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足立区の女性教師(29)を「殺害して埋めた」と時効成立後に自白した男の“狡猾な計算” 完全なる逃げ得を狙ったあまりに憎々しい発言とは

文春オンライン / 2024年8月23日 17時0分

足立区の女性教師(29)を「殺害して埋めた」と時効成立後に自白した男の“狡猾な計算” 完全なる逃げ得を狙ったあまりに憎々しい発言とは

写真はイメージです ©AFLO

〈 足立区の女性教師(29)が夏休みに失踪…26年間手がかりゼロだった「元・未解決事件」が動き出した“驚きの展開” 〉から続く

 1978年の夏、足立区の小学校教諭・石川千佳子さん(当時29歳)は、忽然と行方をくらました。北朝鮮による拉致被害の可能性も考慮されたが、何の手がかりも得られないまま、26年もの時間が経過してしまった。

 だが、この“未解決事件”は予期せぬかたちで進展する。

 2004年8月21日、石川さんを殺害したという男が綾瀬警察署に出頭してきたのである。1973年から石川さんと同じ小学校で警備主事として働いていた男だ。事件当時は42歳。石川さん失踪の前日の8月14日、校内で夕方に石川さんを目撃したと証言した警備員である。

 男が事情聴取で話した内容は以下のとおり。

 1978年8月14日午後4時30分ごろ、校舎を巡回している途中で石川さんとぶつかって口論となり、大声で騒がれたので口をふさぐなどして殺害し、自宅まで遺体を運び、妻が外出しているあいだに床下に埋めたとのこと。

床下から一部白骨化した遺体や財布などの所持品が…

 この証言にもとづき、翌8月22日に警察は足立区内の男の自宅を捜索したところ、一階和室の掘りごたつの下、床下約1.1メートルの地中から、防水シートにくるまれた一部白骨化した遺体および石川さん名義のキャッシュカードや財布、化粧品、衣類などの所持品が発見された。

 そして、DNA鑑定の結果、それが石川さんの遺体であることが確認された。

 石川さん失踪から26年。未解決だった失踪事件は、殺人事件へと様変わりしたのである。

 それにしても男はなぜ26年も経ってから名乗り出たのか。

 男によると、遺体を埋めてしばらくしたら、埋めたことも忘れていたという。それが10年ほど前に、男の自宅は道路拡張のための土地区画整理事業の施行地区に指定され、立ち退きを要求されるようになり、そのときに遺体の存在を思い出した、と。

 自分で殺害しておいて、その事実を「忘れていた」とは、なんとも憎たらしい言い草ではないか。

 じつはこの「10年ほど前」という時期(=1994年頃)から、男は自宅を要塞化し始めていた。自宅玄関を高さ2メートルに及ぶ鉄製の門扉にし、家の周りはトタンで覆い、自宅の周囲をブロック塀、アルミ製の目隠し等で囲んで内部の様子を外部からうかがうことができないようにし、鉄柵や有刺鉄線を張り巡らせた。要塞化はさらにエスカレートしていき、門扉と裏手にはサーチライトや赤外線防犯カメラも設置したほどだ。

 近隣住民とは完全に没交渉であいさつをすることもなく、宅配便も玄関ではなく門の外で応対するほどの徹底ぶり。要塞化した自宅の異様な外観と男の態度からは、事件発覚を恐れ、ひたすら遺体を隠蔽し続けようという狡猾さが感じられる。

 関係者が証言するところによれば、この男の評判はすこぶる悪い。放課後に課外活動中の生徒のランドセルを校庭に放り出したとか、体育館の中に人がいるのに外から鍵をかけたとか、校内を巡回する際に棍棒のようなものを持っていたなど、周囲に対してかなり威圧的だった様子が見て取れる。

 ペットの猿を懐に入れて連れ回していたとの証言も残っており、とかく教員たちとはトラブルが絶えなかったようだ。誰もが「怖い」「気味が悪い」と口を揃える。

 男は足立区区画整理課の担当者には「高齢の2人暮らしのため引っ越しできない」と言い、行政不服審査請求までおこない、自宅の明渡しを拒否していた。しかし、いよいよ立ち退きを拒否できない段階になっていた。

 このまま住んでいた家が取り壊されて更地になれば、それまでひた隠しにしてきた遺体が発見されることは避けられない。第三者によって発見されて騒ぎになる前に、みずから警察に出頭した……というわけだ。

当時は殺人事件の時効が15年、逮捕も勾留もできない「逃げ得」

 言い方を変えれば、区画整理の話がなければ、石川さんの失踪は“未解決事件”のままであった。

 現在でこそ、殺人罪の公訴時効は期間制限がないが、石川さんが殺害された当時には、時効期間は15年であった。真犯人しか知りえない事実を語る男が目の前にいて、物的な証拠も出てきた。にもかかわらず、警察は勾留することもできなければ、署に留め置くことさえできない。あくまで任意の事情聴取しかできず、事件の全容を解明することはできない。すでに時効を迎え、罪に問われないことを知っていたからこそ出頭したのである。

 石川さんの失踪という“未解決事件”は、足立区女性教諭殺害事件となり、犯人の自首によって解決を迎えた。

 だが、このような幕引きは、誰もが納得できるものではない。

 これほど狡猾な殺人犯を罪に問うことができないのだろうか。これでは完全な逃げ得だ。人を殺した人間が罰せられもせず、平然と生きているなんてことが許されるのだろうか。

 ところが、逃げ切りを確信した犯人の目論見は外れることになる。

〈 女性教師(29)を殺害して時効まで逃げ切った男の“唯一の誤算” 遺族が起こした1億8000万円の損害賠償請求に、裁判所がまさかの決断「著しく正義に反する」 〉へ続く

(加山 竜司)

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