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「分かっていますよ!」「できないんですよ!」大谷翔平がブルペンで声を荒げて怒り…“大谷担当記者”が明かす日ハム時代の秘話――2024年上半期 読まれた記事

文春オンライン / 2024年8月13日 11時0分

「分かっていますよ!」「できないんですよ!」大谷翔平がブルペンで声を荒げて怒り…“大谷担当記者”が明かす日ハム時代の秘話――2024年上半期 読まれた記事

大谷翔平 ©文藝春秋

2024年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。スポーツ部門の第3位は、こちら!(初公開日 2024/03/21)。

*  *  *

 今シーズンから新天地・ドジャースでの活躍が期待される、メジャーリーガーの大谷翔平(29)。彼の一挙手一投足に、日本だけでなく、世界中のファンが注目をしている。そんな大谷を日本ハム時代から10年以上追い続けているのが、スポーツニッポン新聞社MLB担当の柳原直之記者だ。

 ここでは、柳原氏が、番記者としての日々を綴ったノンフィクション『 大谷翔平を追いかけて - 番記者10年魂のノート 』(ワニブックス)より一部を抜粋。大谷翔平と元日ハムのトレーナー・白水直樹氏との“絆”を紹介する。(全2回の2回目/ 1回目 から続く)

◆◆◆

WBC開幕投手として堂々たる“凱旋登板”

 2023年3月8日。東京ドームで行われたWBC開幕前日練習。大谷は中堅フェンスに向かって、ルーティンの「壁当て」を繰り返した。その後、大好きなアニメ『SLAM DUNK』のオープニング曲『君が好きだと叫びたい』が流れる中、ベンチ裏に下がった。

「初戦なのでチームの勢いとしても、初回の入りからしっかり集中して入りたい」

 小学2年だった2002年に野球を始め、2006、2009年の連覇はテレビの前で見届けた。初選出された2017年大会は右足首痛で出場を断念し、日本代表も準決勝で敗れた。

「WBCは初めてなので、緊張するとは思うけど、いつも通りの自分らしいプレーをしたい」。憧れでもあり、6年前の悔しさを晴らす舞台でもある。

「フィジカルは今までで一番良い」強化試合で好調ぶりを見せる

 強化試合2試合で4打数3安打、2本塁打、6打点と絶好調。投手としては2回1/3を無失点だった2月28日のアスレチックスとのオープン戦から万全の「中7日」で本番を迎え「フィジカルは今までで一番良い。現時点では申し分ない」と言い切った。

「ずっとお世話になった監督と、こういう舞台でできることが特別なこと。一緒に優勝できればこれ以上ない」。日本ハム時代の恩師で二刀流の生みの親でもある栗山監督と挑む初のWBC。さあ、伝説の幕が開く。

東京ドームに地鳴りのような大歓声が響いた

 3月9日。1次ラウンドB組が東京ドームで開幕。侍ジャパンは中国を8ー1で下し、白星発進した。大谷は「3番・投手兼DH」で出場。投げては4回1安打無失点、5奪三振で勝利投手、打っても左中間2点二塁打など2安打で初戦白星に貢献した。

 自身初のWBC、開幕投手。マウンドに上がると静寂に包まれ、シャッター音だけが響いた。先頭打者からスライダーで空振り三振。地鳴りのような大歓声が響いた。「球数(65)は決まっていたけど、その中でなるべくゼロに抑えることを考えた」。4回1死から2番・楊普(ヨウシン)に初安打となる左前打を許したが、2022年までソフトバンクに所属した3番・真砂勇介には5球連続スライダーで空振り三振。4番・陳晨(チンシン)もスライダーで見逃し三振など、5三振は全てこのスライダーだった。

 49球中、スライダーは26球(53%)。昨季後半も50%前後の割合を占めるなど、得意球としてきた球種。球数制限もある中、最も打ち取る確率の高いボールを選択し、4回をわずか49球。オープン戦登板は現地時間2月28日の1試合のみだったが、直球の最速は160キロを計測し無失点で抑えた。

投手コーチが「大谷らしいところを久しぶりに見た」と明かした理由

 試合前ブルペンから大谷流だった。日本ハム在籍時の2016、2017年に投手コーチでもある吉井理人投手コーチは「ブルペンで1球もストライクが入っていなかったので、大谷らしいところを久しぶりに見た」と明かした。“大谷らしいところ”とは、ブルペンでストライクを投げるのではなく、変化球の曲がり幅や直球の回転など球質、リリースポイントの確認に費やしたところ。制球力に自信があるからこそ。

 この日の無四球がその証明だった。ストライクを投げるだけがブルペンではない。2014年の日本ハムキャンプで大谷が悪戦苦闘していたクイックモーションでの投球練習を思い出した。

 日本ハム時代の恩師で二刀流の生みの親でもある栗山監督と挑む初のWBC。かつてその恩師から「投げることに関してはうまくない」と評されたこともある「投手・大谷」が大舞台で進化の“凱旋登板”を飾り、中6日で16日の準々決勝に向かうことになる。

大観衆をどよめかせた驚きの発言

 ヒーローインタビューではファンと勝利を分かち合い、そしてこう言った。「これだけ夜遅くまで最後まで残っていただいて感謝してます。ただ、まだまだ(声援が)足りないんで、明日もっともっと大きい声援で、よろしくお願いします」

 WBCでの大谷の取材対応は“エンゼルス流”が踏襲され、原則、ヒーローインタビューと登板後の会見のみ。ほかの選手はダルビッシュ有らメジャーリーガーを含めミックスゾーンでの取材が可能だったが、大谷は原則、禁止だった。

 9日の中国戦後はヒーローインタビューに限られ、会見は行われない“例外”も発生。各メディアは二刀流が時間との戦いであることを理解しつつも、どう独自色を持って報じるか悩ましかったのではないだろうか。だが、そんな心配も杞憂に終わるほど、今大会の大谷は饒舌だった。そして、その言葉は多くの人々を動かしていった。

 この中国戦後のヒーローインタビューで、大谷は「今日の勢いをそのまま試合につなげたいですし、(翌10日の韓国戦の)先発ダルビッシュさんなので、なんとか援護できるように、僕自身頑張りたいなと思います」と発言し、東京ドームの大観衆をどよめかせた。まだ栗山英樹監督が予告先発を発表する前だったからだ。

 うっかり口を滑らせたか、狙った発言だったかは定かではないが、普段から“秘密主義”の大谷らしからぬ姿に驚いた。

大谷翔平と元日ハムトレーナー・白水直樹氏の関係

 2004~2010年、2014~2017年に日本ハムでコンディショニング担当を務め、大谷と二人三脚で歩んできた白水直樹氏にとっても感慨深い、大谷の侍ジャパンのユニホーム姿だった。

 前回2017年大会直前の1月。千葉・鎌ケ谷の2軍施設のロッカールームは緊張感に包まれていた。当時、右足首痛に苦しんでいた大谷の出場可否は決まっていなかった。

 球団とトレーナー陣は将来を考え、無理をすべきではないという考えで一致。大谷の本心を探るために、白水氏が“派遣”された。大谷と2人きり。白水氏はその時のことが忘れられないという。

「トレーナーとして今、無理をするタイミングではないと思う。次の大会には出場できる。どう思う?」とチーム方針をやんわり伝えた。大谷は「それは全然、チームに任せます」。驚くほどあっさりした答えは、白水氏への信頼が厚いからこそだった。

大谷が「分かっていますよ! だけど、できないんですよ!」と声を荒げたワケ

 だが、その右足首の故障で大谷が一度だけ、怒りをぶちまけたことがあった。同年シーズン中盤の福岡遠征での、栗山監督、白水氏が見守ったブルペン投球。投球時に軸足の右足を強く蹴れずに浮いてしまい、体重が前に乗らない状態が続いていた。

 球離れが早く最後のひと押しが出ない。白水氏が「前に入っていく動きを出そう。そのほうが前に力が伝わると思うよ」と言うと、大谷が声を荒らげた。「分かっていますよ! だけど、できないんですよ!」。

 栗山監督も「あんなあいつは見たことねえな。それくらい悔しさとかあったんだろうな。でも、信頼する人にしかああいうこと言わないから」と回想する出来事だった。

 当時、登板翌日でも、休日でもジムでのサポートを頼まれ「そこまで継続している選手はいなかった。完全にメジャーや、その先を見ていた。フィジカルがないと間に合わない。あの時から逆算が始まっていた」と白水氏。

 メジャー移籍前の2017年終了後に右足首を手術し、痛みは完治した。出場辞退から6年。大谷の悔しさを知る白水氏にとっても悔しさを晴らす舞台となった。

(柳原 直之/Webオリジナル(外部転載))

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