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〈韓国で“聖子ちゃん”が大ヒット〉なぜ韓国人は“18歳の松田聖子”にハマるのか? 日本人が知らない“本当の経緯”は…〈現地報道から分析〉

文春オンライン / 2024年7月31日 6時10分

〈韓国で“聖子ちゃん”が大ヒット〉なぜ韓国人は“18歳の松田聖子”にハマるのか? 日本人が知らない“本当の経緯”は…〈現地報道から分析〉

NewJeansのハニ ©時事通信社

 韓国でいま、松田聖子の注目度がかつてないほどに高まっている。公営放送KBSはこう伝えている。

〈「80年代の韓国にイ・ソニ(※韓国で80年代に多くのヒット曲を出し、国民的歌姫とよばれた女性歌手)がいたとするのなら、日本には松田聖子がいました」〉

 事の発端は、K-POPガールズグループであるNewJeansのメンバー・ハニが、松田聖子の「青い珊瑚礁」をカバーしたことだった。今年6月に行った東京ドーム公演で、日本のファンに向けて披露したそのステージはSNS等を通じて韓国まで届き、たちまち関心を集めた。

なぜ韓国で松田聖子がここまで話題になっているのか

 松田聖子「青い珊瑚礁」は1980年7月1日にリリースされた。彼女のシングル売り上げランキングでは「あなたに逢いたくて~Missing You~」や「ガラスの林檎(B面が「SWEET MEMORIES」)」に上位を譲っている。それでもデビュー曲「裸足の季節」に次ぐ2曲目として、彼女の人気を一気に高めた楽曲として知られる。

 ハニのステージから1ヶ月が経過しても話題が消えることはなく、韓国語で「青い珊瑚礁」を意味する「プルンサノチョ」が高い関心を得ている。

 松田聖子のオリジナル版も広く聴かれ、韓国の音楽配信サービスでも上位にランクイン。「Spotify」では6月下旬以降、同曲のストリーミング回数が530%増加。韓国の主要音楽チャートの「Melon」でも、検索ランキング1位を獲得した。ネット上には松田聖子を「発見」した人の、韓国語のコメントが多数見られる。

〈「この曲は100年後に聴いても爽やかに感じるだろう」
「このルックスにこの歌唱力となると、トップに立たないわけがなかったでしょう」
「ハニのカバーを聴いてから来たんですが、原曲を何回か聴くと、ハニよりもこっちの方が頭に残ります」〉

 なぜいま、韓国で松田聖子がここまで話題になっているのだろうか? そこには韓国で起きている“あるブーム”の影響がある。

「満塁ホームランのステージ」と評された

 韓国の元スポーツ紙デスクが“松田聖子リバイバル”の経緯を解説する。

「『青い珊瑚礁』をカバーしたハニのステージは、40~50代のファンを中心に大きな反響があった。これを受け『NewJeansは日本でもスゴイらしい』という反応が韓国でも広まり、その評判とともに松田聖子の名前も知られることとなったのです」

 NewJeansといえば2022年デビュー後、わずか1年で米ビルボードで1位を獲得した実績で知られるが、日本でも2日間の東京ドーム公演を成功させるなど、高い支持を得ている。今年4月から5月にかけては所属事務所HYBEの内紛が韓国内外で大きく報じられた。この影響からか6月には「新作アルバムの初動販売量が前年比半減」といったニュースもあった。

 しかし東京ドーム公演大成功でそのイメージを一気に挽回させた形になっている。中でも、ハニが『青い珊瑚礁』を披露したステージは「東京ドームで打った満塁ホームラン」(「国民日報」)とまで評された。

 話題はそれだけでは終わらなかった。これをきっかけに、韓国独自の視点から「1980年代の松田聖子」が読み解かれていったのだ。

韓国で松田聖子は広く知られた存在ではなかった

 そもそも韓国で松田聖子は広く知られた存在ではなかった。

「『青い珊瑚礁』は韓国ではそれほど知られた楽曲ではありませんでした。しかし、ノスタルジックな淡い空気が漂うハニのステージは、大衆から好感を得ています」(KBS)

 この楽曲が発表された1980年は、韓国で「日本文化の流入制限」が存在した時代だ。韓国は独立後、1990年代の終わりまで映画・音楽・漫画といった日本大衆文化を規制してきた。日本の芸能文化が韓国に入ることにより、「韓国の芸能文化が淘汰されてしまう」「その状態は文化的な再侵略を想起させる」と考えられていたのだ。

 この頃の韓国での日本文化の位置づけは「アンダーグランド文化」だったと言えるだろう。正規にリリースされていない楽曲が流行っていて、たとえば松田聖子と同世代のアーティストを考えると、近藤真彦の歌う「ギンギラギンにさりげなく」の認知度はかなり高い。

 筆者が韓国の50代以上とカラオケに行く際にはこの曲はテッパンで、ほぼ100%の確率で「知っている!」と喜ばれる。しかし「誰が歌っているか=近藤真彦」まで知られていない。なぜなら、当時の主要媒体は闇流通のカセットテープで、楽曲以外の情報は伝わらなかったのだ。

 それが2024年の今、松田聖子は韓国で「発見された」。

韓国で起きた“ブーム”が追い風に

「ハニのステージからは、心地よい懐かしさが伝わってきます。それは80年代当時を知る40代以上だけでなく、10~20代をも刺激している。若者たちは、新鮮な気持ちで松田聖子という歌手、そして『青い珊瑚礁』を楽しんでいます」(前出の韓国スポーツ紙元デスク)

 若い世代も新鮮な気持ちで松田聖子の歌を聴く。その背景には、前述した韓国で2018年頃から始まる「ニュートロ(Newtro)」ブームがある。これは、ニュー(New)と“レトロ(Retro)”を組み合わせた造語で、80~90年代頃の要素を再編集して最新のスタイルに落とし込むというものだ。当時を知る世代にとっては懐かしく、若い世代は新鮮に楽しむ。そうした観点から幅広い層に共感を得られるものとして定着した。

 今回の松田聖子・青い珊瑚礁ブームでは、まさに韓国の「ニュートロ」の特徴が現れている。

「懐かしさを感じさせる対象」は、自国の文化から発信されたものだけに限らないということだ。隣国である日本の文化もどんどん発掘する。たとえば2年前には、1990年代に日本で流行した「ギャルピース(ピースを下に向けて腕を伸ばすポーズ)」が韓国の若者の間で広がった。日本で「懐かしい」と位置づけられるものは、韓国でも同じように捉えられる傾向にあるのだ。

「ニュートロ」のもうひとつの特徴は「最新のアレンジを加えて、古いものに新たな味を加えること」。特にこれはファッションで顕著で、ハニの髪型はいわゆる“聖子ちゃんカット”よりも短めのショートヘアだった。当時のイメージを残しつつ、現代のスタイリングにも合うようにしたのだろう。

ほとんどのヒロインが“聖子ちゃんカット”だった

 その一方では、SNS上で一般ユーザーが投稿した「ハニをより聖子ちゃんカットに近づけ、あだち充風に描いたイラスト」も話題になり、韓国人の松田聖子への関心はさらに高まった。7月2日、韓国の通信社ニューシスは“聖子ちゃんカット”についてこう触れている。

〈「松田聖子は“聖子ちゃんカット”というヘアスタイルを流行させるほど、当時の日本の大衆文化を象徴する人物だった。『H2』『ラフ』などでファンを獲得した日本漫画家・あだち充のもう一つの名作 『タッチ』のヒロイン・浅倉南は聖子をオマージュしたキャラクターだ。特に髪型がよく似ている」〉

  KBSも“聖子ちゃんカット”についてこう紹介している。

〈「80年代の日本のマンガやアニメのヒロインのほとんどが“聖子ちゃんカット”だったという点も彼女の人気の高さを見せつけている」〉

 ちなみに、K-POP歌手が日本公演で松田聖子の歌を歌うのは今回が初めてではない。2015年にはKARAに当時加入したばかりのメンバー、ホ・ヨンジが日本でのコンサートツアーで同じく松田聖子の「天使のウインク」を歌ったことがあった。結果はハニと同じく、一気に日本のファンのハートを鷲掴みにした。

「青い珊瑚礁」が迷いなく浮かんだ

 NewJeansをプロデュースするミン・ヒジン氏は7月3日、「朝鮮日報」のインタビューにこう話している。

〈「同世代の他のグループには見られない雰囲気を演出したら面白いだろうと思った。そうした時に迷いなく思い浮かんだのが『松田聖子』の『青い珊瑚礁』だった」〉

 ニューシスは、ハニがベトナムとオーストラリアの二重国籍であることに言及し、「彼女が韓国でK-POPアイドルになって日本語の曲を歌う姿は、音楽には国境がないということをあらためて認識させた」と述べた。そんな瞬間に松田聖子の存在があった。

 時代が流れていくほどに、その存在感が増していく。日本の「時代を象徴する存在」として韓国にも伝わっていく。松田聖子という歌手の凄みを、あらためて感じさせる話だ。

(吉崎 エイジーニョ)

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