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バレー男子“スーパーエース”→代表監督→コメ農家に! 中垣内祐一(56)の新たな“人生プラン”「フィリップから『お米を送って』と連絡が…」

文春オンライン / 2024年7月31日 11時0分

バレー男子“スーパーエース”→代表監督→コメ農家に! 中垣内祐一(56)の新たな“人生プラン”「フィリップから『お米を送って』と連絡が…」

東京五輪での中垣内祐一さん。現監督のフィリップ・ブランをコーチに招聘し、男子バレーの強化を進めてきた ©︎JMPA

〈 「主将は石川と決めていた。イタリアにいた彼に電話すると…」中垣内祐一がみた男子バレー石川祐希28歳の“本気”《エースの西田、髙橋藍、セッターの関田は…》 〉から続く

 90年代を代表する日本男子バレーの“スーパーエース”であり、前日本代表監督。“ガイチ”の愛称でも知られる中垣内祐一さん(56)は現在、故郷の福井で「大学教授」と「米農家」を両立する日々を送っている。意外な“転身先”では「バレーの経験が活きている」と語る中垣内さんに、話を聞いた。(全3回の3本目/ はじめから読む )

◆ ◆ ◆

故郷・福井で「米農家」と「大学教授」の二刀流

――選手たちが能力を発揮できるような環境を整えたのに、パリ五輪まで見届けたいと思わなかったんですか。

中垣内祐一さん(以下、中垣内) 正直に言うなら、少しはありましたね。でもそこは大人の事情で……。というのは冗談で、僕にも人生プランがありましたから。

 福井県の実家は江戸時代から13代続く米農家。50歳になったら福井に戻り、米農家を継ごうと20歳の頃から決めていました。まあ、代表監督になり多少プランは遅れましたが。

 故郷に戻って間もなく、福井工業大学の運営母体である金井学園の理事長から、大学教授の要請と、中・高・大学のバレーボール部総監督の依頼を受けました。僕のライフプランにはなかったけど「故郷の役に立つのであれば」と引き受けさせていただきました。だから今は米農家と大学教授の二刀流です。

大学の授業で活かされる、フィリップ・ブランから学んだこと

――大学ではどんな授業を?

中垣内 月曜日から金曜日まで8時半から17時半まで勤務し、安全管理論、スポーツ施設論、スポーツ指導などを週に7コマ担当しています。昨年からゼミを持ち、卒論の指導をしていますけど、まだまだ四苦八苦ですよ。

 大学では授業の準備が大変。学生が飽きないように話す内容を変えたり、スライドや動画を準備したり……。着任当初は、学生が授業を真面目に聞くのは当然と思っていたけど、もし学生が飽きたり居眠りするのであれば僕のせい、と考えを改めました。

 大学では代表監督時代の経験がとても役に立っています。僕はチームミーティングの時、出たとこ勝負でこなしていたのですが、フィリップ(※代表監督のフィリップ・ブラン)は話す内容を日ごろからメモにし、確認しながら喋っていました。だから、ミーティングで話す内容には説得力があり、ロジックの破綻もないので選手やスタッフにスっと伝わる。

「準備がすべて」とフィリップから学んだことを、大学で生かしていますね。

「バレーコートで言えば2200枚分ぐらい」33ヘクタールの水田を耕作

――農業は、大学以上に大変そうですね。自然が相手だから智慧が通じないことも。

中垣内 バレー以上に難しい。ただ、一人でやっているわけではなく、4人で回しているので、大学に出勤前の早朝、休日、あるいは夏休みに一気にやるという感じです。うちは科学肥料を使わない特別栽培米なので、結構手間暇がかかるんですよ。

 それに農機具代がべらぼうに高い。コンバインは2200万円もするし、トラクターは1300万円。トラクターに付けるアタッチメントが300万円~400万円。コンバインと合わせるとそれだけで4000万円。それでも10年持つかどうか。僕らだけでなく、日本の米農家は機械を買うために働いているようなものです。

 今は、33ヘクタールの水田を耕作しています。

――33ヘクタール! 規模が大きすぎてイメージできません。

中垣内 バレーコートで言えば、2200枚分ぐらい。それでも利益をキチンと上げるためには3倍ぐらいの面積が必要。できれば、7~8倍ぐらい欲しい。とはいってもそれは現実的ではないので、農業法人を設立し、ブランド米を作って勝負しようとしています。

 流通経路も自分たちで開拓し、地元スーパーや食品会社などに営業にも行くことも。今はコシヒカリ、イチホマレ、ふくむすめ、ピカツンタ、アキサカリ、ハナエチゼンという品種を作っていますが、基本的には、自分で食べておいしいと思えるお米を、安心安全な農法で多くの食卓に届けたいという一心ですね。

 ご存じでしょうか。スーパーには多くのブランド米が並べられていますが、それは流通業者が色んな農家からのお米をブレンドして出しています。色んな作り方をした米を混ぜてしまっている。

作った人の顔が見えるお米はおいしい

 僕は農業を本格的にやろうと思った時から、おいしいと言われるお米をずいぶん食べましたけど、本当においしいお米って、ブランド米ではなく、誰が作ったかなんです。その農家さんのこだわり。もちろん、ロケーションもありますけど、単一蒸留所で醸造されるウイスキーのシングルモルトのように、作った人の顔が見えるお米を買えば間違いないです。

 僕もそういう米作りを目指しています。うちのお米はネットでも買えますよ。「農好社」を検索していただければ。

 うすうす感じていましたが、実際に就農してみると日本の農業は問題が多いし、闇が深い。このままでは将来的に米作農家が減っていくのは目に見えています。いずれ、おいしいお米が日本の食卓に届かなくなる日が来るのではと懸念しています。

――中垣内さんが男子バレーを変えたように、日本の農業問題にも着手していくんですか。

中垣内 いやいや、僕のようなひよっこ農家が言っても誰も耳を貸してくれません。とにかく安くておいしいお米を安定して届け、評価を高めないと、僕自身も自信を持って発信できないですからね。ですから一人前になるまでは、黙々と田んぼと向き合います。

 話が変わりますが、今の日本代表選手はセルフプロデュースが本当に上手いと思う。プロとして活躍するために、あるいはお金を稼ぎ続けられるために何をどうするか、自分をどう見せるかという最適解が分かっている。

 僕も現役時代にそんな知恵があったらまた違う人生があったかなと考えたこともあるけど、せっかく彼らに学んだセルフプロデュース術を、今度は自分が作ったお米に生かしていきたい。

 僕が米農家に転身してから、フィリップから「お米を送って」という催促もありました(笑)。彼らはパリには炊飯器を持って行くと聞いたので、僕が作ったお米を送るつもりです。選手の胃袋に入って彼らを応援できたら最高じゃないですか。

 もし金メダルを獲ったら、うちのお米の宣伝にもなりますし(笑)。

(吉井 妙子)

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