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絶海の孤島・青ヶ島在住の40歳女性が語る、“日本一人口が少ない村”の都知事選事情「ポスターを貼りに来た支持者が島から出られなくなって…」

文春オンライン / 2024年7月29日 6時0分

絶海の孤島・青ヶ島在住の40歳女性が語る、“日本一人口が少ない村”の都知事選事情「ポスターを貼りに来た支持者が島から出られなくなって…」

佐々木加絵さん(本人提供)

 日本一人口の少ない村、青ヶ島村のYouTuber・佐々木加絵さんが“島暮らし”を発信する連載企画。

 東京都心から約360km離れた人口160人(2024年7月1日時点)の小さな島・青ヶ島。交通手段が限られていて、簡単に上陸できないことから、別名「絶海の孤島」と呼ばれている。

 そんな青ヶ島の日常をYouTubeで発信しているのが、青ヶ島在住の佐々木加絵さん(40)。加絵さん曰く、「私にとっては普通なのですが、島外の人からすれば、青ヶ島の日常は非日常なのかもしれない」という。

 青ヶ島の人たちは、いったいどんな暮らしをしているのだろうか。今回は、先日行われた東京都知事選をテーマに、青ヶ島の日常を紐解いていく。

◆◆◆

青ヶ島の都知事選の投票率は84.0%だった

 青ヶ島は都心から約360km離れていますが、東京都に所属する島です。だから、先日行われた東京都知事選も、しっかり投票してきました。選挙期間中、村内は「この候補者の公約が気になる」「この公約が実現したら、島がもっと良くなりそう」など、選挙の話で盛り上がっていました。

 今回の都知事選、青ヶ島村内の投票率は84.0%でした。都内の自治体の中で、2番目に高い投票率だそうです。過去の都知事選でも、青ヶ島は投票率80%前後を記録しています。

 平均年齢約40歳と若い人たちが多いこの島で、なぜこんなに高い投票率を維持できているのか。それは「青ヶ島に興味関心のない人が東京のトップに立ったら、島の交通や輸送、災害対策はどうなるのか」という危機感があるからかもしれません。

なぜ青ヶ島の人は都政への関心が高いのか

 例えば、青ヶ島には「三宝港」という立派な港があります。島民が通販で購入したものは、八丈島と青ヶ島を結ぶ連絡船「くろしお丸」に乗って、三宝港に運ばれてきます。

 島には小さな商店がひとつあるだけなので、日用品や保存のきく食品は、通販で購入することがほとんど。だから三宝港は、島民にとってとても重要な港です。そんな三宝港の整備も、東京都や国の事業として進められています。

 また、八丈島と青ヶ島の間を運航しているヘリコプターも、島しょ9町村と東京都が設立した「公益財団法人東京都島しょ振興公社」の委託のもと、東京の島々を結ぶ交通手段として運営されています。厳しい天候の影響で、連絡船の就航率が5~6割しかない青ヶ島では、このヘリコプターが島外に行くための重要な交通手段となります。

 このように、都や国の事業によって、島の交通・輸送手段が成り立っています。そしてそれによって、自分たちの生活が支えられていることを実感しているからこそ、青ヶ島の人たちは都政への関心が高いのだと思います。

青ヶ島で一番最初に選挙ポスターを掲示した候補者は…

 連絡船やヘリがあるとはいえ、やはり青ヶ島は交通の便が良いとは言えません。その不便さは、選挙運動にも関わってきます。

 先日、青ヶ島の選挙ポスター掲示板の写真をXに投稿したところ、1700万回以上のインプレッションがありました。6月20日の告示日に掲示板の写真を投稿をしたのですが、その時点で貼られていたのは、小池百合子さんのポスターのみでした。

 しかしその後、蓮舫さん、石丸伸二さん、清水国明さん、安野貴博さん、計5名の候補者のポスターが期間中に掲示されました。

 小池さんくらいになると、青ヶ島のような小さい村にも支持者がいるので、告示日に合わせてポスターを貼ってくれる人がいたのでしょう。でも、他の候補者はそうはいきません。支持者が青ヶ島まで来てポスターを貼るか、青ヶ島にポスターを送って、島内の誰かに貼ってもらうことになります。

島しょ部での選挙活動の難しさ

 ただ、何度も言うように青ヶ島は交通の便の悪い島です。ポスターを貼りに来ただけの支持者が島に数日閉じ込められたり、連絡船の運休が続いて選挙期間中にポスターが届かなかったりすることもあります。

 ちなみに、ある候補者のポスターは、支持者の方が青ヶ島まで貼りに来ていたのですが、悪天候の影響で連絡船の運休が続いて帰れなくなり、予定より3日ほど長く滞在することになったそうです。

 青ヶ島を含めた島での選挙活動は、「離島のことをいかに意識しているか」が問われるな、と思っています。例えば小池さんは今回の選挙のために、わざわざ“島用”のポスターを作成していました。「これからも、都民のために。都民とともに。」という文言を、「これからも、島民のために。島民とともに。」と変えていたのです。

 また、都心部だけでなく八丈島での街頭演説なども行っていました。小池さんは、青ヶ島の投票数の約7割(105票中72票)を獲得していました。島しょ部も気にかけてくれている姿が、彼女を応援する島民を増やしたのかもしれません。

村長選挙と都知事選の違い

 ちなみに、青ヶ島では、今年1月に村長選挙がありました。そのときの投票率は86.13%と、都知事選をさらに上回っています。

 人口の少ない青ヶ島村では、親戚や友人が村長や議員ということも少なくありません。島での生活で困ったことがあったら、仲の良い友達と雑談するように、気軽に村長や議員に相談します。村長や議員はもちろん、村民も「自分たちが住む村は、自分たちで良くしていく」という意識が高いのです。

 実際に、住民からの声で島内にフリーWi-Fiスポットができたり、元々は民間で行っていた「島留学」が村の予算で行えるようになったりしています。島留学は、声をあげてから3年ほどで村の事業となったので、実行するスピードも早い。これも、村議会と村民の距離が近いからかもしれません。

 一方で、距離が近いからこその難しさもあります。村長選挙や村議会議員選挙では、有権者約130人の限られた票を奪い合うことになります。しかも、候補者は知り合いばかり。親戚や仲の良い友人が候補者になっていても、投票しない場合もあります。

 数票の差で当落が決まることが多いから、選挙期間中は、村全体がピリピリしています。でも、一人ひとりが「村を良くしたい」と思っているからこそ生まれる緊張感だと思っています。

青ヶ島民として、政治に求めることとは?

 選挙や政治の話になると、「青ヶ島村民として、都や村にどんなことをやってほしい?」と聞かれます。

 青ヶ島には、コンビニやスーパーはもちろん、塾や習い事、映画館やクラブのような娯楽施設もありません。そんな環境だからか、やりたいことがあったら、自分で何でもやっちゃう、タフでフットワークの軽い人が多いんです。

 だから、「何かをやってほしい」というよりも、「やりたいことをサポートしてくれる政治」が広がっていくと、青ヶ島民としては嬉しいですね。

取材・文=仲奈々
写真提供=佐々木加絵さん

(仲 奈々,佐々木 加絵)

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