に、ボードに縦回転を加えた「キックフリップ540」になるだろう。

 この種目は彼より下の世代に世界のトップと対等に渡り合える逸材がゴロゴロしている。永原にはその先陣を切ってもらい、シーンをより高みへと導いてもらうことを期待したい。

 そして最後にもうひとつ。女子パークにてアリサ・トルーとスカイ・ブラウンが日本にルーツを持つと伝えたが、男子パークにも同様の人物がいる。ブラジル代表のアウグスト・アキオだ。

 パラナ州クリチバ市出身でフルネームはアウグスト・アキオ・タカハシ・ドス・サントス。日本人の母を持ち、世界ランクは6位とファイナル進出の常連でもある。

 他にもスケートボードの本国、アメリカの歴史を振り返っても、実は日本と縁深い関係にある著名スケーターは多い。スケートボード界のスーパースターであるナイジャ・ヒューストンも、祖母が日本人であることは、知られた話である。

 男子・女子ともに誰の手にメダルが渡るのか。前回大会同様、新しい時代を目撃することはできるのか。スケートボードパーク男子は8月7日から開幕する。

(吉田 佳央)

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