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「デジタルやAIで迷える経営者や社員は、羽生善治の生きざまに学べ」RIZAP瀬戸健社長が感動したワケ

文春オンライン / 2024年7月31日 6時10分

「デジタルやAIで迷える経営者や社員は、羽生善治の生きざまに学べ」RIZAP瀬戸健社長が感動したワケ

©文藝春秋

 中日の落合博満元監督を描き、15万部のベストセラーとなった鈴木忠平氏の『 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか 』は、ビジネス書としても読まれたことで話題となった。清原和博などスポーツを書いてきた鈴木氏が、新たなテーマとしたのが、将棋の羽生善治。『 いまだ成らず 羽生善治の譜 』を読み、RIZAPの瀬戸健社長は、将棋の世界と同じことが、ビジネス界でも起きているという――。

◆◆◆

 私は将棋をまったくやらないのですが、 『いまだ成らず 羽生善治の譜』 (鈴木忠平 文藝春秋 2100円+税)は、ビジネス、あるいは人生という観点ですごく学びのある本でした。

ベテランほど「学び直し」が迫られる中、羽生は…

 棋士のピークは20代半ばと言われているそうで、必然的に勝者だった人が敗者になっていく盛者必衰が繰り返されます。ビジネスの世界でも勢いのあった経営者や会社が失速したり、新しい会社や若い経営者に追い抜かされたりといったことが起きます。

 25歳で7冠を制し、将棋界のスーパースターとして活躍してきた羽生善治さんはやがて無冠となり、50歳を超えてついに順位戦B級に陥落してしまいます。しかし、引退説がささやかれる中でも将棋を指し続け、今を時めく藤井聡太王将に挑戦するところまで復活を果たす姿には心打たれました。

 棋士たちの人間くささがとにかく魅力的でした。読了後に故・米長邦雄永世棋聖のエピソードなどを、ネットで探してしまいました。

 将棋には数百年という歴史の中で何度も何度も指された末に残った絶対的な定跡というものがあるそうです。ところが、AIソフトの登場により、その常識が覆ります。若い世代がAIを活用して躍進する中、定跡が骨の髄まで沁みついているベテラン世代ほど、「学び直し」の必要に迫られる。ビジネスでも「持たざる者の強さ」はあります。ゼロから始めた方が、これまでの常識がない分、吸収が早いのです。

 羽生さんはある時期からAI研究による最新の型を自分の中に吸収し、その上であえてAI研究にはない型を採用していたと言います。繰り返し学習してきた過去の自分を捨て、また学んでいく姿勢。今の自分を作ってくれた勝ちパターンには思い入れもこだわりもあったはずです。あれだけ極めた人である羽生さんが学ぶ姿勢を持ち続け、終わりのない学習を繰り返している。そこに感動しました。

 対局後の感想戦の時、羽生さんは「勝負師の顔から探究者の顔になる」との描写がありました。勝ち負けへの執着を超え、将棋を指すこと自体に楽しさや価値を見出しているのでしょう。ビジネスでも勝つことだけを目的にしてしまうと、本当の意味での事業の価値が見えなくなってしまう。

 デジタルやAIでこれまでの“定跡”が変わっていく時代。経営者も社員も、一人の人間として、さまざまな迷いが生じます。そんな人たちに読まれるべき本だと思いました。

(瀬戸 健/週刊文春)

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