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〈空室率はサンフランシスコ30%、マンハッタン25%!〉火の車になった欧米投資ファンドが日本の不動産から撤退している

文春オンライン / 2024年8月9日 6時0分

〈空室率はサンフランシスコ30%、マンハッタン25%!〉火の車になった欧米投資ファンドが日本の不動産から撤退している

木下泰氏 ©文藝春秋

「外国人の不動産投資は、かつてよりは増えていると思いますが、実は直近の不動産価格高騰の牽引役ではないと私は見ています」

 そう語るのは木下泰氏。外資系ファンドや新生銀行(当時)などを経て、現在は不動産関連投資のアドバイザリー業務を行うEminence Partners代表を務める、“不動産投資のプロ”である。

 木下氏が冒頭の発言をしたのは、 「文藝春秋」9月号 掲載のBNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎氏、東京財団政策研究所主席研究員・柯隆氏との座談会「 株・不動産 バブルはいつまで続くのか 」でのこと。

外資系ファンドによる不動産投資が減少

 7月末、日銀の追加利上げ決定を契機に、金融市場が急変した。日米の金利差の縮小を意識して円を買い戻す動きが強まり、円高・株安が急激に加速。市場は一時パニック状態となり、8月5日の日経平均株価は、1987年のブラックマンデー翌日の下げ幅を超えて、史上最大の下げ幅を記録した。

 だが近年の日本の資産バブルの勢いは凄まじく、特に不動産価格の上昇が続いてきた。7月公表の路線価の全国平均は前年比で2・3%増。29都道府県で上がり、東京は5・3%増。東京23区の昨年の新築分譲マンションの年間平均価格は、1億円を超えた。巷では、「中国や欧米などの投資家が、超円安で割安になった日本の不動産を購入している」と囁かれているが、木下氏はそれに対して異を唱える。近年の不動産市況への外国人投資家の影響は認めつつも、「2023年度の第4四半期の数字を見ると、外資系ファンドによる不動産投資が減少している」と指摘する。

 その原因は、コロナ禍を契機に欧米でリモートワークが定着したことだ。そのため都市部のオフィスビルの需要が激減した。

欧米の不動産投資ファンドが軒並み火の車に

 木下氏はその実情を明かした。

「サンフランシスコのオフィスビルの空室率は約30%です。日本に置き換えて考えてみると、たとえば六本木ヒルズのような複合商業施設のビルのうち、一棟丸ごと空室になっているような状況です。結果、不動産価格が6~7割も下落、大損害を被っている。マンハッタンでも空室率は25%ほどと非常に高い」

 そのため欧米の不動産投資ファンドは、軒並み火の車になっている。

「日本支社に対して本社から『日本のマーケットで早く利益を出して、金を持って帰れ』と、厳命が出ているのです。機関投資家は1回で100億円、200億円単位で購入します。額がデカいので、それが一斉に売りに出されると、市場に与える影響は相当なものになります」(木下氏)

地方の優良企業が不動産を買い始めた

 では、誰がその穴を埋めているのか?

「地方の優良な企業です。デフレ下で借り入れを極力減らし、従業員をリストラして積み上げた潤沢なキャッシュフローを持っている。日銀がマイナス金利政策を解除したことで、今後は金利がある世界に突入します。現金は寝かしていたら、目減りしてしまう。その恐怖感から、不動産を買い始めたのです」(木下氏)

 座談会では、日本の不動産価格の今後についてだけでなく、日本の株価を押し上げている“米中新冷戦”、1970年代初頭レベルより低い超円安の行方、インフレを招く政策を掲げるトランプ氏が大統領になった場合の懸念点などについて、白熱した議論が交わされた。

 市場を知り尽くした3人のプロが、16ページにわたり語り合った「 株・不動産 バブルはいつまで続くのか 」は、「 文藝春秋 電子版 」(公開中)と「文藝春秋」9月号(8月10日発売)に掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年9月号)

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