1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「ちゃんと働いて税金を納めろよ」と言われることも…年収2000万の会社を辞めて、月6万7000円で暮らす20代夫婦が「何を言われても痛くない」と断言する理由

文春オンライン / 2024年8月3日 11時0分

「ちゃんと働いて税金を納めろよ」と言われることも…年収2000万の会社を辞めて、月6万7000円で暮らす20代夫婦が「何を言われても痛くない」と断言する理由

(左から)くるみさんとトマトさん

〈 全身エルメス、港区に住んで子供はインターという「ザ・お金持ちの世界」…21歳でモルガン・スタンレーに入った女性が“平均年収2000万超”の会社を3カ月で辞めたワケ 〉から続く

 桜蔭高校→慶應医学部→モルガン・スタンレー……。まさに“超エリート”といえる経歴を持ちながら、年収や地位を捨てて南房総に移住した くるみさん (24)の人生は、SNSでたびたび話題になっている。

「平均年収2000万」と言われる会社を辞め、20歳で結婚した夫と長男の家族3人で“年間100万円未満の生活”をするようになるまでに、一体何があったのか? 20代夫婦の「セミリタイア生活」に向けられた世間の声とは。(全3回の3回目/ 最初から読む )

◆◆◆

夏とは思えない涼しさの勝浦に移住

――育児のために勝浦に引っ越しをされたそうで。

くるみさん(以降、くるみ) 移住先の候補地の中で、勝浦が一番、夏が涼しかったんです。夫のトマトはすごい暑がりなんで、その意味でもいいなと思って。でも、最初は夫にすごい反対されたんですけど。

――トマトさんは移住に後ろ向きだったんですか。

トマトさん(以降、トマト) 僕はもともと安定志向なので、ずっと生まれ育った場所で暮らしていきたいと思ってたんです。

 でも結局、くるみの提案に乗ってみると面白いし、それもいいかな、と思えるようになっていった感じです。
 
くるみ 私が生活を定期的に変えたがるから、それに合わせてくれてる感じだよね。

生活費は3人で月6万7000円

――くるみさんは23歳でほぼリタイア生活ができているそうですが、収入と支出含め、どんな風に生活を?

くるみ この前ちょうど生活費を計算してみたら、先月は6万7000円でした。今住んでいる家は購入しているから家賃はゼロで、主に食費や雑費、子どものオムツ代とか、そういうものなんですけど、「あれ、こんな安く済んじゃった」と、ちょっと驚いてます。

――家族3人の生活費が7万円未満ということですよね。節約をかなりされている?

くるみ 頑張って切り詰めているわけじゃなくて、二人とも、物欲があんまりないんです。

 加えて、勝浦って朝市が有名なんですけど、そこに行けば新鮮で安価な野菜が手に入るし、「余ったからあげるよ」みたいな感じでご近所さんからお魚をもらうことも多いです。
 
トマト 基本的に毎食自炊なのも、節約になっていると思います。というか、外食しようと思ってもここでは選択肢がそんなにないし、都会より誘惑が少ないですね。

20歳で買った初のマイホームを今年完済、勝浦の家は現金一括払いで購入


――ネットでつい買い物しちゃいませんか。

トマト ほとんどないかなあ。年に1回、好きなサッカーチームのユニフォーム買うんですけど、それが一番高い買い物くらいですね。
 
――サッカーのユニフォームはいくらくらい?

トマト 2万円くらいかな。
 
くるみ 高い(笑)。私は、一番高い買い物っていうと不動産になっちゃうかな。それくらい、ものを買わないかも。
 
――この勝浦の一軒家はいくらで購入したのでしょうか。

くるみ ここは元々1500万円ぐらいだったんですけど、なかなか売れなくて、こういう残置物、このソファーとかは前の人のものなんですけど、それを置いていっていいよという条件をつけたらさらに値引きできて、最終的に650万円で買いました。

――当初の売値から半額以下になったんですね。かなり広さもありますよね。

くるみ 2階建てなんですけど、1階と2階合わせて200平米くらいあるかな。
 
トマト 現状、部屋が余りまくっているんで、あそこも遊び部屋、ここも遊び部屋みたいな感じで。一番手前の部屋は、子どものボールプールのためだけの部屋になってます。

――家賃はなしということでしたが、住宅ローンは使わず?

くるみ はい、現金一括払いです。この勝浦の家の前に、20歳のときに初めて買った中古の一軒家のローンも今年完済して。その家は埼玉にあるんですけど、今は人に貸しているので、大家さんになりますね。
 
――ということは、前のローンはわずか3年で完済したわけですね。

くるみ 1000万円ちょっとを30年ローンで組んで、毎月3万円くらいの返済額でした。全部返し終わったら50歳かーと思ってたら、結果的には23歳でした。

23歳で1000万円のローンを完済できた理由

――現在の勝浦のお家も現金で一括購入したということで、早期のローン返済含め、どのように実現したのでしょうか。

くるみ 4年ほど前の同棲時代は家賃6万5000円の浅草の賃貸マンションに住んでいたんですけど、家賃を毎月払うのが嫌で嫌でしょうがなかったんです。

 当時、慶應の医学部を中退して1年ほど不動産会社で働いていたのですが、普段接するお客さんが皆、大家さんで。つまり、家賃を受け取る側だったんですね。

 そのとき、私も家賃を「払う側」でなく「受け取る側」になりたいと思ったんです。
 

――自分も大家さんになろうと。

くるみ 一足飛びに大家さんになるのは難しいだろうけど、まずは家賃を払わない生活をしたいと思って、20歳のときに初めてマイホームを買ったんです。

――20歳で1000万円の住宅ローンを組むことは難しくなかったですか。

くるみ 年収要件と資産要件を満たしていればOKなので、思ったよりスムーズでしたね。高卒で働いている方も全然、ローンを組めると思いますよ。

――そこからどうやって1000万円のローンを3年で返済できたのでしょうか。

くるみ 都内で二人暮らしをしようと思うと家賃だけで毎月10万前後かかってしまうけど、住宅ローンを組んだことで、家のお金を3万円に抑えられたことは大きかったですね。

トマト 当時から二人ともほとんどお金を使わない生活をしていたので、自然と貯まったよね。
 
くるみ 仮に、年収がそれぞれ400万円だったとして、二人で年間100万円しか使わなかったら、それだけで年間700万円貯められますよね。

 そういう感じで、わりと無理なく貯金ができたので、一括返済できたんです。30年ローンを3年で返済できたことで、金利分も節約できました。

「資産はほぼ、不動産になりました」

 ――今のお仕事や収入の状況は?

くるみ 今は二人とも育児休業を1年間取っていて、今この子が生後5ヶ月なので、半年経ったところです。

 自分の場合、仕事は社会保険に加入できるギリギリのラインで塾講師のアルバイトをしていたので育児休業給付金がもらえて、それが月15万円。あとは大家としての収入約10万円と副業で、月収30万円くらいですね。 

トマト 僕は損害保険系の会社に勤め出して3年目なんですけど、今の収入としては、僕の育児休業給付金が17万円くらいで、会社からの育児支援金も含めると、月20万円くらいですね。


 
――育児休業期間中の今、世帯で月50万円の収入があって生活費が7万円以下なら、かなり余裕がありますよね。

くるみ 余裕しかないですね。なので、お金の使い道がないから勝浦の不動産を買ったという感じで、資産はほぼ、不動産になりました。

くるみさんが子育て世帯にすすめる「住民税非課税世帯」「多子世帯」制度のメリットとは?

――今後は、「多子世帯」制度の利用や、「住民税非課税世帯」レベルの収入を目指しているそうですが、これはどういうことでしょうか。

くるみ いろいろ調べてみたら、日本で子育てをするなら、住民税非課税世帯になるか、子ども3人以上の多子世帯になれば、かなり手厚い支援を受けることができることに気がついて。

 ただ、「住民税非課税世帯」のラインはかなり厳しくて、たとえば私たちの場合だと、世帯年収が200万円以下じゃないと住民税非課税にはならないんですね。

――先ほどのお話だと、くるみさんだけでも今現在、月30万円の収入があるということでしたよね。

くるみ 最近ちょっと仕事が増えてきてしまったので、200万円は超えてしまうと思ってます。超えたら超えたでそれはもちろん構わないんですけど。

 あと、これも育児休業の制度を調べているときに知ったんですけど、育児休業給付金は非課税なんです。なので、今の月収30万円のうち、育児休業給付金の15万円は所得税がかからないんですね。

家族の時間を削ってまで年収1000万円を目指す必要もない

――だとすると、育児休業給付金だけで生活していたら、自然と住民税非課税世帯になる?

くるみ そうなんです。住民税はその年1年間の所得で決まるんですけど、我が家の場合、子どもが12月生まれなので、翌年の1月から12月までほぼ育休で休業期間になるから、次の年は住民税非課税世帯になるのでは? と気づいたのがそもそものはじまりでした。

――住民税非課税世帯が子育てしやすい、ということですが、具体的にはどんな支援が?

くるみ 住民税非課税世帯だと翌年の保育園料が無償になったり、大学の授業料等の減免や給付型奨学金の支給を受けられたりと、かなり手厚いサポートが受けられるんです。

 私たちは年間100万円もあれば生きていけるくらい本当に普段からお金を使わないので、家族の時間を削ってまで年収1000万円を目指す必要もない。だったら、年収を抑えて子育て支援の手厚い既存の制度を利用した方がハッピーだよね、と。

「選択的住民税非課税世帯」という考え方で「ずるい」と言われ...くるみさんはどう考えている?


 ――「選択的住民税非課税世帯」という考え方についてバッシングも受けたそうですが、どんな声がありましたか。

くるみ 「働けるんだったらちゃんと働いて税金を納めろよ」というコメントがあったんですが、どの程度働いて稼ぐかは個人の自由だと思うんです。私たちはそんなにお金を使わないから、自分たちの生活が回る分だけ稼げばいいと思ってて。逆に、もっとお金を使いたい人は自由に稼げばいいだけで。

 制度を悪用しているわけじゃなく、既存の制度を使っているだけなんですけどね。
 
トマト 僕はくるみと違ってメンタルが弱いんで、うわー、つらいなと。なので、今は見ないようにしてます。なるべく炎上しないように生きていきたいので(笑)。

くるみ 私は悪いことだと思って発信してないよ。今ある制度をうまく使って生きていこうね、ってだけで。
 
トマト それはそうなんだけど、捉え方によっては「ずるい」って感じる人もいるよね、っていう話。
 
くるみ 「ずるい」と思うのはその人の感情論でしょ。事実として、こっちは制度を正しく使っているだけだから、別にずるはしてないし。だから私は、何を言われても全然痛くないです。
 
トマト こういう感じで、僕はいつも議論に負けちゃうんで(笑)。

――くるみさんぐらいガッツがあったら、制度そのものを変える動きもできそうですが。

くるみ 私は、政治の世界はちょっと……。現状は、既存の制度を使って上手に生きていこうというスタンスですね。
 
トマト 多子世帯については国の少子化対策の方向性にも合致してるし、それこそ文句あるかって感じだよね。

連続育休を取るために計画的に妊娠

――今、第二子を妊娠中だそうですね。

くるみ 来年3月に出産予定です。我が家でいえば、住民税非課税世帯より3人以上の多子世帯として支援を受ける方がマッチしそうだなと思っています。

 しかも、来年3月出産だと、1月から産休が取れるんですね。今年の12月末までは第一子の育休で、1月からは第二子の産休ということで、ほぼ切れ目なく連続育休を取れるように計画しました。
 
――連続育休を取るために計画的に妊娠を?

くるみ そうです。第二子で連続育休を取らないのであれば、社会保険にも入れないレベルの軽い仕事の仕方を考えていたので、もし育休取るなら今のタイミングだし、その方が合理的だと思ったんです。

 第一子のときもそれは同じで、育児休業給付金がもらえる状況で不妊治療をして、子作りをしました。

最初は「え、マジで家買うの?」と...くるみさんの“超合理的思考”をトマトさんが受け入れられるワケ

――妊娠・出産は、計画通りに行うのが難しいケースもありますよね。

くるみ もちろんそうです。だから、誰にでもできる話じゃないんですよね。連続育休に関しては、産後いつ生理が戻って妊娠できるかは当然個人差がありますが、出産直後から計画的に授乳の間隔を空けて産後2ヶ月ぐらいまでに生理を復活させて、産後4、5ヶ月までに妊娠しないといけないわけですから、かなり大変です。

――今日、「合理的」という言葉を何回かくるみさんから聞きました。

トマト 僕はいつもそれに対して感情論なんです。
 
くるみ いつもそうなんですよ。「え、嫌だ」とか「怖い」「つらい」って(笑)。私は理詰めで攻めるタイプだから。 

「僕を不幸にしようと思って考えてるわけじゃない」

――理詰めで攻められると、ワーッとなったりしませんか。

トマト ワーッてなります(笑)。「わかってる、わかってるけど、嫌なんだ」って言いながらも、時間を置いて考えてみると結局、「まあ、そうかもな」って納得するという(笑)。

 くるみが初めて家を買ったときも、最初は「え、マジで家買うの?」って思ったんですけど、結果として今、不労所得で助かっているし、僕を不幸にしようと思って考えてるわけじゃないのがわかるので。
 
くるみ それはそうだね。
 
トマト なので、自分では考えつかないことを考えてくれていると思うと、この人の話はちゃんと聞こうと思いますよね。

――今後のお二人の人生プランを聞かせてください。

くるみ 現状、働かなくても生きていけるFIREができているんですけど、制度的には連続育休が3人まで取れるんですね。

 だから、子どもを2人持つか、3人にするかっていうところは考えたいなっていうのと、仕事以外にやりたいことがいろいろあって。

 勝浦に移住してから、オルタナティブスクールという、普通の公教育とは違った教育を提供するNPO団体にトマトと一緒に入ったんです。

 学校教育に馴染めなかったり、進度が合わないという子に向けて、もっと自由に勉強できる環境を自分たちで作っていけたらいいなって思っています。

写真=杉山拓也/文藝春秋

(小泉 なつみ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください