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「誰かが入ってきて水をかけたとしか」…朝起きると掛け布団がぐしょぐしょに。旅行帰りの男性が悩まされた怪奇現象の数々

文春オンライン / 2024年8月8日 6時0分

「誰かが入ってきて水をかけたとしか」…朝起きると掛け布団がぐしょぐしょに。旅行帰りの男性が悩まされた怪奇現象の数々

 京都蓮久寺の三木大雲住職のもとには、奇妙な体験をした人、助けを求める人からの相談が、日々持ち込まれてきます。拾った白い綺麗な石を目玉だという友達、骨董市で買った不思議な絨毯、小さいおじさんを捕獲して家で飼っていると言う人――。

 新刊文庫『 怪談和尚の京都怪奇譚 積徳の旅篇 』にも、日常に潜む怪異現象や不気味な出来事が数多く掲載されています。その中から、第1回はある男性が旅行から帰宅してから怪奇現象に悩まされた日々を告白した「言語道断」を紹介します。(全2回の第1回/ 後編を読む )

悪夢の始まり…部屋に充満するアンモニア臭

「信じてもらえないと思うのですが……」

 そう前置きしてその男性は、とても不思議なお話をしてくださいました。

 男性は、社会人三年目の広崎さんという方です。

 この方が、ある日突然、不思議な現象に悩まされることになったと仰るのです。

 広崎さんは、とある会社にお勤めになって二年が経ったある日のこと、先輩から有給休暇を消化しているかと尋ねられたそうです。

 毎年有給休暇を取っておられたそうですが、言われてみれば今年はまだ取っていないということに気が付かれました。

 そこで、学生時代の友人らと休みを合わせて、旅行へ行かれたそうです。そしてその旅行から帰宅した日のことです。

 自宅のアパートの下に着かれたのは、もうかなり遅い時間だったそうです。凄く楽しい旅行だっただけに、明日から仕事かと楽しかった時間を名残惜しく思いながらアパートの三階の自室を見上げると、窓からは煌々(こうこう)と電気の明かりが見えたそうです。

「しまった、電気を点けっぱなしで何日も部屋を空けてしまっていた」と、電気代の心配をされたそうです。

 慌てて部屋まで行き、扉を開けると、部屋の中は真っ暗で、電気は消えていたそうです。もしかすると下からアパートを見た時に、他の部屋の窓と見間違えたのかも知れないと思われたそうです。電気を点けて靴を脱いで部屋に入った瞬間、強い刺激臭を感じたのだそうです。それは、所謂アンモニアの臭いだったそうですが、数秒後には消えたと仰います。

浴室の扉を横切る人影、確実にいる人の気配

 次の日、夜に会社から帰宅し、お風呂に入られました。お風呂に入っていると、何故か人の気配を感じたと仰います。

「何かが部屋にいる気がする」そう思ってお風呂の扉を開けようとしたその時、浴室の中折れ式の扉の磨りガラスに人影が一瞬横切るのが見えたそうです。その影が見えた時に、同時に人の歩く足音も聞こえたと仰るのです。

 確実に誰かが侵入していると確信した広崎さんは、思い切って扉を直ぐに開けたそうです。しかし部屋には誰もいませんでした。逃げたのかもしれないと思い、部屋の扉や全ての窓も確認したそうですが、全てに鍵が掛かっていたらしいのです。

 何の影だったのか、気のせいだと済ませられる程、曖昧な影や音ではなく、人がいるという気配が確かにそこにはあったそうです。

 不安な気持ちを残したまま、お風呂から上がり、そのままベッドで就寝されました。

 横になって寝ていると、再び人のいる気配を感じたそうです。その気配は、寝ている自分の顔を上から覗き込んでくるというものだったそうです。しかし、目を開けてもそこには誰もいません。

 広崎さんは、心霊現象などはあまり信じない質の方でしたが、この時は流石に怖くなって、部屋の電気を点けたまま就寝することにしました。

 これで安心して寝られると、そのまま目を瞑られました。その寝入り端、突然また人の気配を感じたそうです。

 それは、気配というよりも、人の頭の影だったと仰います。電気を点けたまま目を瞑っても、顔の近くで何かが動くと、その影がわかる様に、目を瞑っていると、突然瞼(まぶた)の明るさが遮られて、暗くなったのだそうです。

「確実に何かがこの部屋の中にいる」、そう思うと寝るのが怖くなり、ある程度明るくなるまで起きておられたそうです。

 それからも部屋に戻ると人の気配を感じることが多々あり、ゆっくりと出来るはずの自分の部屋が、とても居心地の悪い場所となってしまいました。

 またある日は、帰宅して、部屋に入った瞬間、誰かが自分のベッドに腰掛けていて、気がついた瞬間消えたのを見たと仰います。

まるで洗面器一杯の水を上から…

 そんな日が何日か続くと、当然寝不足になってこられました。結果、入社以来初の遅刻をされたそうです。

「すみません。寝坊してしまいました」そう言うと、先輩は心配そうにこう仰いました。

「最近、顔色が悪いけど体調でも悪いのか」そう言われましたが、部屋に何かがいる気がするという非科学的な話も出来ないので「単なる寝不足です」と答えられました。

 その日、会社では、入社一年目の社員のための、一泊二日の社員研修の付き添いを決める会議があったそうです。その会議で、広崎さんはその日遅刻して来た事もあり、社員研修に付き添いで行くように言われたそうです。

 広崎さんは、丁度自分の部屋に戻るのも怖いので、一泊でもホテルで宿泊出来たら落ち着けると思い、付き添いで行かれる事になりました。

 社員研修当日、その日の研修を無事に終え、ホテルの部屋に入られると、軽くシャワーを浴びた後、直ぐにベッドで横になられました。

 その日は久しぶりにゆっくりと就寝出来たそうです。

 ゆっくり寝られたせいか、朝の目覚めはとても良かったそうです。ところが、ベッドの上で起きあがろうとしたその時、何かの異変に気が付かれました。

 掛け布団がぐしょぐしょに濡れていたのです。それはまるで洗面器一杯の水を寝ている上から掛けてきたとしか思えないほどだったそうです。

「誰かが入って来て水を掛けたのか。それ以外に考えられない」そう思った広崎さんは、直ぐにフロントに電話して、部屋に来るように仰いました。

 ホテルの方が来られましたが、原因は勿論分かりません。部屋の鍵は掛かっていましたし、密室状態です。もしも鍵を開けられるとしたら、ホテルの方以外に考えられません。

「お前らの誰かが嫌がらせをしたんだろ」そう広崎さんが仰いましたが、ホテルの方は、「それは絶対にないですし、何なら防犯カメラを確認してみますか?」とまで仰ったそうです。

 そうこうしている所へ、広崎さんと同じく研修の付き添いの他の社員さんが来られて、穏便に済まされたそうです。ここ数日の寝不足のせいもあり、広崎さんは少し怒りっぽくなっておられたのでしょう。

〈 「お塩、水、アンモニア臭、人の気配」…怪奇現象に悩まされ続けた男性が、旅行先の沖縄でやらかしていた“意外な出来事” 〉へ続く

(三木 大雲/文春文庫)

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