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「審査員の好みによって結果は変わってしまう」パリ五輪注目の新競技「ブレイキン」国内トップ選手・RAM(23)が解説する“観戦ポイント”

文春オンライン / 2024年8月9日 11時0分

「審査員の好みによって結果は変わってしまう」パリ五輪注目の新競技「ブレイキン」国内トップ選手・RAM(23)が解説する“観戦ポイント”

「ブレイキン」国内トップダンサー・RAMさん ©平松市聖/文藝春秋

 7月26日に開幕し、数々の名シーンが誕生しているパリオリンピック。8月9日、8月10日には、注目の新競技「ブレイキン」が行われる。各国の出場者が、DJの流す曲のリズムやビートに即興で動きを合わせて、個性あふれるダンスを競う。日本からは男女4人が出場し、史上初のオリンピックメダルを目指す。

 今回、初めて観戦する人も多いであろうブレイキン。いったい、どんな競技なのか。どんなポイントに注目すればいいのか。ブレイキン国内トップ選手で、2018年に行われたユースオリンピック金メダリストの河合来夢さん(23歳、ダンサーネーム・RAM)に聞いた。(全2回の1回目/ 2回目に続く )

◆◆◆

パリ五輪の競技種目に決まって素直に嬉しかった

――2024年パリオリンピックで、ブレイクダンス、通称「ブレイキン」が競技種目として採用されました。5歳からブレイキンを始め、数々の国際大会に参加してきたRAMさんは、採用が決まったときどう感じましたか?

河合来夢さん(以下、RAM) 素直に嬉しかったですね。私が2018年にユースオリンピックに出場したとき、たくさんのメディアに取材をしてもらいました。そのときにも、これまでブレイキンを知らなかった人たちにもブレイキンを知ってもらえた実感があったんですよ。

 これがオリンピックとなったら、さらに認知度が高まって、興味を持つ人も増えるはず。ブレイキンという競技を応援してくれる人や、「自分もやりたい」という人も増えてほしいと思っています。

「真面目な選手が多い」ブレイキン日本代表が強い理由

――今回、日本からは4人の出場が決まっています。それぞれが世界大会で優勝した経験を持ち、男女ともにメダル獲得の期待が高まっていますよね。なぜ、日本には強い選手が多いのでしょうか。

RAM 海外の選手と一緒に練習をしたことがないので、直接比較はできないのですが……。「真面目な選手が多い」のは、日本が強い理由のひとつかもしれません。どんなに著名な選手でも、体幹トレーニングなどの基礎的な練習をベースに、毎日何時間もダンスと向き合っています。

「世界大会優勝」や「オリンピックでのメダル獲得」など、目指しているゴールは華やかだけど、それに向かって地道な努力ができる人たちばかりなんですよ。

「ブレイキン」はどんなダンスなのか?

――そもそも、ブレイキンがどのようなダンスなのか、簡単に教えていただけますか。

RAM みなさんが良く耳にするであろう、「ヒップホップ」「ロック」「ポップ」というジャンルのダンスは、ざっくり説明すると立った姿勢のまま踊ることが多いです。

 一方でブレイキンは、床に手をついて大きく足を出すなど、立ち姿以外のアクロバティックな動きや技が多いのが特徴ですね。多種多様な選手がいろいろなダンスを繰り広げるから、ブレイキンの観戦はものすごく面白いんですよ。

――日本人は他国と比べると小柄な人が多いと言われますが、ブレイキンは、体格差は競技に影響するのでしょうか。

RAM 手足が長いほうがやりやすい技はあるので、体格の差による表現の違いはあります。でも、体が大きいから有利、小さいから不利ということはありません。それに体格に関係なく、人それぞれ得意も苦手もありますから。

――いわゆる「お国柄」みたいなものがダンスに反映されたりも?

RAM あえて「国」の違いをお話しすると、あくまで私の感覚ですが、中国は技の精度が高い選手が多くて、ヨーロッパはリズムに合わせるのが得意な選手が多い印象です。そしてアメリカは、「自分の感じているかっこよさ」を表現するのが得意な選手が多いかな、と思います。

 ただ、自分の得意な技はもちろん、不得意な技とも向き合いながらダンスで表現したいことを追い求めるという部分は、どの国の選手も同じだと思いますね。採点基準というルールがある中でも「自分らしいダンスができるかどうか」は、ブレイキンを踊るうえでの大事なポイントです。それは、オリンピックでも変わりません。

「自分の心に響くダンスかどうか」ブレイキンの観戦を楽しむポイント

――ブレイキンを観戦するとき、どんな部分に注目するのが良いでしょうか。

RAM 先ほども言ったように、オリンピックには採点基準があるので、「勝ち負け」も観戦を楽しむ1つの方法です。ただ「表現」の世界なので、採点する人の好みによってどうしても結果は変わってきます。

 だからこそ観戦するときは、一旦勝ち負けや採点基準は考えず、シンプルに「自分の心に響くダンスかどうか」で楽しんでみてください。競技者みんな違う表情で、違うスタイルのダンスを披露してくれるはず。「ダンスの良し悪しは分からないけど、見ているとワクワクする」「この人のダンス、なんか好きだな」というのが、きっと見つかると思います。

その人の強みや表現したいテーマによって、まったく違うスタイルに

――ご自身はブレイキンを踊るとき、どんな表現を心がけていますか。

RAM 「見ている人を元気にできるダンス」ですね。私の取り柄は、「元気」と「笑顔」。ダンスでもそれを表現したいなと思っていて。元気に見えるリズムの取り方や動き、技の出し方は意識しています。

 ただ、私は「元気」や「笑顔」がテーマだけど、「かっこよさ」や「優雅さ」をテーマにしている人もいます。一言でブレイキンと言っても、その人の強みや表現したいテーマによって、まったく違うスタイルになる。それもブレイキンの面白さのひとつだと思います。

――RAMさんは2023年のNHK紅白歌合戦で、郷ひろみさんのバックダンサーを務めましたよね。そのときも笑顔で踊っている姿が印象的でした。

RAM 事務所のマネージャーから、「郷ひろみさんのバックダンサーの依頼が入ったよ」と電話が来たときはびっくりしましたね。紅白のステージは、これまでに経験したことのないようなキラキラした場所でした。

 本番では郷ひろみさんもブレイキンに挑戦してくださったんですよ。ブレイキンがクリーンなものとして世の中に広まってきているのが感じられて、嬉しかったです。

「ダンサー=不良」という偏見が染み付いてしまったワケ

――「クリーンなもの」とはどういう意味でしょう?

RAM ブレイキンを含めて、ダンスは「不良の遊びだ」と思われていることが多くて。「派手な服や髪型の人が多い」という見た目によるイメージもあると思います。あとは、昔は外で練習することが多かったのも影響しています。

 今はダンススタジオがたくさんあって、屋内で気兼ねなく練習できるようになりました。でも、20~30年前はそういった場所がなく、公園や駅前の広場など、外で練習する人が多かったと聞いています。ダンスで体を動かす音や練習時に流す音楽がうるさくて、近隣の人に迷惑をかけることもあったそうです。

 派手な格好の人たちが集まって、大きい音で曲を流しながら公園や駅前を占領して、やっと立ち去ったと思ったら、あたりにはゴミが落ちている、ということもあったみたいで。

 20~30年前のことなので、私が直接見聞きしたわけではありませんが、実際に爆音で曲を流したり、ゴミをポイ捨てしたりするのは一部の人だったと聞いています。でも、それによって「ダンサー=不良」というイメージが染み付いてしまったようです。

ネガティブなイメージが変わることを期待

――かつてのイメージが、いまだに残っている。

RAM 最近は、マイナスなイメージを払拭するため、ダンサーのマナー向上のために活動している先輩ダンサーやスタッフもいます。今はブレイキンのイベントをやる場合、曲の音量やごみ捨てルールも徹底しているんですよ。それでも、一度ついたイメージは、なかなか払拭できなくて。

 でも、パリオリンピックの競技種目に採用されたことで、染み付いたネガティブなイメージが払拭されるのではないかと思っています。

――今回のオリンピックで、競技としてのブレイキンを初めて観る人は多いかもしれません。

RAM そうだと思います。世間の方々が、ブレイキンがどんなものかを知らないから、偏見がなくならないのかなと。オリンピックを通じて、まずはたくさんの人に知ってもらう。そして、選手たちが元気にダンスしている姿や努力している様子を見てもらうことで、ブレイキンに対するイメージも変わってくるんじゃないかと期待しています。

撮影=平松市聖/文藝春秋

〈 岡村隆史の影響で5歳からダンス漬け→17歳でパリ五輪「金メダル候補」に…「ブレイキン」国内トップ選手・RAM(23)が語る“激動のダンサー人生” 〉へ続く

(仲 奈々)

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