「出よう。絶対おかしなことになるから」『いいとも』に毎週出ても吉本では売れず…世界が注目する芸人・シューマッハに刺さった“タモリさんの一言”とは〈『アメリカズ・ゴット・タレント』で快挙〉
文春オンライン / 2024年8月4日 11時0分
シューマッハの五味侑也(ごみゆうや:左)と中村竜太郎(なかむらりゅうたろう:右) ©山元茂樹/文藝春秋
〈 「バカ、ゴミ、才能のないピエロって言われて(笑)」なぜ米オーディション番組で37歳お笑いコンビが“成功”したのか? シューマッハが語る、日本のテレビとの“決定的な違い”〈『ゴット・タレント』特別賞で話題〉 〉から続く
世界的人気番組『アメリカズ・ゴット・タレント』で日本人コメディアンとしては異例のゴールデンブザー(審査員特別賞)を獲得したシューマッハ。彼らが犬のかぶり物ネタを武器に『笑っていいとも!』でプチブレイクを果たしたのは2012年のこと。しかし思っていたような成功の日々ははるかに遠く、二人の前に立ちはだかっていたのは吉本の劇場ヒエラルキーだった。
仕事がなくなる不安を抱えながらも、彼らはなぜ吉本を離れたのか。揺れ動くシューマッハを支えたあの日のタモリの一言、名だたる“一発屋芸人”を抱えるサンミュージックを新事務所に選んだ理由とは。(全3回の2回目/ 続き をよむ)
◇◇◇
漫才師になりたい。M-1を獲ろうと思って吉本に入った
——お二人が芸人を目指されたきっかけはなんでしたか。
中村竜太郎さん(以下、中村) 僕は小学生の頃爆笑問題さんに衝撃を受けて、絶対この人たちみたいな漫才師になりたいと。中学の時にM-1グランプリが始まって、高校卒業したら20歳ぐらいでM-1を獲ろうと思ってました。で、大学に行きながら吉本の養成所に通い始めて……まあ、いろいろあってこういう芸風になりましたけど(笑)。
五味侑也さん(以下、五味) いろいろね。
中村 漫才難しい。
五味 僕も人を笑かすのがすごく好きだったんですけど、別にお笑い芸人になろうとは思ってなかったです。ただ中学生の時に、フジテレビの女性アナウンサーにはまってしまって。トークライブにも行ってたんですよ。
——ガチのファンじゃないですか。
五味 女性アナウンサーのトークライブを『お台場冒険王』でやってたんですよ。当時は『お台場どっと混む!』だったんですけど。
——夏休みのテレビ局イベントですね。
五味 そこからだんだんとフジテレビにハマりだして。フジテレビクラブも入ってました。さらに『はねるのトびら』に出ていたインパルスさんやキングコングさんを見にルミネtheよしもとにも行くようになって。
漫才師がワーッとあれだけ人を笑わせておいて、最後クールに「ありがとうございました」ってハケるのを見て、「俺、これやりたいやつじゃん」って、ズキュンと来てしまいました。お笑いをやれば高島彩さんに会えるかもしれないし。
——そこに戻ってくる(笑)。
五味 中野美奈子アナと高島彩アナが大好きで。CD全部持ってます。
中村 今も仕事の時、女性アナウンサーさんがいる時だけ、やっぱりパフォーマンスが上がりますよ(笑)。
——もともと違うコンビを組んでいて、解散して、シューマッハ結成。2人でやっていこうと思った決め手はなんだったんですか?
違うコンビを組んでいた2人が、シューマッハを結成するまで
五味 養成所の時から年齢も一緒なので仲良かったんですけど、その時から組みたいと思ってたんですよね。ズキュンときて。
——またズキュンときた(笑)。
五味 養成所で僕が2組で彼は4組、たまにすれ違うんですよ。クラスの入れ替えとかで。その時にずっと目で追っていた。
——目で追うほど……。
中村 僕はそれこそ爆笑問題になりたかったから、知的な漫才をしたくて。当時の相方は早稲田大学に通っていたので、「よし、できるぞ」と。学歴で相方を選ぶという、浅はかな。
五味 でも、あるよね。当時、選択肢がないもん。
中村 それで漫才を6~7年やってたんですけど、なかなかうまくいかなかった。それで今度はコントを作ったんですよね。僕が犬のお面をかぶって犬になるコント。ネタを考えながらああでもないこうでもないって、寝っ転がりながら犬のお面をグルグル回してたんですよ。そうしたら、相方が「ちょっとお尻上げてみて」って。それがちょうど犬のかたちになったんです。ライブでやったらメッチャウケた。
——動物かぶり物ネタ誕生の瞬間。
「犬とかラクダとか極めない?」「そんな恥ずかしいことできない」
中村 その次の週ぐらいに『笑っていいとも!』の「ウルトラソウル選手権」っていう若手芸人が一発芸を披露するコーナーのオーディションに行ったんです。もともと自信があった「でんぐり返ししながらチャーハンを食べる」っていうネタを携えて。でもチャーハンが散乱しただけで全然ウケなくて。
で、急遽「すいません、もう一個あります!」って、一応保険で持ってきてた全身タイツと犬のお面をつけてネタやったらすげえウケた。
——『いいとも』で犬のネタを見たときのこと、覚えてます。逆さ四つん這いになって犬を表現するのが衝撃的で。しかしチャーハンの保険だったとは。
中村 そうなんですよ。それで次の週から『いいとも』に毎週出るようになるんです。それで当時の相方に「これから犬とかラクダとかシマウマを極めていかない?」って言ったら、「ごめん、俺はそんな恥ずかしいことできない」って断られて。
——爆笑問題を目指していたのに突然「犬とかラクダとかシマウマを極めない?」って言われたらそうなるかもしれない。
中村 そう(笑)。その辺から方向性が変わってきて、解散したんです。そうしたら、ほぼ同時に五味君も解散してた。
五味 ちょっと待って、ちょうど解散したから「じゃあ、こいつでいいや」っていう感じ?
中村 いや、僕らがお笑いを始めた時代はダウンタウン、爆笑問題、とんねるず、ウッチャンナンチャン……コンビで天下を取るっていうのが主流だったので。当時26歳で、コンビを組んで夢を目指す最後のチャンスだと僕は思った。
五味君とはずっと友達で気が合ってたので、このチャンスを逃したら、子どもの頃から描いていた「爆笑問題みたいになりたい」という夢が一生叶わなくなるなと、このチャンスにかけた感じです。誰でもいいわけではもちろんない。
——五味さんちょっと不満そう(笑)。
中村 まあ、高卒だけどいいか、みたいな。
五味 おいおい!
中村 五味君はアドリブが僕より得意だなっていうのはすごく魅力的に感じてたんですよ。
——五味さんのアドリブの強さをどんなところで感じてたんですか。
中村 ……。
五味 ないんかい。
中村 いや、例えば前のコンビだと、何か聞かれた時に「俺ない」「俺もない」となって、2人とも黙っちゃう。でも今なら「俺ないな」っていう時も五味君がとりあえず「えーとですね~」って発進してくれる。
『いいとも』でタモリさんからかけられた“言葉”
五味 確かに発進は得意なんですよ。だいたいノープランで発進して……。
中村 クラッシュします(笑)。でも、五味君と組んで、すぐ『いいとも』に2人で出るようになったので、ネタの幅もかなり広がりました。一緒に考えるようになったし。
——『いいとも』に出るってすごいことですし。
中村 五味君と組む前、何回か1人で出てた時に、エンディングまで任された日があったんです。しかもタモリさんとツーショットで。僕は犬になって板付きなんですけども。その時は意味が分からなかったです。
CM中タモリさんが「おお~、来たね」って言ってくれたんですよ。たぶん10週ぐらい出て、ついにここまで来たね、という意味で。その「おお~、来たね」がすごくうれしかったです。
——それからタモリさんには会われましたか。
中村 (『いいとも』が)終わってからお会いできてないので、タモリさんにはもう一度会いたいですね。あの時の犬が『ゴット・タレント』に出たことをご報告したいです。
五味 最悪、お家に行けば……。
中村 (イワイガワ)ジョニ男さんに聞けば分かるかな。タモリさんの運転手やってたから(笑)。
——『笑っていいとも!』でブレイクされて「よし、ここからだぞ」というタイミングで吉本を離れる選択をされたのはなぜだったんですか?
「中村君、出よう。絶対おかしなことになるから」
五味 ちょうどシューマッハを組んで1年後ぐらいに(吉本を)出ました。吉本、今はすごくいい環境だと思うんですけど、当時はちょっとまだ昔の感じが残っていて。
若手はみんな無限大ホールに出てたんですけど、僕ら11期生から上は無限大ホールから出されるみたいな話を聞いたんです。実際その2年ぐらい前に上の世代の方々が出されてて、そこからいろいろと大変になると。
中村 チャンスが回ってこなくなる。
五味 そういう話を聞いてたんです。もちろん活躍してる人たちは他にも出る場所があるかもしれないですけど、大半はみんな出されちゃうと。でも当時事務所をやめるというのはなかなかのことだったので、特に吉本を出るというのは。
ある時、無限大ホールで11期生のライブがあるって聞いたんですね。同期同士が特別仲がいいわけでもないのに。「あっ、これはたぶん出される前の、最後にやっとくかみたいなライブだ」って直感が走りました。だから「中村君、吉本出よう」って。でも最初は「いやぁ……」っていう反応でした。
中村 吉本出たら干されると思いました。
五味 周りの人にも「絶対出ないほうがいいよ」って止められたんですけど、説得しました。「中村君、出よう。絶対おかしなことになるから」って。そこから他事務所のライブを見に行って、「サンミュージックだ!」となり、現在に至ります。
——それも直感だったんですね。
『いいとも』に毎週出てても営業の仕事は回ってこなかった
中村 僕は僕でちょっと違う考え方があって。『いいとも』に1人で出てる時に、いろんな事務所の芸人と楽屋で会うようになるんですね。そこで毎週のように「最近営業すごいでしょう」とか言われるんですよ。
「え? 全然。だって、吉本のピラミッドで俺ら下のほうだから(営業)来ないよ」「エッ、なんで? これだけテレビ出てるのに?」みたいなやり取りから、吉本はテレビとか関係なく、ライブで上に行かないと仕事が回ってこないという構造に気づかされました。
五味 当時はね……。
中村 『いいとも』に毎週出てても営業の仕事は1本も回ってこなかったから、「そうか、俺はここにいたらいつまでたっても飯食えねえのかな」って。
——以前文春オンラインで ヤーレンズさんにインタビュー したのですが……。
中村 吉本脱出仲間の(笑)。
——やっぱり同じことをおっしゃってました。劇場のヒエラルキー問題。そして東京に出てきたら、自分たちの知らない面白い人がいっぱいいることに気づいたと。
中村 僕らもまさにそうでしたね。
五味 当時は本当に……鎖国と言うと語弊がありますけど、そんな感じでした。僕らも吉本しか知らなかったので、本当に井の中の蛙状態。でも僕らだって吉本にいた時は「俺ら吉本だし」みたいな、吉本に酔ってる状態でした。
中村 ギャラ安いけど、吉本芸人だししょうがねえかと。それがかっこいいと本気で思ってましたから。
五味 「ギャラ安いのは吉本だからね」みたいな。
中村 今思えば意味分かんないよね(笑)。
五味 今はだいぶ改善されたって聞きました。でも当時はそんなノリだったんで。他に行っていろいろ気づく。
中村 ただただ僕らは合ってなかったですね。
「おもろっ。何だこの事務所」と思ったサンミュージック
——新しい事務所にサンミュージックを選ばれたのは?
五味 本当にいろんな事務所さんのライブを見させていただいて、2人とも「サンミュージックだ」っていうのは意見が一致して。
中村 この事務所に入りたいって。
五味 サンミュージックはあまりにもライブに出てる方々の守備範囲が広かったんですよ。漫才とかコントじゃなくて、いろんな方がいた。なんだこのバラエティな事務所は、っていう。
中村 ゴー☆ジャスさん出てたよね。
五味 かと思えば正統派漫才をバーンとやってる方もいらっしゃったり、コントをバシッとやってる方も。「おもろっ。何だこの事務所」みたいな感じで。たぶんこの事務所はなんでもオッケーなんだなって。
「一発当てた」芸人たちのファミリー感
——以前、鳥居みゆきさんがインタビューで「サンミュージックの中だと私は一発屋芸人の枠に入れてもらえない」と話されていました。「一発屋」のハードルがものすごく高いと。
中村 なるほど。メンツすごすぎるから。ダンディ坂野さん、スギちゃん、ゴー☆ジャスさん、髭男爵さん、小島よしおさん……。
五味 ブッチャーブラザーズのぶっちゃあさんがライブを見に来てくださって、漫才やコントにはいろいろアドバイスをくださるんですけど、僕らみたいないわゆる“特殊班”にはアドバイスしないですね。「知らん」って。
——放任主義ですね。
五味 でも本当によかったです。色々なお仕事の話がこんなに来るんだっていうのも、サンミュージックに来て知りました。営業もテレビのオーディションも、とりあえずサンミュージックは全芸人に投げてくれるので。
中村 まだ具体的に言えないんですけど、ある国の番組からオファーが来たんです。でも、渡航費は自費というのが条件。そういう時も事務所が出してくれるので、本当にサンミュージックにいてよかったなと思ってます。
五味 サンミュージックはファミリー感強いんですよね。特にお笑い部門は、年末忘年会があるんですけど、そこに相澤会長や岡社長、(ブッチャーブラザーズ)リッキーさんが来てみんなで交流するんです。そういうのも吉本では考えられなかったですね。
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(西澤 千央)
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