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「ドラゴンボール」の展開に行き詰った鳥山明さんに「どうしたらいい?」と相談されて…《“レジェンド”辻真先(92)が明かす秘話》

文春オンライン / 2024年7月28日 6時0分

「ドラゴンボール」の展開に行き詰った鳥山明さんに「どうしたらいい?」と相談されて…《“レジェンド”辻真先(92)が明かす秘話》

鳥山明氏 ©時事通信社

〈 「職人気質で自分に厳しい人」鳥山明が「ドラゴンボール」連載中に愚痴っていたこと〈「Dr.スランプ」アニメ化担当・辻真先(92)インタビュー〉 〉から続く

アニメ・特撮ドラマの脚本家として活躍してきた辻真先氏は、手塚治虫作品や鳥山明作品のアニメ化における脚本も担当してきた。その辻氏が、 鳥山明との仕事について振り返る 。

◆◆◆

赤塚賞の審査会では…?

 手塚先生は、とにかく話のネタをたくさん持っていて、作品を展開することに苦労しなかった人でした。打ち合わせをしても、10個のうち7個くらいは「天下の手塚治虫がこんなアホなことを言うのか!?」と疑いたくなるほどくだらない話をするんですよ。ですが、最後の一つ二つになると、こちらが「参りました」と膝を正して謝りたくなるほど素晴らしいアイデアが出てくる。

 氷山の海面から下の、目に見えない裾野の部分、いわば作品の役に立たないようなくだらない話を手塚先生は恥ずかしげもなく、打ち合わせで披露するのです。そうすることで頭の中では徐々にアイデアが練り上げられていったのでしょう。それこそが手塚先生が次から次へと作品を生み出す秘訣でもあったと思います。

 逆に鳥山さんは、氷山の下の部分はあまり見せないタイプだったように思います。

 手塚先生と鳥山さんの違いは、身近に気のおけない話し相手がいるかどうかによるのかもしれません。漫画の神様と言われるほど偉かった手塚先生には気軽に話せる年下の編集者がいくらでもいました。

 でも、鳥山さんの場合は、自分を見出してくれた年上の編集者である鳥嶋(和彦)さんがどんどん出世して、最後は「少年ジャンプ」の編集長にまで上り詰めてしまった。その後も偉い編集者ばかりが担当につき、おそらく控え目な鳥山さんの性格を考えれば、思いつきのアイデアを打ち明けるどころか、背伸びしながら話さなければいけない状況が多かったのではないでしょうか。

「辻さんどうしたらいい?」

 赤塚賞の審査会で、たまたま私と鳥山さんの二人だけが早めに会場に到着した時などは、「ドラゴンボール」の話の展開に行き詰っていた鳥山さんが、「辻さんどうしたらいい?」と聞いてきたものです。私は「SFにして、タイムスリップとか使えば?」と提案しました。我ながら良いアイデアだと思ったのですが、鳥山さんは「それ、この間やっちゃったんだよ」と泣きべそというか、泣き笑いの表情を浮かべていました(笑)。あれだけ長く連載を続けていれば、それはそうですよね。その時の鳥山さんの表情を今も鮮明に覚えています。

 考えてみれば、「ドラゴンボール」も最初は主人公の孫悟空が7つのボールを集める冒険漫画でしたが、その設定からどんどん離れて、フリーザやセルなど次々と現れる強敵と戦うバトル漫画へと変化していきました。しかし、バトル漫画というジャンルは大変なもので、物語を面白く展開するとともに、アクションの場面も魅力的に描かなければなりません。それを一人でやるのは大変なので、バトル漫画は原作と作画を分けて、二人体制にすることが多いんです。「空手バカ一代」は原作が梶原一騎さん、作画がつのだじろうさん、「北斗の拳」も原作が武論尊さん、作画が原哲夫さんと、バトル漫画の名作は、たいてい二人体制から生み出されています。それを鳥山さんは一人でやっていたわけですから、驚嘆するほかありません。

 鳥山さんが描くメカや乗り物の絵も天下一品ですよね。鳥山さんの「画家」としての資質が見事に発揮されています。「ドラゴンボール」の単行本の表紙絵や扉絵では、悟空がバイクに乗ったり、戦闘機に乗ったりしている場面が、よく描かれていましたが、精緻な絵にいつも圧倒されました。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「 手塚治虫と鳥山明の仕事術 」)。

 

全文(7000字) では、辻氏が、二人の人柄、作風、仕事ぶり、そして時代背景などを比較しながら、貴重なエピソードを紹介しています。「手塚氏は作家で、鳥山氏は画家」と評する真意とは? 

(辻 真先/文藝春秋 2024年8月号)

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