1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

創業家資産は1600億円! 年3億の役員報酬も…小林製薬“猛毒会長”の正体とは「『アカン』と言ったら全部やり直し」《辞任発表》

文春オンライン / 2024年7月23日 17時30分

創業家資産は1600億円! 年3億の役員報酬も…小林製薬“猛毒会長”の正体とは「『アカン』と言ったら全部やり直し」《辞任発表》

©時事通信

 小林製薬は7月23日、臨時取締役会を開き、小林一雅会長(84)と小林章浩社長(53)が辞任し、山根聡専務(64)が社長に昇格する人事を発表した。創業家以外の人物が社長に就任するのは初となる。

 今年3月に発覚した“紅麹問題”だが、6月には当初公表していた5件の死亡事例に加え、「紅麹」サプリの摂取と因果関係が疑われる死亡事例が、新たに76件あったことを厚労省が発表した。

 厚労省は3月下旬以降、小林製薬に対して毎日、健康被害の件数の報告を求めていたが、6月まで報告はなく、武見敬三厚労相が「報告がなかったことは極めて遺憾。もう小林製薬だけに任せておけない」と怒りをあらわにしていた。

 こうした小林製薬の“後手後手の対応”を生み出した原因はなんだったのか。同社の企業風土、内情と創業家一族の“正体”を報じた「週刊文春」の記事を全文公開する(初出:週刊文春 2024年4月11日号 年齢・肩書は掲載当時のまま)。

◆◆◆

 5人の死者を出し、150人以上の入院患者を出している小林製薬の“猛毒”紅麹。「ブルーレット」「ナイシトール」「熱さまシート」などCMで見ない日はない有名企業の失敗。その陰には、創業家一族のドンの存在があった。

 古くから「薬の街」として知られる大阪市中央区の道修町。田辺製薬や武田薬品工業をはじめ、大小様々な製薬会社がオフィスを構えるこの街の一角に、小林製薬も本社を構えている。

 76年から04年まで社長を務め、現在も代表取締役会長を務める小林一雅氏(84)は、今から25年程前のとある日、旧社屋のエレベーターの中で、1人の社員をジロッと見つめていた。一雅氏は社員が降車後、秘書に対してこんな指示を出したという。

「今の奴は、どこのどいつだ。社員は階段使えって言っておけ」

 当時を知る元社員が振り返る。

「会長に好かれればトントン拍子で出世できるが、嫌われたら一生出世はできません。だから会長と接触するのは社員にとってギャンブルみたいなものだったんです」

元幹部社員が告白「あの会社には昔から“隠蔽体質”がある」

 一方、元幹部社員はこう声を潜める。

「あの会社には昔から“隠蔽体質”があるんです。一雅さんは恐ろしく、些細なミスでも怒られる。『一雅さんにバレたらどうしよう』とみんなビクビクしています。今回の問題も会長にバレずに何とかごまかせないかと悩んでいる内に公表が遅くなってしまったのではないか」

 傘寿を過ぎて今なお絶対権力を有する一雅氏とは何者なのか。そして、なぜ小林製薬は、この会長のもとで“猛毒”を撒き散らすに至ったのか。

問題公表は発覚から2カ月後

 死者5名、入院者延べ157名(4月1日現在)。小林製薬の「紅麹」サプリメントによって健康被害を訴える人の数は、日に日に増え続けている。

「1月15日以降、『紅麹サプリを使用した人に腎疾患が出ている。腎臓の病気を引き起こすカビ毒の“シトリニン”が含まれているのではないか』。そんな照会が医師から相次いだのです」(社会部記者)

 小林製薬は2月5日に社内協議を開始したが、原料からシトリニンは検出されなかった。同社が問題を公表したのは事例発覚から2カ月以上も過ぎた3月22日だった。企業法務・コンプライアンスに詳しい山室裕幸弁護士が、“空白の2カ月”をこう断罪する。

社長は必死で“インサイダー疑惑”を否定

「対応がお粗末という他ありません。事実確認と原因究明という課題に固執しすぎて公表の時期を完全に見誤った。最悪の事態を想定して柔軟に対応していれば、ここまで被害は拡大しなかったでしょう」

 その後、厚労省の調査で問題のあった製品のロットからプベルル酸が検出されたことが確認された。

「青カビから発生することのあるプベルル酸は、今のところ人体にどのような影響があるのか分かっておらず、紅麹問題の核心はまだ闇の中です」(前出・社会部記者)

 3月30日には厚生労働省と大阪市が食品衛生法に基づき同社の大阪工場に、翌日には厚労省と和歌山県が、和歌山工場にそれぞれ立ち入り検査をした。

 その最中、別の疑惑も浮上した。記者会見で質問が出て、小林章浩社長(52)が必死で否定したインサイダー疑惑である。

社内協議の翌日から株価が急落

 株価が怪しげな動きを見せたのは2月6日。前述したように、この日は小林製薬が社内協議を開始した翌日。章浩社長の耳に事案が報告された日でもあった。

「東証プライム上場の同社株は、6500円を超える金額で推移していましたが、6日から急に下落を始め、6日連続で大きく下がり15日には6020円まで急落したのです」(同前)

 これを受けて会見では、「インサイダー取引の可能性は?」と追及されたのだ。だが、経済評論家の佐藤治彦氏はこう分析する。

「確かに不思議な動きにも見えますが、この程度の下げ幅であれば、インサイダーとは言い切れない。小林製薬は前期、有価証券の売却などでかろうじて増益を確保していますが、原材料や人件費の値上がりの影響を受けて、営業利益は前期比3パーセント減。同月9日にあったこの決算発表に株式市場が反応し、株価が下落した可能性が高い」

 株価は問題を受けて下落したとはいえ、売上高1700億円(昨年)の企業を作り上げたのが小林一雅氏だ。

毎月1本以上のアイデア出しを要求...小林製薬の“ドン”の正体とは

 小林製薬の創業は1886年。小林忠兵衛が愛知県名古屋市に開業した「小林盛大堂」が源流である。小林製薬の関係者が言う。

「一雅氏は、2代目社長の三郎氏の長男として生まれた。フィギュアスケートを中学3年から始め、高校3年でインターハイと国体に出場。甲南大学に進学した後、全日本選手権で6位に入賞するほどの腕前だったそうです」

 1962年に小林製薬に入社すると、

「一雅氏は、鎮痛剤『アンメルツ』(66年)、芳香剤『ブルーレット』(69年)、『サワデー』(75年)などを次々とヒットさせ、医薬品から生活雑貨まで幅広く開発するメーカーへと変貌させたのです」(経済誌記者)

 実績を積みあげ、76年、37歳で4代目の社長に就任。

 以降も、「糸ようじ」(87年)、「熱さまシート」(94年)といった誰もが知る商品を生みだし続けた。

経営陣には小林一族が揃っている

「独特の“ルール”を作ることでも有名。その代表例が『さん付け運動』です」(同前)

 この運動は一雅氏が95年に発案。“仕事の前では平等”の精神のもと、社員同士が肩書で呼び合うことを禁じたのだ。

「経営陣には小林一族が揃っているため、一雅さんは『Kさん』、章浩さんは『Aさん』と頭文字のイニシャルで呼ばせたのです」(同前)

 さらに一雅氏は、従業員にも皆一律に新商品のアイディアを求めた。

「開発部門の社員だけでなく、営業だろうと経理だろうと毎月1本以上のアイディアを出し、その数は年間で6万件にも上る」(同前)

 それまでの青色だと尿の色などを確認できないという声から生まれた「無色のブルーレットおくだけ」(90年)、それまでより成分を少なめにした漢方内服薬「ナイシトール85」(06年)などヒット作の発案者には、それぞれ50万円と100万円が賞金として出されたという。

〈 毎年25億の配当金、32頭の馬主...小林製薬“華麗なる一族”が自主回収の“常習犯”になるまで「31年間で17回」《辞任発表》 〉へ続く

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年4月11日号)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください