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「レベルの差がありすぎた」「日本が世界で勝つのは厳しい」強豪スペインに3失点で完敗…城彰二が大岩ジャパンに感じた“力不足”《パリ五輪》

文春オンライン / 2024年8月4日 11時0分

「レベルの差がありすぎた」「日本が世界で勝つのは厳しい」強豪スペインに3失点で完敗…城彰二が大岩ジャパンに感じた“力不足”《パリ五輪》

スペインに敗れて涙を流すGKの小久保玲央ブライアン ©JMPA

〈 「久保建英を選ばなくて良かった」“エース不在”の日本代表がパリ五輪で次々と強豪撃破…城彰二が語る“大岩ジャパン”が決勝Tに進出できたワケ 〉から続く

 パリオリンピックの予選リーグを突破したサッカー男子日本代表は、8月2日(日本時間3日)、準々決勝でスペインと対戦。0-3で敗れ、2大会連続の準決勝進出とはならなかった。

 元日本代表で、現在はサッカー解説者として活躍する城彰二氏は、スペイン戦の戦いぶりをどう見たのか。話を聞いた。

◆◆◆

細谷のゴールが取り消されたのは不運だった

――決勝トーナメント1回戦のスペイン戦は、0-3の完敗でした。

城彰二(以下、城) スペイン戦は、レベルの差に愕然としました。3戦全勝したグループリーグの戦いを見て、もっと戦えるかなと思ったけど、いざ戦ってみると、ワンランク上の世界との差がスコアにも内容にも出た感じです。

――前半11分に先制された後、前半40分、細谷真大選手が相手DFを背負って反転してゴールを決めました。これはVARによって取り消されましたが、相手DFを背負ってのオフサイドは驚きでした。

 決めた瞬間は、すごいなって思いましたし、これで試合がわからなくなったと思いました。スペインの選手もやられたという表情をしていたので、かなりインパクトがあったと思います。

 でも、よく見てみると、藤田(譲瑠チマ)が細谷にパスを出した瞬間、相手が左側に体を寄せてブロックしていたんです。その時、踏ん張った細谷の右足のつま先が出てしまった。VARがある以上、映像で判断されるのは仕方ないですが、ミリ単位での取り消しは細谷にとっても日本にとっても不運としかいいようがなかったです。

――パスを受けてからゴールまでの流れは素晴らしかった。

 藤田が狭いところにパスを通して、細谷が懐深くキープ。腕を使って相手をブロックしながら、振り向きざまにシュートを決めたんですが、彼のフィジカルの強さ、ゴール感覚の鋭さが見えたシーンでした。細谷は体幹が強いので難しい体勢でもシュートが打てるし、スピードとパワーがある。でも、すぐにA代表のエースになれるかというと簡単ではない。

――どういうところに課題があるのでしょうか。

 大事なところでのイージーミスが多いんです。この試合でも前半52分、FKからヘディングシュートを左ポストに当てたり、後半36分、GKとの1対1のシーンで防がれたシュートは、巻いて決める感覚やニアを打ち抜くセンスがあれば決められた。

 でも、体の向きでGKにシュートコースを読まれて、左手だけで止められた。オフサイドで取り消されたゴールのように最高のプレーをする時もあれば、イージーなシュートミスをする時もあり、大事なシーンで決められない。それではFWとしての評価が高くならないですし、監督は使いにくくなってしまう。シュートの正確性を磨き、ゴールのバリエーションを増やしていかないとA代表では難しいと思います。

日本がセットプレーから2失点したワケ

――グループリーグでは無失点でしたが、スペイン戦では3失点。そのうち2失点は城さんが「危ない」と指摘されていたセットプレーからの失点でした。

 2失点目はスペインのサインプレーでしたね。日本はゴール前の守備に人数を割いていましたが、CKでペナルティエリア外にいたフェルミン・ロペスにパスを出されて、フリーで決められた。後半28分で疲れもあったと思うけど、関根(大輝)や藤田の反応が遅れて、寄せきれなかった。

 ボックス内には選手がたくさんいたので、CKを蹴る選手の動きを見て、反応しないといけないし、もっと寄せてシュートコースにも入らないといけないけど、足が止まっていた。シュートが素晴らしかったのもあるけど、ちょっと隙を見せると世界レベルでは決められてしまう。グループリーグでの堅い守備も、今回は小さな綻びが出ていました。

――大岩剛監督の選手交代を含めた采配は、どう見ましたか。

 前半、斉藤(光毅)や山田(楓喜)が自分の良さを十分に出せなかったので、ハーフタイムで藤尾(翔太)を入れ、その後も佐藤(恵允)や植中(朝日)、荒木(遼太郎)を入れて点を取りにいったけど、スペインに流れをもっていかれた中では、選手交代で流れを変えることができなかった。

 システムを変更するなど何か変化をつける必要があったけど、後半30分以降は、逃げるスペインのうまさが目立って、大岩監督は打開策を見つけることができなかった。いいチームを作ったけど、一か八かの策がなく、勝負師ではなかったと思います。

城彰二が感じた日本とスペインの差

――スペインと日本の差は、どういうところにあると思いますか。

 個人能力の高さです。日本の選手も技術はあるけど、パスを受けるときに、ワンタッチで相手の逆を取ることができない。だから相手のプレッシャーを受けてミスするパターンが多いんです。

 でも、スペインの選手は、トラップをする前に相手のポジションを見て、体の向きを360度変えて、相手と逆方向にボールをコントロールして次のパスを出していく。そのため、速いパス回しが可能になり、日本がプレッシャーをかけてもなかなかボールを奪えない。そういう体の使い方と、いろんな状況下でコントロールする技術に大きな差があると思いました。

――今大会で、今後、W杯を戦う日本代表に上がってきそうな選手はいましたか。

 やっぱりGKの小久保(玲央ブライアン)ですね。グループリーグではMVPレベルの仕事をした。今後、もっと国際舞台でのプレーを経験し、スペイン戦の1点目を止められる選手になれば、日本代表の正GKになれると思います。

 DFの高井(幸大)も良かったです。192cmと背丈がある上にスピードがあるし、足元の技術が高く、ヘディングも強い。スペイン戦では、セットプレーからヘディングシュートをして、クロスバーに当たったシーンがあったけど、あのシーンを見ると、点が取れるセンターバックになれる可能性を秘めていると感じます。今後、チームでレギュラーになり、成長していけばいずれ冨安(健洋)のような選手になっていくと思います。

スペインに負けた大岩ジャパンの選手たちに“必要なこと”

――評価が高かった藤田選手は、どう見ていますか。

 グループリーグでは別格なプレーを見せていたけど、スペイン戦は足が止まる時間があった。藤田が動いて相手の合間でボールを受けてパスを出せば、もっとチャンスを作れるはずなのに、動きが止まってしまう。能力が高いし、落ち着いてプレーできる選手だけど、90分間を通してハードワークできる選手にならないといけない。この悔しさを糧にしてこれからどれだけ意識を高く持ち、成長していけるか、ですね。

――五輪での悔しさは、その後のサッカー人生に影響を及ぼすものですか。

 僕が出場したアトランタ五輪の時は、2勝1敗だったけどグループリーグを突破できなくて、本当に悔しかったし、もっと試合がしたいと思った。こういう真剣勝負の場ってなかなかないし、こういう場で勝負したいと思った。通用する部分、しない部分が見えたけど、それを受け入れつつ、上のレベルでやりたい、次は日本代表だって思わせてくれた大会だった。

 そういう上昇志向というか、ガツガツしたものがゾノ(前園真聖)を始め自分たちにはあったんです。今回、スペイン戦で負けた選手もきっとそういう思いでいるだろうし、そうなっていかないと世界や代表ではプレーできないと思います。

世界の若い選手たちはすごい勢いで成長している

――日本は北中米W杯でベスト8を目標にしています。しかし、今回のスペイン戦を見ていると、世界のレベルは急速に高くなっており、改めて容易ではないと感じました。

 日本は、カタールW杯でドイツやスペインを破り、親善試合でもドイツやトルコに勝つなど、世界を相手に少しずつ結果を出せるようになり、レベルが上がってきています。

 でも、例えばユーロで優勝したスペインなど、若い選手たちがすごい勢いで成長している国がありますし、フランスなど他国も同じように強くなっている。今後、目標達成の厳しさはさらに増していくでしょう。日本は、世界との差をこれから縮めていくために、足りない部分を補うことが必要になってきます。

――足りない部分とは、どういう点になりますか。

 日本はグループ戦術が得意だし、一体感もある。でも、個人能力の差は、スペインと比較してもかなりありました。フィニッシュのシーンを見ると、あのミドルを2発決めてくる決定力は今の日本の選手にはないでしょう。セットプレーからの得点力もしかりです。個をより高めていかないと攻守においてレベルアップができない。

 そのためにはチームでレギュラーを取るのはもちろん、今いるチームからさらにレベルアップして、強豪クラブに行くなど、高いレベルでやっていかないといけない。選手たちは、今回のパリ五輪でそれを感じたと思うので、行動やプレーで示していってほしいと思います。

取材・文=佐藤俊

(城 彰二)

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