立ち食いじゃないのに「せいろ」が400円!? 酒もつまみも安すぎる、池袋の“行列ができる創作そば屋”《店主はフィリピンパブ出身》
文春オンライン / 2024年7月30日 11時0分
![立ち食いじゃないのに「せいろ」が400円!? 酒もつまみも安すぎる、池袋の“行列ができる創作そば屋”《店主はフィリピンパブ出身》](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_72355_0-small.jpg)
地下街の35番出口から東側の地上に
コロナ禍・ウクライナ紛争以降、多くの蕎麦屋の値段は高騰した。蕎麦屋の値段については不思議な現象も起きている。値上げせずに頑張っている個人店があるため、バラバラな価格帯が混在している。しかしどこの店の主人に聞いても「材料費がまた上がるのでいつ値上げをすればいいか悩ましい」と嘆いている。
破格の値段で提供するそば屋の情報をキャッチ
そんな中、池袋にある10周年を迎えた街蕎麦店「創作生蕎麦 梟小路」が立ち食い蕎麦屋を下回るような破格の値段で商売しているという情報をボーカリストの友人から入手した。しかも美味くてメニューも豊富。気の利いたつまみもそろい、夜の居酒屋営業も大人気だという。さっそく訪問してみることにした。
店は池袋のサンシャイン側の美久仁小路の正面にある
場所は池袋のサンシャイン側の繁華街にある。池袋はいつ来ても人波に驚く。方角が分かりにくい地下街をどうにか抜けて35番出口から東側の地上に出る。インバウンドと若者が街に溢れている。駅前の大きな並木道、グリーン大通りを東池袋方向へ歩いていく。
南池袋公園前の信号を左折してしばらく歩くと人通りの多いエリアに入る。美久仁小路の正面に店はあった。駅から10分程度だろうか。
平日の午後2時過ぎである。店にはお客さんがひっきりなしにやって来て、店前の券売機で食券を買って吸い込まれていく。
ワンコインで食べられる“大人気メニュー”の正体は?
「本日の日替わりセット」(500円)は鶏天丼と小うどん。
この食券を購入する人が圧倒的に多い。他にも「親子丼」(500円)、「豚カルビ定食」(650円)、「チキンカツ定食」(650円)、「カツ丼」(650円)など手頃な値段のメニューが並ぶ。
友人と合流し店前で何を注文するか長考していると、「お酒飲まれますか? それなら中のメニューで注文できますからどうぞお入り下さい」と店の方が笑顔で誘導してくれた。この方が店主の川元充さんだった。
店に入るとフクロウのオブジェがたくさん
店に入るとフクロウのオブジェがたくさん置いてある。店は左にカウンター、右手前に食券と注文受け渡し場所、右奥がテーブル席や小上がりの席などがあり、見た目以上に広い。
店内は禁煙なので喫煙室も左奥にある。「緑茶ハイ」(300円)と「オクラとミョウガ合え」(300円)、「ハムカツ」(400円)、「ニラチジミ」(400円)、「自家製ネギ豚チャーシュー」(500円)、蕎麦は「麻婆蕎麦」(500円)と「野菜天せいろ」(600円)を頼んでみた。
改めてメニューをしっかりと眺めてみた。はっきりいって立ち飲み酒場より安い。大丈夫なのだろうか。
立ち飲み酒場より安い!「酒類豊富」なメニューの中身
飲みものをみると「酎ハイ」「緑茶ハイ」「ウーロンハイ」(300円)、「レモンサワー」(350円)、「ホッピーセット」(450円)だ。街蕎麦屋にもこんなに豊富な種類は置いていない。
つまみのメニューも壮観である。ひとことでいうと、いわゆる蕎麦屋メニューは「板わさ」(300円)、「天ぷら盛り5個」(400円)くらいで、居酒屋メニューが大半を占めている。人気は「鶏皮ポン酢」(300円)、豆腐から揚げる「揚げだし豆腐」(450円)、「ハムカツ」など。
「かけ」、「せいろ蕎麦」は破格の安さ
蕎麦のメニューもたくさん並ぶ。「かけ」(400円)、「せいろ蕎麦」(400円)と破格の安さだ。冷たい蕎麦は「ぶっかけ天ぷら蕎麦」(500円)、「ぶっかけ天玉蕎麦」(550円)、「野菜天せいろ」、「とろろせいろ」(600円)などがずらっと揃う。
温かい蕎麦は「天ぷら蕎麦」(500円)、「天玉蕎麦」(550円)、「麻婆蕎麦」、「カレー南蛮蕎麦」(550円)、「海老天蕎麦」(580円)、「ネギ煮豚蕎麦」(600円)。つけ蕎麦もある。「鶏と竹の子のつけ蕎麦」(550円)、「カレーつけ蕎麦」(500円)など。とにかくどれも安い。これでも7月に値上げした価格だというから驚きである。
「創作生蕎麦 梟小路」は今年5月19日で10周年を迎えた。しかし、この池袋という町でどうしてこんなに安い店を始めることになったのだろうか。注文している間に川元店主に聞いてみたのだが、これが納得の理由すぎて感心するばかりだったのである。
フィリピンパブの店長だった川元さんが、蕎麦屋を始めた納得のワケ
川元店主は静岡県出身の54歳。どこかの蕎麦屋で修業したのか聞くと「修業は一切していない」という。
20歳頃上京し、1990年頃から1998年頃まで池袋のメキシコ料理の店で店長として頑張って働いていた。「社長は厳しい人だったが料理や商売のことはよく教えてくれた」という。
そして1998年頃から今の場所で、何とフィリピンパブの店長などをしていたというのだ。「仕事は忙しかったけどいろいろ大変で相当疲弊していた」という。
「パブよりももっと足が地に着いた近隣に愛される店をやりたい」と一念発起
池袋で働くようになってから蕎麦が好きになったそうで、忙しい合間によく立ち食い蕎麦屋や街蕎麦屋に立ち寄っていた。
「十割手打ちそば 美蕎BIKYO」は今もよく行くという。近所にあった今はなき「生そば玉川池袋東口店」、立ち食い蕎麦屋の「いわもとQ」、年配夫婦が経営していた「伊作」、「六花そば」にもよく行ったという。
そして、「パブよりももっと足が地に着いた近隣に愛される店をやりたい」と一念発起し、パブがあった場所で今の店をスタートしたのが2014年だった。
すごいのは「蕎麦屋をやるのなら、周りにないような、居酒屋としても街蕎麦屋としても、立ち食い蕎麦屋としても使えて、若い世代から年配まで、男女問わず気軽に使ってもらえるような店にしたい」と計画したことである。
つまり安い店、メニューが斬新な店である。
蕎麦は近隣で食べ歩いた経験を元に、知り合いの製麺所に川元店主のオリジナルの配合で製麺してもらい、生麺を仕入れ味を吟味していった。
つゆも試行錯誤して万人に受ける上品な味を作っていった。つまみや料理はメキシコ料理店時代から独学で覚え、独自の仕入れ先を開拓し、低価格で提供できるようにメニューも工夫した。
メニューが従来の蕎麦屋のものと違うのはこうした背景があったからである。そんな話をしていると、注文の品が続々と登場した。
〈 名物は500円の「麻婆そば」酒もつまみも安すぎる、池袋の“行列のできるそば屋”は値段も経歴も破格だった《店主はフィリピンパブ出身》 〉へ続く
(坂崎 仁紀)
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