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新1万円札に「変えないで」 福沢諭吉交代で聞こえてくる“慶応OBの嘆き”

文春オンライン / 2024年7月23日 16時30分

新1万円札に「変えないで」 福沢諭吉交代で聞こえてくる“慶応OBの嘆き”

さよなら福沢先生

「戻したいね! それが慶応OBの本音ですよ」

 そう語気を強めるのは、幼稚舎から慶応で学び、大学時代は応援指導部に所属した生粋の“慶応ボーイ”長島昭久衆議院議員である。

◆ ◆ ◆

新1万円札を苦々しく眺める面々

 20年ぶりの新紙幣発行に列島が沸いている。やれ数字のデザインに難ありだとか、やれ自販機の更新を迫られて民間への負担が大きいとか、デメリットを強調する向きも含め、誰もがどこか上気している。

 ところが、このお祭り騒ぎから距離を置く一団があるという。渋沢栄一の刷り込まれた新1万円札を苦々しく眺めるのが、慶応関係者が組織する「三田会」だ。

「三田会は卒業生同士のつながりと愛校精神が強い。去年、夏の甲子園で優勝した慶応高校の大人げない応援は顰蹙を買ったほど。新紙幣のデザインが発表された2019年当時から、三田会の一部では『福沢諭吉先生から変えないで』と反対の声が上がったそうです」(慶応大学関係者)

 振り返れば紙幣の刷新は何もこれが初めてではない。新渡戸稲造(5000円札)、夏目漱石(1000円札)がお役御免となり、それぞれ樋口一葉と野口英世にデザインが変わったのは20年前。このリストラの波をかいくぐり、都合40年間、最高額紙幣の顔に居座ってきたのが福沢諭吉だ。前回のデザイン一新の際、時の首相は小泉純一郎氏、財相は故・塩川正十郎氏だった。ともに慶応大学OBゆえ福沢留任に強くこだわったと、まことしやかに囁かれてきた。

「福沢先生は私の精神的な指導者です」

 なみなみならぬ創設者への尊崇の念は本当か。石を投げれば慶応OBに当たる政財界の要人たちに話を聞いた。まずは石原伸晃元衆議院議員。自民党関係者らで作る「永田町三田会」の幹事長経験がある。

「福沢先生は私の精神的な指導者です。演説でも著書の『瘠我慢の説』を引用するくらい。我々慶応関係者は福沢先生だけを『先生』と呼ぶよう教わってきました。しかし、肖像が変わるのは時代の流れでしょう。無理に福沢先生に戻さなくていいんじゃないの。もし戻すんだったら、私はむしろ聖徳太子かなあ(笑)」

 と軽くボケをかます一方で、冒頭の長島氏は、福沢への敬愛の情を隠さない。

「同期とは『なんで今変えるかねえ』なんて言い合ってますよ。戻せるものなら戻したいね! それが慶応OBの本音ですよ。ただ、1000円札の図案になった北里柴三郎が、慶應義塾の初代医学部長だから、それでよしとしようと思ってます」

「慶応のいやらしいプライド、俺、好きじゃない」

 なによりコネを尊ぶ学風がにじむが、身内贔屓を厳に戒めるOBもいる。石破茂衆議院議員の話。

「そりゃ、福沢先生は『塾祖』だよ。慶応に入るときは『福翁自伝』『学問のすすめ』『瘠我慢の説』とか読まないと面接通らないからね。尊敬もしてますよ。でもね『だから福沢先生じゃないと』みたいな慶応のいやらしいプライド、俺、好きじゃないんだ。それと福沢先生を敬うのは別のこと。そんな暇があったらね、福沢先生が書いた本を1つでも余計に読んだらどう?」

 至極冷静な石破氏だったが、最後にひと言「(紙幣の肖像に)大隈重信って話は聞かないね」と、都の西北を腐すのは忘れなかった。

 うなるほど1万円札を扱ってきた経済人のOBはどうか。「餃子の王将」を経営する「王将フードサービス」二代目社長を務めた望月邦彦氏に聞いた。

「自分は福沢先生、渋沢さん両方の信奉者です。大学は慶応だけども、私の親族は大いに渋沢さんにお世話になったんです。渋沢さんは、どれだけ成功しても財閥を作らなかったでしょう。これは『世のため人のためにやるんであって、自分のためではない』ということ。福沢先生も民のために尽くした。そういう意味では福沢先生と渋沢さんは考えが非常に似ている。だから今回の変更は大歓迎です」

 天は人の上に人を造らず。お金にも新旧はあっても上下はない。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年7月18日号)

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