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元CIAの“美魔女分析官”が韓国スパイ機関からの“濃厚接待”で起訴 ドルガバのコート、45万円のバッグに「おごり高級寿司」も…

文春オンライン / 2024年7月26日 6時10分

元CIAの“美魔女分析官”が韓国スパイ機関からの“濃厚接待”で起訴 ドルガバのコート、45万円のバッグに「おごり高級寿司」も…

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領 ©EPA=時事

 7月15日、アメリカの連邦警察は元中央情報局(CIA)分析官のスミ・テリー被告を起訴した。韓国の情報機関「国家情報院」のために活動し、その見返りとして高級ブランドのバッグや寿司レストランでのディナーなどの提供を受けた疑いだ。

 米韓のメディアよれば、米連邦捜査局(FBI)はテリー被告を2013年から2023年6月まで約10年間にわたって調査を続けていたという。

計90万円「ドルチェ&ガッバーナのコート」「ボッテガ・ヴェネタのバッグ」をプレゼント

 2019年には、国情院がドルチェ&ガッバーナのコート(2845ドル)をクレジットカードで購入し、テリー被告に贈った。外交官としての地位を利用したため、コートの代金は非課税だった。テリー被告はその後、品物をクリスチャン・ディオールのコート(4100ドル)と交換したという。

 同年、ボッテガ・ヴェネタのバッグ(2950ドル)も贈られた。2020年8月には、国情院職員2人がテリー被告とニューヨーク・マンハッタンのギリシャ料理店で会食した。起訴状には、ボッテガ・ヴェネタのバッグを購入した際やギリシャ料理店での会食の様子を撮影した写真も添付された。

 このほかにもテリー被告は、国情院の職員から計3万7000ドル相当の研究助成金を受け取ったとされている。

 一方、テリー被告は2018年から19年にかけ、訪米した韓国の情報関係者らに米当局者らとの会合をセットした。22年にはブリンケン米国務長官とともに出席した米政府の対北朝鮮政策に関する非公開会議のメモを国情院職員に渡した。

 昨年3月には韓国外交部関係者から、日韓関係に関するコラム執筆の依頼を受け、米紙に日韓関係の改善を評価するコラムを共同執筆したという。米検察当局は、米当局に届け出を行わずに韓国政府の「代理人」として活動したことは、「外国代理人登録法(FARA)」に違反するとしている。

 テリー被告の弁護士は声明で「疑惑には根拠がなく、米国への長年の奉仕で知られる学者及びニュースアナリストとしての仕事を歪曲するものだ」としている。

 韓国では、保守系メディアが「大半が文在寅政権当時に起きた問題だ」という論陣を展開する一方、進歩(革新)系メディアは「尹錫悦政権も日韓関係に関する論文執筆を依頼していた」と批判するなど、政治問題化している。

 しかし、テリー被告と韓国との関係は、保守政権でも進歩政権でも続いていたわけだから、「政治的に保守・進歩のどちらが悪いか」という問題ではなさそうだ。

元国情院職員は「スパイのイロハも知らない行為」と...

 米国や日本で情報収集活動にあたった知り合いの元国情院職員らの見方は、韓国メディアの論調とは異なる。彼らが一様に口にしたのは、「情報機関としての質の劣化」に対する嘆息と危機感だった。

 元職員の1人は「聞いてみたら驚くことばかりだ」と語る。元職員によれば、重要人物と接触する場合、外交車両は使わず、尾行者の有無を必ず確認しなければならない。

 国情院がテリー被告に贈った品物の値段や資金規模は「驚くほどではない」とする一方、「なぜ、品物の購入にカードを使ったのか理解に苦しむ」と話す。証拠が残るカードを使ったのはもちろん、外交官の身分証明書まで見せて無税扱いにするなんて、「スパイのイロハも知らない行為」だと話す。

 それでなくとも、米国の監視網は徹底している。米国で働いた別の元職員は「米国ではFBIの監視からは逃れられないと覚悟すべきだ。裸で歩いているようなものだ」と話す。

 携帯電話は常に盗聴されているという前提で行動しなければならない。「携帯がダメなら、公衆電話で」というわけにもいかない。ターゲットの自宅の周囲のどの位置に公衆電話があるのか、ターゲットが盗聴を避けようとした場合、どの公衆電話を利用しようとするのか、先刻ご承知だ。FBIは先回りして、公衆電話も盗聴の対象にしているという。

 前出の元職員の1人は「レストランでルーム(個室)を使わないとは。わざわざ、撮影してくれと言っているようなものだ」と話す。

スパイ教育できる環境が整っていない

 確かに、国情院は近年、坂道を転げ落ちるように弱体化の道をたどってきた。金大中政権時代の1999年、国家安全企画部を国情院に改編し、国内情報部門を縮小した。

 2008年に発足した李明博政権は経済情報に力を入れるとして、国情院の組織改革を進めた。文在寅政権時代の決定により、2024年1月、スパイ活動などを捜査する対共捜査権が国情院から警察に移された。

 さらに、文在寅政権当時に、国情院長経験者3人が相次いで逮捕されるなど、政権交代のたびに、権力の象徴の一つだった国情院が粛清の対象になった。そのたびに幹部たちが「ムルガリ(水槽の水を取り替えるような一掃人事)」に遭った。前出の元職員は「今の国情院には、スパイ活動のイロハを教育できる環境が整っていないのではないか」と懸念する。

 それにしても、不思議だったのは、蜜月と言われているバイデン政権と尹錫悦政権のもとで、どうしてこのような醜聞が表面化したのかという点だ。

「スパイらしからぬ」あまりに堂々とした振る舞い

 訪米経験が豊富な韓国大統領府の元高官は「米国にはA、B、Cの各級にランク付けされたロビイストがいる。訪米する際、カウンターパートではない米政府当局者や米議会関係者に会いたいときに、ロビイストを使った」と語る。

 最も高い報酬が必要になるA級のロビイストであれば、面会したい米上下両院議員に直接連絡して、アポ取りをしてくれたという。やや格が落ちるB、C級のロビイストは米議会補佐官などを経験したコリアン・アメリカンなどで、在米韓国大使館にほぼ常駐した状態で、仕事をしている。

 B、C級であれば、上下両院議員に直接電話はできないまでも、補佐官ら関係者らに連絡して、アポ取りをしてくれたという。みな、FARAに基づき、外国代理人として登録されている。

 ただ、登録されていないロビイストでも、面会の仲介をしてくれる人は大勢いる。テリー被告の場合、起訴状を見る限り、定期的に対価を受け取っていたわけではなさそうだ。前出の元韓国大統領府高官も「テリー被告をロビイストとみるのは少し無理があるのではないか」と語る。

 そうであれば、FARA違反を起訴の理由にしつつも、テリー被告が米国の機密情報を外部に漏らすことを防ぐ狙いが大きかったということなのだろう。テリー被告は2001年から8年間、CIAで分析官を務めたほか、オバマ政権の国家安全保障会議(NSC)などでも働いた。

 ただ、現在は民間の研究者に過ぎない。起訴状では、ブリンケン国務長官らが出席した非公開の会議の情報を国情院側に流したとされるが、元米外交官は「非公開とはいえ、民間を加えた会議であれば、それほど高度な情報を共有しているわけではない」と語る。

 この元米外交官は「過去はともかく、急いで取り締まらないと、高度な機密情報が流出してしまうという切迫した状況ではなかったのではないか」と話す。

 こうした証言に照らし合わせてみると、「重大な情報漏洩」というよりも、韓国側の「スパイらしからぬ」あまりに堂々とした振る舞いに、今回の摘発の原因があったのかもしれない。

元米外交官が分析「トランプ陣営がこのスキャンダルを指摘する可能性」

 事実、前出の元米外交官は「今年は選挙の年だ。トランプ陣営がこのスキャンダルを指摘する可能性を踏まえ、あらかじめ、摘発した可能性がある」と語る。その他にも、「中国やロシアのスパイたちに警告するため、この事件を表面化させた」という説も出ているという。

 いずれにしても、国情院OBたちが嘆いた、「国情院職員の質の低下」が今回の事態を招いた可能性は少なからずあると言えそうだ。

 米国にはFBIやCIA、国家情報長官室などに、それぞれ韓国を担当する部署がある。こうした部署の人間のうち、分析担当者らは在米韓国大使館職員と接触し、協力し合うが、監視担当者らは表に出てこない。

 また、米国は同盟国の韓国や日本であっても、ファイブ・アイズが共同運営するエシュロンも含めて盗聴などの情報収集行為を続けている。国情院の元職員の1人は「情報の世界では当たり前のこと。油断した方が悪い」と語った。

(牧野 愛博)

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