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81歳の父親が出会い系アプリに300万円課金、さらなる悪夢が…困惑する息子が気づいた「ある異変」――2024年上半期 読まれた記事

文春オンライン / 2024年8月14日 6時0分

81歳の父親が出会い系アプリに300万円課金、さらなる悪夢が…困惑する息子が気づいた「ある異変」――2024年上半期 読まれた記事

※写真はイメージです ©iStock.com

2024年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。マネー部門の第4位は、こちら!(初公開日 2024/01/12)。

*  *  *

 ある日、都内の企業に務めるTさん(51歳・男性)のスマホが鳴った。電話の主は救急隊員で、ひとり暮らしをしている父親(81歳)がラブホテルで倒れたという。老いた父親がなぜそんな場所に? 一体誰と? Tさんたちは大いに動揺しつつ、入院の手続きなどに奔走した。

 そして迎えた退院日。父親が入院費をクレジットカードで支払おうとしたところ、使えないことが判明。一体なぜ――?(全2回の2回目/ 最初から読む )

◆◆◆

 退院後、しばらくはマンションに併設されている介護施設へ一時入居することになった。ラブホテルで転んで入院、とはとんでもない父親だが、いろいろ整っているマンションへ入居できるだけの資産と年金を持っていたことだけはありがたい。

 だが、ケアマネジャーからの定期連絡によると、女性職員に対して卑猥な言葉を投げかけたり、性器を見せつけようとしたりするのは続いているということで、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 数日後の週末、姉と一緒に施設を訪ねた。様子を見に行くことに加え、カードが使えない理由と、もし限度額いっぱい使ってしまったのだとしたら何に使ったのかを知るためである。

 なにぶんカードの使用履歴などは個人情報なので、カード会社に電話しても教えてはくれない。いったん父親に電話を替わり、生年月日を言わせて本人確認を済ませたのち、息子と話をすることを本人が了承して初めてオペレーターと話せるわけだ。

利用額63万円の内訳

 ようやく繋がって事情を説明すると、限度額を使い切ったのではなく、

「先月のご利用額63万円が、指定口座の残高不足で引き落とせなかったので利用停止になっています」

 とのこと。高価な品を通販で買った形跡もないし、一体何に使ったのか。

 父親に「63万円も一体何に使ったのか」と聞くと、

「それはですね、デリバリーヘルスです」

 と、悪びれもせず答える。

「デリヘルは現金払いでしょ? カードで何を買ってるの?」

 問い質しても、うーんと首をひねったままま。通過症候群による感情障害が続いているようだ。利用明細を確認するしかないが、ずいぶん前に紙からネットに切り替えており、しかもIDとパスワードは忘れている。再びカード会社に電話して、再設定の方法などを教えてもらったのだが、その際にオペレーターから言われたのは、

「ご利用の履歴を見させていただいたところ、不正利用の可能性があります」

 ということだった。デリヘルでカード情報を抜かれたりしたのか、と思いつつ、なんとか利用明細を自分のiPadで見られるようにしたところ、63万円の内訳はGoogle Play Storeで5,000円、10,000円という決済を繰り返した結果であることがわかった。スマホゲームに課金しているのだろうか? だがゲームにハマったなんて聞いたことはない。

父親のスマホを見てみると…

 ちょっと貸してみろ、とスマホを取り上げて画面をスワイプすると(パスワードや指紋認証のロックはかけていない)、「熟女との出会い」「ロマンス倶楽部」といった名前のアプリが5つも6つも並んでいるではないか。

 試しに1つのアプリを開いてみると、どう考えても実在するとは思えない「40代女性」からの「旦那がかまってくれなくて……」みたいなメッセージが並んでいる。父親は、それに対して「今は病院に軟禁されているけど、退院したら●●ちゃんの××をナメナメしたいよ~」(情けなさすぎるので伏せ字とさせていただく)などとご丁寧に返信しているのだ。

「プロフィール」のページには、自撮りしたらしい正面からの顔写真に、本名が容易に推測できるニックネームが登録されている。ネットリテラシーゼロ……。

 こういう出会い系では、メッセージのやり取りに有料のポイントが必要なはず。女性もほとんどすべて「サクラ」で、思わせぶりなメッセージを送ることでポイントを消費させる仕組みだ。不正利用でなくてよかったのか悪かったのか。

酷すぎる言い草

「こんなの全部ウソだよ。女の人に会えたことある?」

「ないけど、立ち上げると近所に住んでる人からたくさんメッセージが来るんだ」

「そんなの、スマホの位置情報を利用して、自動的に機械がやっているんだよ。そんなこともわからないの?」

 そう言っても、恥ずかしがる様子すら見られないことに、だんだん腹が立ってくる。ネット上で明細を1年分遡ってみると、出会い系アプリに費やした額はざっと300万。「もったいないと思わないの?」と問いただすと、信じられない台詞が飛び出した。

「そんなことに300万円使うんだったら、そのカネ自分にくれればいいのにと思っているんだろう?」

 これには完全にキレた。

「あんたの金だからどう使おうが勝手だが、もとは家を売ったお金で、その家を建てられたのはオカンも働いていたからだろう? オカンの墓の前で土下座して詫びろや!」

 思わず襟首掴んで怒鳴りつけ、姉に止められる始末である。50過ぎて我ながら情けない……。

父親に起きていた異変

 とにかく、アプリはすべて削除。一緒に登録したと思われる怪しいLINEアカウントも、すべてブロックのうえトークを削除。あと、不正利用でない以上は、不足分を払わねばならない。マンションの部屋のタンス預金から必要な額を持ち出し、借りたキャッシュカードで入金。しかし、またアプリをダウンロードされたらお手上げだ。

 そこで、施設へ訪問診療に来ている精神科医に相談したところ、病院を紹介してもらい、CTスキャンや心理テストを受けることになった。結果は、「前頭側頭型認知症」の疑い。

 このタイプの認知症は、脱抑制といって食欲・性欲などを抑制できない(そういえば、70代後半になってから10キロ以上も太った)、甘いものばかり欲しがる(毎日のようにアイスを食べているらしい)、罪悪感や恥の意識を感じにくい(今の状態がまさにそれ)、といった特徴があるとのこと。

 病気だから仕方がないのか……こうした症状をある程度抑える薬はあるというが、きちんと服薬管理をできないといけないほか、服用するとボーッとして転倒リスクなどがあるため、認知症のひとり暮らしでは処方しづらいそう。

 というわけで、一度は自宅マンションに戻ったものの、本格的に介護施設へ移すべく相談を始めているところ、再びのトラブルに見舞われることになる。

父が失踪、発見された場所は…

 ケアマネジャーから「1日以上帰宅していない」と連絡があったのが12月半ば。何度か電話をしてようやく繋がると、またもや想像していなかった言葉が飛び出た。

「いま、交番でお巡りさんと一緒にいます」

 認知症が進行して、ついに家に帰れなくなったか、と思ったらそうではなかった。警官の説明によると、またもやデリヘルを呼んだところ、事が済んでから丸一日眠りこけてしまったのだが、目が覚めるとお金(タンス預金から持ってきた札束)を入れたカバンが見当たらないというのだ。財布に残っていたお金ではホテル代が払えず、交番に突き出されたというわけである。

 再び新横浜へ向かったものの、デリヘル嬢は盗みなんてしてもすぐに足がついてしまうわけで、客のカバンを盗むとは考えにくい。実際、警官がラブホの防犯カメラをチェックした限りでは、デリヘル嬢がカバンを持って出たようには見えなかったとのこと。

 とにかくホテル代は払わねばならないので、警官に教えられたホテルへ行くと、フロントのおばさんから、「この前は倒れて大変だったでしょう」と言われる。同じホテルだったのか……お世話になりました。

 その後、姉と一緒にタクシーで家まで送り届けたところ、玄関先に件のカバンが。札束も入っている。つまり、カバンを持って外出することを忘れたうえ、カバンを忘れたことも忘れた、ということになる。

 この「色ボケジジイ」の行動が落ち着く日は来るのか――絶望が深まるなかで迎えた新年。初詣でも、状況が少しでもマシになることを神様にお願いしていたのだが――。

新年早々、新たなトラブル

 正月ボケで少々遅くまで寝ていたところを着信音で起こされたのは、1月4日のことだった。スマホに表示されているのはケアマネさんの名前。

「実はまた、お父様が昨日から帰宅されていなくて。お電話したら、またラブホテルにいらして、お金がなくて出られないとおっしゃっています」

 また? 前回から2週間ほどしか経っていないではないか。

「息子さんに電話してお金を持ってきてもらったらどうですか、と言ったら、『怒られるから電話できない』と……」

 たしかに、父親のところに電話をかけても出ない。仕方がないので姉に頼むと、姉からの電話には出たので、ラブホの場所が判明。前回と同じであった。とにかく迎えに行かないことには何も始まらないが、以前の私の激昂ぶりが不安だったのか、姉も一緒に行くという。

 そういうわけで、新横浜の駅で待ち合わせ、2人でホテルへ向かう。姉と並んでラブホの玄関をくぐったことのある人間なんて、この広い日本で何人いるのだろう。背徳の関係ではないが、いずれにしても、おおっぴらに言える話ではない。

 フロントに言って鍵を開けてもらい、部屋に入ると、

「おう、来たか」

 相変わらず、恥じる様子は皆無。ふつふつと怒りが湧き起こるがぐっとこらえて、「帰るからちゃんと服を着なさいよ」と声をかける。父親が立ち上がってジーンズを引き上げると、失禁の跡。オシッコも満足にできないのに、デリヘルは呼ぶのか――。

 自動精算機でチェックアウトすると、宿泊代に延長料金、ルームサービスで食べたピザやらステーキやらの代金を合わせて30,000円也。シティホテル並の金額になっている。自分の財布から万札を取り出し、一枚ずつ入金する行為が虚しい。

 駅の方まで行かないと、タクシーが拾えない。ラブホを出て、怒りのあまり早足になる私、父親を気にして振り返りながらゆっくり歩く姉、そして杖を突きながらヨタヨタついてくる父親。なんとも哀れな行列であった。

(高橋 理)

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