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「久保建英を選ばなくて良かった」“エース不在”の日本代表がパリ五輪で次々と強豪撃破…城彰二が語る“大岩ジャパン”が決勝Tに進出できたワケ

文春オンライン / 2024年7月30日 11時0分

「久保建英を選ばなくて良かった」“エース不在”の日本代表がパリ五輪で次々と強豪撃破…城彰二が語る“大岩ジャパン”が決勝Tに進出できたワケ

決勝トーナメント進出を決めた、パリオリンピック・サッカー日本代表 ©JMPA

 今月26日に開幕したパリオリンピック。サッカー男子日本代表は、予選リーグでパラグアイ、マリと対戦し、それぞれ5-0、1-0で勝利。30日に行われるイスラエル戦を前に、2大会連続での決勝トーナメント進出を決めた。

 元日本代表で、現在はサッカー解説者として活躍する城彰二氏は、サッカー男子日本代表の試合をどう見ているのか。話を聞いた。

◆◆◆

2試合で6得点・失点ゼロ、強さの理由は?

――日本は、初戦のパラグアイ(5-0)、2戦目のマリ(1-0)に勝ち、2試合でグループリーグ突破を決めました。

城彰二さん(以下、城) 正直、2試合で突破できるとは思っていなかったです。それを可能にしたのが初戦のパラグアイ戦での勝利でした。最初は相手が主導権を握り、ボールを支配されたけど、相手のペースになったところで先制点を取れたのが大きかった。

 それで相手が焦って退場者が出て、2点目が入ったところでパラグアイは完全に切れてしまった。「得点力、大丈夫か」と言われた中で、5点取れて、すべてがうまくいった勝利で波に乗れたと思います。

――マリ戦は我慢がつづき、しぶとく僅差で勝利しました。

 マリに圧倒的に押されて、チャンスを作られて、GK小久保(玲央ブライアン)のファインセーブやポストに助けられている中、ロングカウンターで仕留めたのはすばらしかった。

 ただ、勝負は紙一重で、最初のチャンスを決められていたらボコボコにされている可能性があったし、PKを決められたらひっくり返されていたかもしれない。日本は辛抱強く戦えた分、運があったのかなと思います。

――2試合で6得点失点ゼロ、日本の強さをどう分析していますか。

 守備力が安定しているのが大きいですね。大岩(剛)監督が守備の人なので、チーム全体として守備のやり方が非常に徹底されている。ハイラインで前線の細谷(真大)からボールを追うんですが、選手の守備の意識が非常に高くて、そのやり方がチームに浸透しています。最終ラインや小久保だけじゃなくて、全体の守備が機能しているのは、このチームの大きな特徴であり、最大の強みですね。

「久保建英を入れなくて正解だった」ワケ

――日本の攻撃については、どう見ていますか?

 良い攻撃をするには良い守備からと言われるように、チームは守備からしっかり入っているし、その結果、攻撃にも人数を掛けながらいい感じで攻めていけています。

 しかも、みんな技術が高いのでボールをロストしないし、攻撃面での連係がスムーズで2列目の選手は得点力もある。攻守のバランスが良く、完成度が高いのがこのチームの良さ。今、思えばOA(オーバーエイジ)枠を使用しなくてよかったんじゃないかなと思います。

――OA枠として期待されたヴィッセル神戸の大迫(勇也)選手や、五輪世代のエースとして期待された久保(建英)選手の不在も、今のチームを見ると問題はない。

 久保とかは、抜群に能力が高いし、みんなリスペクトするので、いたら彼に頼ってしまったり、どうしても彼にボールを集めないといけない、という意識が出てしまう。そうなると、今のチームの良さであるフォア・ザ・チームで戦えなくなり、ギクシャクしてしまう可能性も出てきます。

 今のチームには「自分たちだけで勝てるんだ」という意識の高い選手が多く、連係面もうまく機能しているので、OAや久保を入れなくて正解だったかもしれないですね。

決勝トーナメントに向けて修正すべきポイント

――グループリーグ残り1試合のイスラエル戦は、どのようにとらえるべきでしょうか。

 日本は予選突破を決めているし、決勝トーナメントを見据えると、ここで出場時間が少ない選手や出ていない選手に試合経験を積ませる必要があると思います。決勝トーナメントになると疲労が出てくるだろうし、相手との接触などで怪我する選手が出てくるかもしれない。

 選手全員が戦える状態で決勝トーナメントに臨むためにも、イスラエル戦はターンオーバーをするべきで、それでも日本は十分に戦えると思います。

――決勝トーナメントに向けて、日本の戦い方に修正すべき課題はありますか。

 これまでの2試合を見ていて、危ないなと思ったのはセットプレーです。マリ戦ではポストに救われたけど、決勝トーナメントではより質の高いボールが入り、競り合いに強い選手が出てくる。

 ボールウォッチャーにならず、自分のマークを外さないように集中して守らないと、いくらいい試合をしていても1点取られて終わってしまう可能性があるので、修正すべきでしょうね。

 ただ、全体的に守備の意識が高いし、攻撃もカウンターやパスワークなどで点が取れており、攻撃に厚みが出ているので、この良さは決勝トーナメントにも活きてくると思います。

守備の規律を重んじる大岩監督の“マネジメント力”

――指揮を執る大岩監督については、どう見ていますか。

 前評判がよくなくて、何をしたいのか分からないみたいな感じでしたが、今も攻撃面は選手の能力、個人戦術など、選手のクオリティの高さに助けられている部分が大きいと思います。

 それでも勝てているのは、大岩監督が守備の原則を作って守りのベースを築いたのが大きいですね。守備の規律を重んじて全員で同じ方向を見て戦うチームに仕上げたところは、大岩監督のマネジメント力だと思います。

――選手交代など、試合での采配はどう見ていますか。

 パラグアイ戦で後半28分に3人交代した時は、相手が1人少なく、3点リードした状況だったので、今後を見据えて選手に経験させる意味があったと思いますが、それでも2人ではなく一気に3人を代える決断を下すのは簡単じゃない。森保一監督に似て慎重なタイプかなと思っていましたが、思い切った采配ができる監督だなと思いました。

 ただ、選手交代で大きく流れを変える、拮抗した試合の展開を読んでカードを切るケースがまだないので、決勝トーナメントでそういうカードを切れるのか、どんなカードを切るのか、大岩監督の勝負師としての采配を見てみたいですね。

決勝トーナメントでの活躍を期待する選手は?

――グループリーグ2試合を見た中で、決勝トーナメントでの活躍を期待する選手は誰になりますか?

 まずは、GKの小久保ですね。身長が193センチあり、セービングの能力が高く、反応が非常に素早い。そして足元の技術も高い。五輪の舞台でも堂々とプレーしているし、存在感があります。彼がいることで最終ラインの選手もアグレッシブな守備が出来ていると思います。五輪が終わった後、間違いなく日本代表に食い込んでくる存在ですね。

 DFの高井(幸大)もいい選手。相手のクロスボールをよく跳ね返していたし、スピードもある。最終ラインでは軸になっているので経験を積めば、いずれ日本代表に入ってくるでしょう。MFの藤田譲瑠チマは、局面局面ではいい仕事をするけど、消えている時間もあるので、決勝トーナメントでは攻守両面でもっと存在感を示してほしいですね。

決勝トーナメントでゴールを期待する選手は…

――攻撃陣では、誰になりますか。

 三戸(舜介)が結果を出しているけど、個人的にはFWの細谷です。パラグアイ戦では相手をブロックすることで三戸のゴールが生まれましたし、FW藤尾(翔太)にも素晴らしいアシストをした。マリ戦の後半37分のロングカウンターも、細谷が相手につかまれながらも右サイドを突破したことで、MF山本(理仁)の決勝ゴールが生まれました。

 その一方でシュートが少なく、今はチャンスメイクが主になっている。チームの勝利のためには大事なことですが、これでゴールを決めれば自分もチームもさらに乗って行けると思う。決勝トーナメントでは、細谷のゴールに期待したいですね。

――決勝トーナメントですが、現段階ではスペインかエジプトが対戦相手として有力視されています。スペインとは東京オリンピックの準決勝で対戦し、0-1で負けていますが、エジプトはロンドン五輪の準々決勝で3-0で勝っています。

 メダルという目標を考えれば、いずれ強い国とやらないといけなくなるので、スペインでもエジプトでもどちらでもいいと思います。スペインは技術が高いけど、マリのようなスピードやフィジカルの強さがあるわけじゃない。パスを繋いでくるサッカーなので、ハイラインで前線からの守備が機能すれば、日本はうまく戦えると思います。

――2試合で決勝トーナメント進出を決め、メダルへの期待が高まっています。現段階でメダル獲得の可能性が、どのくらいあると思いますか。

 OA枠なしでも強いし、メダルもいけるんじゃないかと期待値が上がっていると思いますが、グループリーグと決勝トーナメントは別モノです。グループリーグは負けないように、ローテーションを組んで戦うけど、決勝トーナメントは一発勝負。正直、何が起こるか分からない。

 前回の東京オリンピックでも決勝トーナメントの初戦・ニュージーランド戦は選手個々の力を考えると日本が圧倒的に有利でしたが、スコアレスでPK戦までいった。それが一発勝負の怖さだと思うし、甘いものではない。正直、今のところ日本がメダルに届くかどうかは、まだ50%もないと思います。

取材・文=佐藤俊

(城 彰二)

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