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「キツイ、汚い、危険にクサい」“最強モテ女”から一変し…『アンナチュラル』が示した石原さとみ(37)の“強さの正体”〈映画『ラストマイル』に出演〉

文春オンライン / 2024年8月14日 17時0分

「キツイ、汚い、危険にクサい」“最強モテ女”から一変し…『アンナチュラル』が示した石原さとみ(37)の“強さの正体”〈映画『ラストマイル』に出演〉

『アンナチュラル』の演技が評価され、東京ドラマアウォード2018で個人賞・主演女優賞を受賞した石原さとみ ©時事通信社

 映画『ラストマイル』が8月23日に公開される。世界規模のECサイトで働く男女が、のちに日本中を震撼させる謎の連続爆破事件に立ち向かう物語だ。今作が一目置かれている理由は、TBSの超人気ドラマ『アンナチュラル』(2018年)、『MIU404』(2022年)を手がけた最強チームが再集結したからである。

 脚本・野木亜紀子、プロデューサー・新井順子、監督・塚原あゆ子、主題歌・米津玄師。さらに今作は『アンナチュラル』や『MIU404』と同じ世界線のシェアード・ユニバース方式であることが明かされ、石原さとみや綾野剛といった豪華キャストが再登板することも発表された。

“不自然な死”の真相に迫る『アンナチュラル』

 架空の研究機関・UDIラボを舞台に、法医解剖医・三澄ミコト(石原さとみ)が死因究明のスペシャリストたちと共に“不自然な死”の真相に迫るドラマ『アンナチュラル』。今作が6年以上前のドラマであることにシンプルに驚く(どれくらい前かというとLINEを交換する際に“ふるふる”が用いられるくらい前だ)。

 その第1話を見たとき「これから日本のドラマは変わるかもしれない……!」と気持ちが高ぶったことを、今も鮮明に覚えている。

 毎話センセーショナルな事件を扱いながらも、今作の根底にあるのは、理不尽に口を塞がれた死者、つまり「声を上げられない弱者たちへのまなざし」だ。死後も誹謗中傷の的になった男性や行き場を失い監禁されていた少女、仕事に忙殺された作業員……。最後の一言を残すことすら許されなかった彼らのために、ミコトはメスを執る。

 その魂が安らかに眠ることを祈る作品でありながら、『アンナチュラル』がなによりも肯定するのは“生きること”そのものだ。弱き者の声を汲むことも、誰かの死から始まる法医学も、すべては“今を生きる私たち”に繋がっていることを『アンナチュラル』は示している。

ショックのあまり失禁も…「かわいい」の先へ行った演技

『アンナチュラル』の大ヒットは作り手だけでなく、演じ手たちのキャリアにも大きな影響を与えた。そう感じたのは、今年5月公開の映画『ミッシング』を鑑賞したときのこと。主演の石原さとみが、失踪した愛娘を死に物狂いで探す母親・沙織里を演じていた。

 観る者の胸を容赦なく抉る『ヒメアノ~ル』(2016年)や『空白』(2021年)を手がけた吉田恵輔監督の作品で、数年前から熱心に逆オファーをしていた石原にとっては、念願かなっての一作だという。

 凄惨な女児誘拐事件に世間は哀れみの目を向けるものの、母親が失踪当日に推しのライブに足を運んでいたことが明かされた途端、そのエールは凄まじいバッシングへと変わる。物語の中盤には、娘が保護されたと一報が入るのだが、それが心無いイタズラ電話だったことが判明。たった一つの希望を無惨にも取り上げられた沙織里は、ショックのあまり失禁してしまう。

 役作りのためにボディーソープで軋ませた髪を振り乱し、時には攻撃的な目を向けたりと、人間のあらゆる感情が剥き出しになった沙織里の姿に、石原さとみが、「かわいい」のその先へ行ったことを感じた。

清純派女優の王道ルートを駆け抜けてきた

 ここで女優・石原さとみ史を少し振り返りたい。1986年生まれの石原の同世代は、綾瀬はるかや長澤まさみといった日本の映画・ドラマ界を牽引する女優たちが集う“黄金世代”である。つまりそれほど強力なライバルも多い世代ということだが、時代を彩った作品の中枢にはいつも石原がいる。一視聴者目線では、ずっと清純派女優の王道ルートを駆け抜けてきたイメージだ。

 そんな彼女の存在を揺るがないものにしたのが『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系、2014年)である。新進気鋭のショコラティエ・小動爽太(松本潤)がフラれてもなお恋焦がれる小悪魔的人妻が、石原演じる“サエコさん”だ。原作漫画のサエコさん評は「どれほど絶世の美女かと思えばめちゃめちゃ普通じゃん……!!」というものなのだが、石原が演じたことにより、ビジュアル最強あざとさMAX“天下無双のサエコさん”が、新たに誕生したのである。

 ドラマ本編が終了してもサエコさんブームが冷めることはなかった。今でも彼女を崇める声は絶えず、“最強モテ女”サエコさんの面影は、そのまま石原自身のパブリックイメージに繋がった。

 現に『失恋ショコラティエ』以降、石原が主演する恋愛ドラマのほとんどが、誰かに恋する側ではなく“誰かから好意を寄せられる側”。世の女性たちを投影したキャラクターではなく、理想を詰め込んだ存在なのである。

 30代女性が主役のラブストーリーは、晩婚化を象徴するような“こじらせ系ヒロイン”が主流になる一方で、石原だけは常に“女子のあこがれ”を体現しつづけてきたのだ。

超豪華キャストの中心で放つ圧倒的なオーラ

「かわいい」のその先も女優・石原さとみのステージが続いていることを世に知らしめたのは、やはり『アンナチュラル』の三澄ミコトである。第1話から婚約者にフラれ、「キツイ・汚い・危険にクサい」といった“7Kのマイナスがある”法医解剖医のヒロインは、石原の代名詞である“モテ”の対極にいるのかもしれない。

 しかし、あの超個性的で豪華なUDIラボメンバー(井浦新・窪田正孝・市川実日子・松重豊)の中心にいても埋もれることのない圧倒的なオーラと彼らを巻き込む求心力、そして些細な綻びも躊躇いなく口に出す芯の強さは、これまで石原が培ってきたヒロイン像に間違いなく由来する。

『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系、2012年)の真琴も、『ディア・シスター』(フジテレビ系、2014年)の美咲も、『5→9~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ系、2015年)の潤子も、そしてあのサエコさんも、ただ“かわいい”だけの女性ではなかった。“かわいい”で内包されたその芯のある強さ。それこそが、私たちが石原さとみに恋焦がれていた理由だったのだ。

「絶望してる暇あったら、うまいもん食べて寝るかな」

 これは『アンナチュラル』の中で、筆者がとりわけ好きなミコトの台詞である。その言葉の通り、本作には食事のシーンがたびたび登場する。食事をすることは、つまり自分の“明日”をつなぐこと。それは理不尽な世の中において、我々が出来るささやかな抵抗であり、最大の攻撃なのかもしれないと、6年経った今も思う。

『アンナチュラル』、『MIU404』、『ラストマイル』チームが、2024年にどのようなメッセージを残すのか、改めて楽しみだ。

(明日菜子)

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