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「主将は石川と決めていた。イタリアにいた彼に電話すると…」中垣内祐一がみた男子バレー石川祐希28歳の“本気”《エースの西田、髙橋藍、セッターの関田は…》

文春オンライン / 2024年7月31日 11時0分

「主将は石川と決めていた。イタリアにいた彼に電話すると…」中垣内祐一がみた男子バレー石川祐希28歳の“本気”《エースの西田、髙橋藍、セッターの関田は…》

石川祐希 ©JMPA

〈 「胃に穴が開いて、睡眠薬も欠かせなかった」「そんなんじゃ世界に勝てない、と…」バレー男子日本代表が“最も強くなるタイミング”とは《中垣内祐一が解説》 〉から続く

 パリ五輪開催直前の世界ランキングで“過去最高”の2位まで浮上し、52年ぶりのメダル獲得が期待される男子バレー。これほど強くなった背景には、一体なにがあったのか? 前代表監督の中垣内祐一さんに、主将の石川祐希(28)をはじめとした中心メンバーとの“秘話”や、彼らの強さの理由について聞いた。(全3回の2本目/ 続きを読む )

◆ ◆ ◆

「遂にこんな日本人選手が…」突出した能力の石川祐希選手

――綺羅星のごとく並ぶ選手の中でも石川選手の存在がかなり大きいように思います。

中垣内祐一さん(以下、中垣内) それは間違いないですね。彼のことは中学、高校時代から気にして見ていましたけど、石川がすごいのは、成長に波がなく確実に階段を上がっていることです。

 そこからも彼がどれだけ真摯にバレーに向き合い、行動に移しているのかが分かります。彼はまだまだ伸びるし、「世界トップのプレーヤーになる」という目標を間違いなく達成すると思いますね。

 石川のプレーに驚かされたのは2015年のW杯。僕がバレー界から遠ざかっているうちにこんなに成長したんだと感動しました。そして遂にこんな日本人選手が現れて嬉しくなりましたね。だから、この才能を潰してはならないと、代表監督に立候補したんです。

「主将は石川」と考えていた。本人に電話すると“即答”だった

 僕が代表監督になった当初から石川中心のチームを作り、東京五輪の主将は石川で臨もうと考えていた。2019年にイタリアにいる彼に電話で主将を要請すると「やらせていただきます」と即答でした。

 彼の能力は突出していたし、何よりバレーに取り組む姿勢が素晴らしい。10代でイタリアのセリエAに渡ったバレー界の先駆者ですから、他の選手への影響も大きい。彼の持つ膨大な熱量が他の選手に拡散されれば、他の選手も石川の背中を追うと睨んだ。

 事実、代表の中心メンバーはセリエAやポーランドのような強豪国に渡り、腕を磨いてきましたからね。高いブロックをいかにかわして打ち切るか。そんなスパイク技術をかなり会得しています。

とてつもなく高い壁に見えたブロックも「ぶち壊してやる」という勢いで跳ぶ

中垣内 僕らの時代は、海外のブロックはとてつもなく高い壁に見えた。スパイクしようとジャンプした瞬間から「あ、ダメだ」って。ところが今の選手たちは、3枚ブロックに付かれても、「そんなもん、ぶち壊してやるぜ」というくらいの勢いで跳んでいますからね。

 加えて、石川のいいところはネガティブな言動が一つもない。常に「俺たちは出来るよ」「俺たちは勝てるよ」「俺たちならもっと上手くなれる」とか、いつも前向きな発言をするので、周りの選手が石川に引っ張られているのは間違いありません。石川の思いが全員を奮い立たせ、あと1本、あと1セット、あと1試合頑張ろう、というモチベーションになっているんです。

 石川は最近「俺たちはパリで金メダルを獲る」と口にしているので、間違いなく今の代表は本気で取りに行くと思います。

髙橋藍が高校生で代表入りした理由

――髙橋藍選手についてはいつごろから注目していたんですか。

中垣内 彼が高校の時。春高バレーを見ていて、体の使い方、判断力が非凡だなと思った。スパイカーであれだけレシーブに突出した選手はなかなかいないんです。聞けば小学生の頃はリベロをしていたというので、なるほどなと。だから高校の時に代表に入れました。「まだ早い」と周りから文句を言われるだろうな、と思いながら(笑)。

 でも彼は賢い選手なので、石川ら先輩選手の姿勢を学び一気に上達しました。当時はまだ体も出来ていなかったためパワーもスピードもなかったけど、成長するにつれキレのいいシャープなスパイクが打てるようになった。

 同じポジションの石川とよく比べられるようですが、石川よりは泥臭いプレーが出来る選手です。特にディフェンスでは粘り強く食らいついていきますし、守備に関しては、アウトサイドヒッターの中では世界トップクラスだと思います。

――西田選手も代表に入ってから一気にブレイクした印象があります。

スパイクやサーブのスピードが日本人離れしていた

中垣内 彼は高橋と同じように、186cmという世界的には極めて低身長のアタッカーです。でもスパイクやサーブのスピードが日本人離れしていた。「代表でもまれれば必ず化ける」という確信がありましたね。事実、すぐに頭角を現し、あれだけ頑固にサーブに重きを置こうとしなかったフィリップが、サーブの重要性を打ち出しましたからね。西田はフィリップの戦術をも変えたんですよ(笑)。

――身長の低さで言えばセッターの関田誠大選手も175cmしかありません。起用に反対意見はありませんでしたか。

大型セッターを起用すべきという意見もあったが…

中垣内 身長が低いとブロック面でのマイナスが取りざたされ、もっと上を目指すなら大型セッターを起用すべきとの意見はかなり頂戴しました。でも、セッターに大事なものは何か。アタッカーを活かすトスをあげられることがブロック以上に大事なことであって、そういう意味では関田以上の選手はいない。

 そもそも、身長2m以上の世界のアタッカーからすれば、日本のセッターが175cmだろうが190cmだろうが小さいことに変わりはない。それならトスワークに秀でた選手を選ぶのが当然。たとえブロックで得点できなくても、それ以上にレシーブで貢献できる。日本が世界ランク2位になったのも、関田のトスワークの貢献度は小さくありません。

 選手のことは一日中でも語っていられますが、とにかく彼らは仲がいいし、チームワーク抜群。それにみんな前向きで明るい。それはなぜかというと、彼らがやりたい高いレベルのバレーが出来ているからなんです。だから彼らはいつも楽しそうにプレーしている。

既存の価値観をひっくり返した彼らの“功績”

――バレーやバスケットは高身長が有利に働く競技。世界がどんどん大型化する中で、バレー男子は未来永劫メダルが獲れないと思っていた人も少なからずいたはずです。

中垣内 僕も現役時代はそう思っていました。でも、今の代表選手たちに出会った時は、彼らならこの先入観を必ず破ってくれると確信したんです。何せ、僕らの頃とは意識がまるで違う。自分の技術を高めることにどん欲だし、極端な話、それしか考えていない。現役の頃の僕らに、今の選手の爪の垢を煎じて飲ませたいくらい(笑)。

 今の代表選手の一番の功績は、既存の価値観を見事にひっくり返したことだと思いますね。常識が変わった。

 ご存じだと思いますが、今の男子バレーはフィリピンなどの東南アジアで非常に注目されています。とくに石川や髙橋などはアイドル並みの人気がある。

 ただこの現象は、彼らのカッコ良さだけでなく、小柄なアジア系の人たちに、自分たちも世界で闘えるという夢を与えたことも大きい。この功績はもっと称賛されてもいいと思います。

〈 バレー男子“スーパーエース”→代表監督→コメ農家に! 中垣内祐一(56)の新たな“人生プラン”「フィリップから『お米を送って』と連絡が…」 〉へ続く

(吉井 妙子)

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