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「給与も投資も滞っていた日本は大きな伸びしろがある」“為替介入の指揮官”神田眞人前財務官が抜本的改革案を緊急提言

文春オンライン / 2024年8月8日 8時30分

「給与も投資も滞っていた日本は大きな伸びしろがある」“為替介入の指揮官”神田眞人前財務官が抜本的改革案を緊急提言

歴史的円安に対応してきた神田前財務官 ©文藝春秋

〈他国がやっているような、市場メカニズムに新陳代謝をゆだねて生産性や賃金の上昇を図るといった普通の政策をしっかり実施するだけで、日本は強く復活することができます。というのも、数十年、給与水準も投資も滞っていた日本には大きな伸びしろがあるのです〉

 そう綴るのは、内閣官房参与の神田眞人氏だ。7月末まで次官級ポストの財務官を務め、歴史的な円安への対応に奔走。「為替介入の指揮官」として注目を集めた。

あらゆる角度から日本経済の問題点を洗い出した

 そんな神田氏は、かねてから日本経済が抱える構造的な課題を憂慮してきた。今年3月には大和総研副理事長の熊谷亮丸氏や、慶應義塾大学の小林慶一郎教授、土居丈朗教授、三菱総合研究所執行役員兼研究理事の武田洋子氏、BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミストの河野龍太郎氏ら20名の論客に呼びかけ、財務省の会議室で5回にわたって、「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」懇談会を開催。国際収支を「日本経済を診察するための道具」として、あらゆる角度から日本経済の問題点を洗い出し、分析・議論してきた。今回、懇談会の成果を広く伝えるため、神田氏自身の思索も加えて「 文藝春秋 」9月号に 緊急寄稿(全18ページ) した。

輸出は自動車に偏重…「輸出立国」は昔のこと

 神田氏が指摘する日本経済の課題は、シンプルだ。かつて日本は「輸出立国」と学校で教わったが、それは昔のことで、近年は貿易赤字だ。海外への輸出は自動車産業に偏重し、国内は高騰する化石燃料の輸入に依存している。さらに日本企業は海外生産にシフトし、そこでの稼ぎは海外での再投資に使われるため、国内に還元されるのは約半分でしかない。

 さらに問題なのが、拡大を続ける「デジタル赤字」だ。これは日本人や日本企業がGAFAなど巨大IT企業に支払う、クラウド・サービスやオンライン会議システムの利用料や、動画・音楽配信に伴う各種ライセンス料を指す。年々拡大を続け、2023年度は5兆円を超える赤字になる見通しだ。

〈現状では、クラウドや検索サイト、オンライン会議等のプラットフォームのほとんどをアマゾンやグーグルといった外国企業が提供しています〉

〈皆さんのスマホ環境を振り返れば容易に想像できるように、日本の企業活動や日々の私生活においてデジタル化が進展すればするほど、「デジタル赤字」が拡大する構造となっています〉

深刻な「デジタル赤字」に対策はあるのか?

 懇談会では、「エネルギー分野の赤字は解決策が思いつくが、デジタル赤字の拡大は解決策が見えない不安がある」との声まであがったという深刻な問題だが、対応策はあるのか。神田氏はこう綴る。

〈もちろん、日本として、自前の技術も活用した国産デジタルプラットフォームの育成に取り組むことが期待されるところです。ただし、グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどがデファクトスタンダードとなったいま、日本版プラットフォームを短期的に実現することは容易ではありません。次々世代を視野にいれたチャレンジに開発努力を傾注しつつ、当面は、海外事業者によるデジタルサービスを活用する際に、付加価値の高い製品・サービスを生み出して、日本の産業全体の競争力を向上させるといった視点が重要でしょう〉

「デジタル赤字」にとどまらず、海外から日本への対内直接投資残高(対GDP比)が、国連貿易開発会議(UNCTAD)の統計で198カ国・地域中196位と、北朝鮮より下位に沈んでいる現状など、日本経済が抱える数多くの課題を指摘。それに対する様々な「処方箋」を示しつつ、〈改革を着実に実施し、市場経済のダイナミズムを強化すれば、競争力のある日本経済を取り戻すことは十分可能です〉と結んでいる。

 神田氏の論考「 日本はまだ闘える 」は8月9日発売の「 文藝春秋 」9月号に掲載されるほか、「 文藝春秋 電子版 」(8月8日配信)で公開中だ。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年9月号)

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