1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

「彼女はやっぱりトップアスリート」池江璃花子(24)がパリ五輪までに“変えたこと”〈競泳・岩崎恭子が注目選手を解説〉

文春オンライン / 2024年7月27日 11時10分

「彼女はやっぱりトップアスリート」池江璃花子(24)がパリ五輪までに“変えたこと”〈競泳・岩崎恭子が注目選手を解説〉

パリ五輪代表内定を決めた瞬間の池江璃花子選手 ©文藝春秋

〈 「金メダルなんて獲らなきゃよかったと…」中学2年で金メダル→直後に記憶をなくし…岩崎恭子(46)が振り返る「生きてきた中で一番幸せ」の“その後” 〉から続く

 7月27日から、パリ五輪の競泳がスタートする。日本からは男子14人、女子13人の代表選手が出場予定だ。バルセロナ五輪金メダリストの岩崎恭子さんに、選手の強みや今大会の見どころを聞いた。(全3回の3回目/ はじめから読む )

◆ ◆ ◆

池江璃花子選手が掲げた目標は「決勝進出」

――過大な期待は選手にプレッシャーをかけてしまうと分かっていても、白血病から回復し、100mバタフライに出場する池江璃花子選手にはどうしても注目が集まってしまいます。

岩崎恭子さん(以下、岩崎) 注目するのはいいと思いますが、ただ現実を見ると彼女の今の自己ベストはトップから1秒以上遅い。100mでの1秒差はかなり高いハードルです。池江選手も「パリ五輪の目標は決勝進出」と言っているし、目標を達成したら快挙だと思います。

 免疫系の病気から個人種目で五輪に出場するのは、並大抵のことではありません。強靭な精神力がないと、まずトップアスリートとしての体は作れないし、ましてや五輪の出場なんて……。

 それだけでも大変なことなのに、池江選手は病気以前の泳ぎが忘れられず、苦しんでいる気がします。以前会った時も「やっぱり病気をしなかったらどうだったんだろうと考えてしまうことがある」と語っていましたから。

練習拠点をオーストラリアに移したことがプラスになった

――応援する側としては、重篤な病気を克服し、五輪という舞台に立つその事実だけでも、メダルや記録以上のものを汲み取ってしまいそうですが。

岩崎 ただ、彼女はやっぱりトップアスリートなんですよ。記録を出せなければ納得しないと思います。でも、どこまで自分を追い込めるのか、追い込んでいいものなのか、常に自分と闘ってきたはずです。それでも昨年秋に練習拠点をオーストラリアに移したことがプラスになったと思いますね。

 世界記録保持者やメダリストたちと一緒に練習することで、かなり刺激を受けたんじゃないでしょうか。世界のトップアスリートに囲まれ、焦ることなく、薄紙一枚一枚を丁寧に重ね合わせるようにして体と技を磨き上げたからこそ、個人種目でパリの切符を掴めたのでしょうね。

 中学や高校の時はかわいらしい選手というイメージだったけど、18歳で出場したアジア大会で、6種目優勝。その時に、世界に誇れる選手になると確信しました。事実、100mバタフライで世界ランキング1位になったこともありましたし。

 だから今、体を回復させても18歳の時の感覚が戻ってこない自分に多少のいら立ちはあると思います。でも、そこは本人にしか分からないことなのでアドバイスはできないけれど、池江選手は必ず前に進み続けると思います。パリ五輪以降も競技人生は続きますから。

世界記録を樹立した渡辺一平選手

――他に注目している選手はいますか。

岩崎 まずは200m平泳ぎに出場する渡辺一平選手。17年に世界記録を樹立したこともある実力者だけど、東京五輪では僅差で出場権を逃し悔しい思いを味わっています。3月の代表選考会では自己ベストに迫るタイムを記録していますし、欧州グランプリでは1戦、2戦、3戦と制覇。グングン調子を上げているように見えます。

 200mバタフライの本多灯選手もメダルの可能性があります。東京五輪では銀メダルだったし、それ以降の世界水泳でも毎回メダルを獲得し、24年のドーハ大会では金メダルでしたからね。ただ、バタフライにはクリストフ・ミラーク選手(ハンガリー)という絶対的な選手がいるので優勝は厳しいような気がするけど、調整が順調に進めば、表彰台は期待できますね。

――女子はどうですか。

岩崎 「ロンドンの表彰台で見た景色をもう一度見たい」と語り、2大会ぶりに復帰した鈴木聡美選手には期待していますね。彼女は100mと200mの平泳ぎに出場しますが、年齢を重ねてもまだまだ進化する姿を見せて欲しいですね。

 そして、どうしても私と同じ平泳ぎに注目してしまいますが、青木玲緒樹(れおな)選手にも期待しています。世界のレベルは上がっているというものの、青木選手が持つ日本記録は、東京五輪で銀メダルだった選手を上回っています。彼女はちょっと波があるけど、当日にピーキングを合わせられれば、メダルの可能性は十分にあります。

大舞台で大化けするかもしれない若い選手

――女子400m個人メドレーの成田実生選手、100mバタフライに出場する平井瑞希選手、そして男子リレーの村佐達也選手の高校生トリオはいかがでしょう。

岩崎 余り注目されない若い選手が、五輪で一気に伸びる例は珍しくありません。私もそうでしたし(笑)。

 成田選手は今伸び盛りに見えるし、平井選手は憧れという池江選手を破って切符を掴んだだけに、大舞台で大化けするかも。若い選手が活躍するとみんながエネルギーを貰えるので、日本中を沸かせて欲しいな。

選手の記録が伸び悩んでいる理由

――3月に行われた代表選考会でパリの切符を獲得した男子14人、女子13人のうち、日本記録を出した人はいませんでした。選手の記録が伸び悩んでいるようにも見えるのですが……。

岩崎 これはあくまで私見ですが、コロナ禍の影響が大きかったのではないかと。選手たちが本格的な練習ができるまでは結構な時間がかかりましたし、それでも米国やオーストラリアなど水泳の強豪国は、早い段階で練習を再開しています。また、屋外プールもかなり充実しているので、コロナ禍でも思う存分練習出来たんですよ。

 日本ではなかなか、水泳選手だけ特別扱いとはいかなかった。そこに差が生じてしまいましたね。ですからコロナのような緊急事態が発生したときは、全て一律の規制を設けるのではなく、場合によっては特例を設けてもいいような気がします。

瀬戸大也選手は「ホントにしぶとい(笑)」

 あ、もう一人注目選手を忘れていました。200m個人メドレーに出場する瀬戸大也選手です。彼はホントにしぶとい(笑)。代表選考会では得意の200mバタフライで選考漏れ、400m個人メドレーでも切符が取れず、残すは200m個人メドレーだけ。

 そんなプレッシャーが最もかかりそうな日に会ったんですけど、私が心配するぐらい開き直っていましたね。「もういいっすよ」なんて。一緒に試合を見に行っていたうちの娘も心配して「瀬戸選手、ヤバくない?」って。でも、最後の最後で残り1枚をしっかり獲得していた。

 実はこういうしぶとい選手が大舞台では強い。今大会で五輪の出場は3回目だし、試合巧者ぶりを見せつけて表彰台に上がるかもしれません。

(吉井 妙子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください