1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

「毎晩、私の身体の上に血まみれの女が……」身の毛もよだつ恐怖体験を語る相談者を救った臨床心理士の意外な正体とは

文春オンライン / 2024年7月26日 17時0分

「毎晩、私の身体の上に血まみれの女が……」身の毛もよだつ恐怖体験を語る相談者を救った臨床心理士の意外な正体とは

 幽霊は実在するのか? “いる派”・“いない派”に分かれ、長年論争が繰り広げられてきたが、どちらも決定打に欠け、いまだに決着はついていない。しかし、もし“いない”派の人間が幽霊が“視える”のに嘘をついているのだとしたら――。

『 その霊、幻覚です。 』の主人公、臨床心理士の泉宮一華は、普通のカウンセラーではない。心霊体験によって心に傷を負った相談者に心理学の観点から幽霊を否定し、回復へと導く心霊専門カウンセラーなのだ。例えば、血まみれの女性が毎晩身体の上に乗ってくるのが見える、という女性には次のように説明する。

――人間の脳は睡眠中に膨大な記憶を整理するため、その過程で曖昧な記憶の掛け合わせが起きることがある。例えば、不安や恐怖をトリガーに何気なく観たホラー映画予告の記憶が掘り起こされ、さも現実のような顔で幻覚として現れることがあるのだ。

 かように理路整然と話す彼女を見ていると、気持ち良いくらいの納得感が湧き起こり、思わず“いない派”に白旗をあげたくなる。ところが、実はこの彼女“視えている”のだ。

 というのも、一華は高い霊能力を持つ由緒ある寺の家系の生まれ。生まれながらにして視える能力を持つ彼女は、幼い頃から理不尽な恐怖に晒されてきた。だから、幽霊に振り回されない世間一般の価値観で生きたい一心で、霊を科学的に否定する立場である臨床心理士になったのだ。

 ただ、どうしたって視えてしまうことには変わりない。その結果、相談者には「幽霊は幻覚だ」と心理学的に納得させ、その裏でこっそりと霊を捕獲し実家で供養してもらう……。世にも新しい、いる派といない派を器用にまたぐハイブリッドな診療(除霊)スタイルが確立してしまったのである。

秘密を知っている青年の登場で平穏な日々が崩壊の危機に

 実家のことはひた隠しにしながら、心霊専門カウンセラーとして活躍する一華だったが、ある日突然クリニックに心霊探偵と名乗る青年・翠が現れる。強力な幽霊によって視える能力を奪われてしまったという彼は、その霊をどうにか探し出して能力を取り戻したいと言うのだ。

 実家のことを周囲にバラすと半ば脅された一華は、やむを得ず翠に協力することに……。こうして、視えることを否定したくて臨床心理士になった一華と、視える能力を取り戻したい心霊探偵との世にも不思議でいびつな幽霊退治が始まる。

 渋谷のスクランブル交差点に現れるおじさんの幽霊、山奥のトンネル、閉鎖した診療所に潜む最凶の幽霊……。クリニックに訪れる相談者からの話をもとに、もしかしたら翠の能力を奪った幽霊かもしれないと2人で現地へ行き、実証&除霊をしていく。

 一華が心理学で真っ向から幽霊の存在を否定した後に、しっかりと霊障に見舞われる2人の物語は怖くもあり、くすっと笑えるコメディ要素もある。しっかり幽霊が退治されることも、ホラーが苦手な読者にとってはありがたい。

 夏の風物詩の一つである怖い話。特に今年は猛暑続きだから、とんでもなく怖い話に浸って涼をとりたいところだ。かといって、あまりにも怖すぎると入浴中や就寝前のふとした瞬間に怖いシーンが蘇ってしまい“幻覚”が視えてしまうかもしれない。そんな怖がりなあなたにこそ、本書はピッタリな猛暑のお供だ。

(ちゃんめい/文春コミック)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください