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「怒りで震えが治まらなかった」13歳の愛娘が自殺…残された父の悔しさ、彼女を苦しめた犯人の正体

文春オンライン / 2024年8月4日 17時0分

「怒りで震えが治まらなかった」13歳の愛娘が自殺…残された父の悔しさ、彼女を苦しめた犯人の正体

電車に飛び込み、わずか13歳で命を絶った永石陽菜さん(写真:筆者提供)

〈 面会に行くと目が真っ赤…7000円とリンゴ2個を盗むために高齢者2人を殺害《前橋高齢者強盗殺人事件》犯人男に託された“手記の中身” 〉から続く

「お母さん お父さんへ これを読んでいるという事は、私が死んだって事ですね」――2018年8月に電車にその身を投げ、亡くなった永石陽菜(当時13歳)さん。中学2年生の彼女を何がそこまで追い詰めたのか? そして残された遺族の思いとは? ジャーナリストの高木瑞穂氏と、YouTubeを中心に活躍するドキュメンタリー班「 日影のこえ 」による新刊『 事件の涙 犯罪加害者・被害者遺族の声なき声を拾い集めて 』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆◆◆

「これを読んでいるという事は、私が死んだって事ですね」

「ただいま人身事故が発生しました」

 2018年8月28日、駅のホームから線路内へ飛び込み自殺を図ったのは永石陽菜(当時13歳)、中学2年生の少女だった。

 陽菜の友人(19歳)は、この日を忘れもしない。

「たまたまバイトの帰りで、車でお母さんが迎えに来て、車に乗ったとき陽菜ちゃんが飛び込み自殺で亡くなったって聞いて。正直、半分嘘だと思っていて、状況がつかめなくて」

 2歳年下の陽菜とは、何らかの理由で学校に行くことができない者たちが集うボランティア団体で知り合った。不登校の末に流れ着いたという、同じ悩みを共有しあえるからなのか、2人はすぐに打ち解けた。実は彼女も当時、自殺を考えていた。だが、いざ駅のホームに立つと、悲しむ両親の顔が思い浮かんで踏みとどまり、今がある。もちろん、時間を巻き戻すことなどできはしない。ただ後悔だけが残っている。

「状況を知っているからこそ、無理やりにでも陽菜ちゃんのそのバリアを破って、少しずつでもいいから心を開いてもらって話を聞いてあげて、逃げ道を作ってあげたかった。気づいてあげられなくてごめんなさい」

 何があったのか。どれほど追いつめられていたのか。陽菜の胸中は友人さえも知らなかった。

 夏休みも終わりに近づき、暑さはずいぶん弱まったあの日、陽菜は自室の机に、両親に宛てた便箋2枚の遺書を残して家を出た。

〈お母さん お父さんへ これを読んでいるという事は、私が死んだって事ですね〉

 遺書は、どこか他人事のような書き出しで始まる。しかし、なぜ自殺したのか、電車のホームに飛び込んだのか、その理由ははっきりと書かれていた。

〈最後まで迷惑かけてごめんなさい。ずっと言っていなかったからここでいうけど、中1の時、学校に行かなくなったのは、部活が理由です。ずっと部活で仲良くしてた子に無視されたりしたのは悲しかったし辛かった。LINEのステータスメッセージとかでわるくいわれるのも全部私がわるいくせにおちこんで悲しんだ。先輩ともめたりした時も、だれもたすけてくれなかったなって思う〉

 後半は、自責の念に駆られる少女の、心の叫びだ。

〈それで転校することになって、行ったけど人見知りで、ぜんぜんうまくいかないし、そんな仲良くなれなくて、ちゃんと行くからって言ったのに、行けなくて、くやしかったし、そんな自分がイヤで、本当に自分がキライになった。口だけの負け犬でごめんなさい。私が普通の子でたくさん友達がいて、ちゃんと学校に行ってる子だったら、幸せだったのかな。ろくでもない子どもでごめんなさい。学校も行けない弱虫でごめんなさい。私もそんな私が大キライです〉

 そして陽菜は絶望の淵から這い上がることなく、社会の矛盾と葛藤し、最後は父親への感謝の言葉で締める。

〈もっと不登校にやさしい世界だったらなって、あまえて思ってしまうこともあります。義務教育って大切なことわかるけど、学校に行かなきゃダメかな。塾とかじゃだめなのかなって思う。でもお父さんは私に学校毎日ちゃんと行ってほしかったよね。行けなくてごめんなさい。ここまで育ててくれてありがとう。長生きちゃんとしてね〉

「これは、ただの自殺じゃない。いじめが原因だ」

 事故直後、警察から連絡を受けた父親・洋(当時57歳)は、駆けつけた病院の集中治療室で全く動くことがない娘の姿を見てこの1年間の出来事を思い出し、「こみ上げる怒りで震えが治まらなかった」と回顧する。果ては、陽菜は一度も意識が戻ることなく、約2週間後に息を引き取った。そして洋は娘の遺書を読み、「これは、ただの自殺じゃない。いじめが原因だ」と確信するのだ。

 洋がいじめを信じて疑わなかったのは、ちょうど1年前の2017年夏、沖縄への家族旅行を境に、陽菜から笑顔が突如として消えたからだ。沖縄の美しい海など数枚の風景写真を、陽菜が何気なく自身のツイッターに投稿すると、思いがけないことに周囲は不満の矛先を彼女に向けた。何がカンに障ったのか、なぜ先輩と揉め、親友に無視されるまでに発展したのか。いずれにせよ、いじめはここから始まった。

(文中敬称略)

◆◆◆

【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

〈 「もうこの学校はダメだと思いましたね」愛する娘が13歳で自殺…先立たれた父が明かした「学校側の怠慢」「残酷いじめの中身」 〉へ続く

(高木 瑞穂,YouTube「日影のこえ」取材班/Webオリジナル(外部転載))

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