全身エルメス、港区に住んで子供はインターという「ザ・お金持ちの世界」…21歳でモルガン・スタンレーに入った女性が“平均年収2000万超”の会社を3カ月で辞めたワケ
文春オンライン / 2024年8月3日 11時0分
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くるみさん
〈 桜蔭→慶應医学部→モルガン・スタンレーを3カ月で退職…超エリート女性(24)が年収も地位も捨てて南房総で“年間100万円以下の生活”を始めたワケ《23歳でサイドFIRE》 〉から続く
桜蔭高校→慶應医学部→モルガン・スタンレー……。まさに“超エリート”といえる経歴を持ちながら、年収や地位を捨てて南房総に移住した くるみさん (24)の人生は、SNSでたびたび話題になっている。
「平均年収2000万」と言われる会社を辞め、20歳で結婚した夫と長男の家族3人で“年間100万円未満の生活”をするようになるまでに、一体何があったのか? 彼女が「エリートコース」から外れたことを後悔しなかった理由とは。(全3回の2回目/ 続きを読む )
◆◆◆
医学部中退後、ヘッドハンターの紹介で外資系投資銀行と五大証券から内定
――慶應義塾大学医学部を中退後、外資系金融大手のモルガン・スタンレーに入社されたそうですが、どのようにして採用に至ったのでしょうか。
くるみさん(以降、くるみ) Twitter(現:X)に、「証券系に興味ありませんか」というDMが来たので返信してみたら、ヘッドハンターを紹介してもらえたんですね。
その方に日系の大手証券会社や外資の銀行を紹介してもらって面接を受けたら、五大証券や、モルガン・スタンレーから内定をもらえたんです。
――モルガン・スタンレーの中では異色の存在だった?
くるみ 最年少ではありましたね。私の他に高卒で採用された人もいましたが、元プロゴルファーという経歴の人だったんです。たぶん、金融の知識とか学歴ではなく、自分の人生を自分で切り拓いてきたガッツ、行動力を評価されたのかなと。
諦めきれなかったエリートコース
――エリートコースに戻りたいという気持ちもあったのでしょうか。
くるみ そのときはまだエリートの道を諦めきれず、当時周りは大学3年生で就活をしている時期だったので、皆より一足早く一流企業に潜り込みたい気持ちもありました。
――その華々しいキャリアを3ヶ月で手放したのはなぜでしょう。
くるみ やっぱり一番は、自由がないことですね。高収入と引き換えの忙しさなわけですけど、お金がそんなに欲しいわけではなかった私にとって、代償が大きすぎました。会社に行きたくなさすぎて、最後の方はテレワークで逃げてましたね。
「ストレスで朝昼晩〇〇を摂取」くるみさんが直面した外資系投資銀行の“激務ぶり”
――当時の一日のスケジュールはどんな感じでしたか?
くるみ 完全裁量制だったので働きたいだけ働けるんですけど、とにかく皆さん、激務でした。朝昼晩、スタバでベンティサイズのコーヒーを買ってくるんですよ。
――それはストレスで?
くるみ そうだと思います。とにかくカフェインを入れないと、という感じで。
ちょっとした移動も全部タクシーで、買い物は全部百貨店。着るものは全身エルメスといったハイブランド、港区あたりに住んでいて、子どもはインターナショナルスクールみたいな、ザ・お金持ちという世界でした。
でも、自分はそういう暮らしがしたいわけじゃなかったし、馴染めなかったです。
一浪明治の夫が感じた引け目
――くるみさんが超高学歴のエリートということで、トマトさんが引け目を感じることはありましたか。
トマトさん(以降、トマト) もちろんありました。大学生のときに学童保育のバイトで出会ったんですけど、最初に話しかけたとき、「慶應の医学部です」と言われて、「話しかけてすいませんでした」って言いましたから(笑)。
彼女は当時文京区に住んでたんですけど、帰り道、「じゃあ私ここだから」って都心に消えていく姿を見て、あぁ、住む世界が違うなと。
僕は京大を目指して一浪してたんですけど、結局入れたのは明治大学で、学歴コンプがすごかったんです。それに、実家は埼玉の草加市だったし、格差を感じましたよね。
「MARCHの人に会うのは夫が初めて」
――くるみさんは相手男性の学歴を気にすることはありましたか。
くるみ それまでは、桜蔭や鉄緑会という予備校の仲間も東大に行く人がほとんどだったので、自分の世界が医学部と東大でほぼ完結していたんです。
だから、MARCHの人に会うのはトマトがほぼ初めてだったし、明治大学というのが日本の大学でどのレベルにあるのかもよくわかってなかったという感じで。
トマト 東大でも医学部でもない、その他の人たちっていう(笑)。
くるみ 逆に、学童のバイトでは職員たちの方が「あの子は医学部らしいよ」みたいな感じで、壁を作られちゃってる感じはありましたね。
新卒2年目で育休を取ったトマトさんが“男らしく生きる”を捨てたワケ
――トマトさんが大学4年のときに結婚し、入社2年目で育休を取ったわけですが、家庭に入ることに抵抗はなく?
トマト 会社はほどんと男性社員で、1年の育休を取ったことがある人もいなかったんですけど、世に言うハラスメントもなく、あっさりOKしてもらえました。
ただ、個人的には、同期に遅れをとってしまう焦りを感じざるを得なかったし、そもそも、「同期」システムゆえにそう思わされているんだなっていうのもわかってて。最終的には、そういうのもどうでもいいやって思えたというか。
――なにかきっかけがあったのでしょうか。
トマト 一番は、母が亡くなったことですね。母は“日本の男性観”の中で育ってきた人だったので、「男は働くもの」と思っていました。
基本的に僕がすることに口を出すことはあまりなく自由にさせてもらっていたのですが、心のどこかで「母の期待を裏切りたくない」という思いがあったので、自分としてはサラリーマンとして活躍する将来像を描いていました。
でも、結婚した相手は一切、僕にそういうことを求めてこない人だったという(笑)。
くるみ 一家の大黒柱としてお金を稼いでくることをトマトに求めてないし、むしろ、外で働かれて家事育児をしてくれないことの方が、私は困る。
“男らしく生きる”ほうがわかりやすくて、周囲から認められやすい
――今は、完全にお2人で家事育児を分担されています。
トマト 今の日本だとまだまだ、“男らしく生きる”方がわかりやすくて、周囲から認められやすいですよね。僕が平日の昼間にウロウロしてると、変な目で見られますし。
くるみ 「パパ何やってるの?」って聞かれたり、子どもを連れて3人で歩いてるとき、私にだけ、「ママは大変ね」って話しかけられたり。
パパだって同じように育児で大変なのにね。「パパもオムツ替えられるの?」って言われたこともありました。
「愚痴ばっか言ってるのに、なんで会社員やってるの?」
――どちらの生き方も経験しているトマトさんですが、「男らしく」生きた方が楽?
トマト マイノリティになってみて、仕事をしてた方が気楽だなとは思いました。
でも、くるみは、会社にいたら何年目に出世して、年収いくらになって…みたいなことを一切評価をしないし、むしろ、「会社で何か成し遂げたいことがあるのか」とか「なぁなぁでやって愚痴ばっか言ってるのに、なんで会社員やってるの?」と詰められるという(笑)。
くるみ すごくやりたいことがあって入った会社でもないのに、会社員になると時間がものすごく取られるじゃないですか。私にとっては必要のないお金のために家族の時間が減らされるって、メリットを感じないというか。
それに、ストレスが溜まるからお酒も飲むし、太るんですよ。だから、育休を取っている今は、トマトも痩せて健康的になって良かったなって。
医学部中退を「もったいない」と言われても、くるみさんが選択を後悔しなかったワケ
――お母さんから受けてきた「男性像」と、妻のくるみさんが求める「パートナー像」との間で板挟みになったこともありますか。
トマト それもすごくあったんですけど、母が亡くなったショックを超えて強く生きていくために、家族全員が意識を変えざるを得なくなりました。
その結果もともと学歴を重んじてたり、「公務員になれ」と言っていた父もだいぶリベラルになって、「みんな自由に生きようよ」という考えになり、私自身も気楽になったところはありますね。
くるみ これだけ色々やってきたから、お義父さんも、「よくわかんないけど、お前たちの好きにすれば」みたいな(笑)。最近は私たちのYouTubeも見てくれてるよね。
――くるみさんが親から言われてきた“一番”になる教育を、お子さんには求めない?
くるみ しないですね。もっと自由に、その子がやりたいこと、興味があることをとことん掘り下げていく教育をしたいです。
慶應の医学部を中退したとき、周りから「もったいない」とかって言われたこともあるんですけど、皆、学歴やキャリアに執着しすぎて、そればっかりになっちゃってるんじゃないかと思うことがあります。
一方で、育児休業給付金といった国の制度を使うためには、その資料や書類を読み込める知識も必要で、その点では、これまで自分が勉強してきたことが役立っているとも思ってて。
なので、誰でもできることではないかもしれないけど、私たちと同じような考えを持つ人が実際行動に移せるように情報発信していくことは大事かなと思っています。
――エリートコースから外れたことや、肩書などはもう気になりませんか。
くるみ 自分の肩書は今ないですね。しいて言うなら、「1児の母」ってことくらいかな。桜蔭の同級生や医学部時代の友だちと会うと、周りと違いすぎるので、「今何しているの?」みたいなことは聞かれなくなりました。
社会的評価や肩書って、なければないなりに自分でいろいろやれるので、今は何にも未練はないんです。
写真=杉山拓也/文藝春秋
〈 「ちゃんと働いて税金を納めろよ」と言われることも…年収2000万の会社を辞めて、月6万7000円で暮らす20代夫婦が「何を言われても痛くない」と断言する理由 〉へ続く
(小泉 なつみ)
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