「お塩、水、アンモニア臭、人の気配」…怪奇現象に悩まされ続けた男性が、旅行先の沖縄でやらかしていた“意外な出来事”
文春オンライン / 2024年8月8日 6時0分
![「お塩、水、アンモニア臭、人の気配」…怪奇現象に悩まされ続けた男性が、旅行先の沖縄でやらかしていた“意外な出来事”](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_72648_0-small.jpg)
床に散らばった白い粉
〈 「誰かが入ってきて水をかけたとしか」…朝起きると掛け布団がぐしょぐしょに。旅行帰りの男性が悩まされた怪奇現象の数々 〉から続く
京都蓮久寺の三木大雲住職のもとには、奇妙な体験をした人、助けを求める人からの相談が、日々持ち込まれてきます。拾った白い綺麗な石を目玉だという友達、骨董市で買った不思議な絨毯、小さいおじさんを捕獲して家で飼っていると言う人――。
新刊文庫『 怪談和尚の京都怪奇譚 積徳の旅篇 』にも、日常に潜む怪異現象や不気味な出来事が数多く掲載されています。その中から、第1回はある男性が旅行から帰宅してから怪奇現象に悩まされた日々を告白した「言語道断」を紹介します。(全2回の第2回/ 前編を読む )
部屋の床に撒かれていた白い粉
その後、広崎さんは社員研修を終え、再びアパートに戻って来られました。アパートの下から自室の窓を見ても、外から見る限り異変はありませんでした。
そのまま、恐怖と不安を抱えながらゆっくりと部屋の扉を開けて、部屋中を見渡されました。しかしそこには誰の姿も気配も無かったそうです。
「良かった」そう思いながら靴を脱いで部屋に入ると、足の裏に何か変な感触を感じられました。
直ぐに部屋の電気を点けて見ると、部屋の床には白い粒々の粉が撒(ま)かれていたと仰るのです。
その粉に顔を近付けてよく見ると、どうやらお塩のように見えたのだそうです。小指に少し付けて、舌先で舐めてみると、やはりそれはお塩だったそうです。
その直後、部屋中にまた悪臭が漂ってきました。アンモニア臭です。今回は前回よりも強い臭いで、目や鼻が痛くなる程だったと仰います。
「なぜ自分がこんな目に遭わなくてはいけないのか。自分が何をしたというのか。今も部屋に帰るのが不安で怖いんです。こんな話、信じて貰えませんよね」
広崎さんはお話を終えられると、凄く疲れたご様子でした。
私はお話をお聞きしていてとても気にかかることがありました。それは、これらの現象が現れた最初のきっかけです。
広崎さんの場合、旅行から帰られてからということでしたので、私は旅行先をお聞きしました。
「もしかして」…酔っ払って用を足した場所とは?
旅行先は沖縄だったそうです。沖縄と言えば「御嶽(うたき)」と呼ばれる時別な場所があります。そこは神様の来られるお祭りの日などに、許された人だけが入ることが出来て、普段は、人間が立ち入ることが出来ない神聖な場所です。もしかすると、そこに入られたのではないか。そう思いましたのでお訊ねしましたが、そんな所には入っていませんと仰いました。
そうなると、次には起こった現象から見てみようと思いました。
「お塩、水、アンモニア臭、人の気配」私は口に出してそう言いました。すると何かを思い出されたように広崎さんは大きな声を上げられました。
「もしかして」
広崎さんは、原因はこれかも知れないとお話し下さいました。
「気心の知れた友人四人で、沖縄へ旅行に行きました。沖縄は天気も気候も良く、ついつい羽目を外してしまいました。そして、夜に居酒屋で遅くまでお酒を飲んで、酔っ払ってしまいました。友人たちは、私ほどは飲んでいなくて、友人からも注意を受けるほど、酔っ払っていたんです。
そしてそろそろ宿に戻ろうとなったその帰り道、私は尿意をもよおしたのです。そして、何処かにトイレは無いかと探しました。
そんな時、偶然にも公衆トイレを見つけたのです。私は『これは良かった』と建物に入ろうとしましたが、何故か鉄製の扉で、しかも全く開かなかったのです。仕方がないので、私はそのまま扉の前で用を足してしまいました。
そして帰る日の朝、現地のガイドブックを見て驚いたんです。私が用を足した所は、どうやらお墓だったようなのです。
友人たちも驚いて、戻って掃除をしようとも言っていたのですが、帰りの飛行機に遅刻してしまいそうなギリギリの時間でしたので、そのまま帰って来てしまいました」
そう仰いました。
直ぐに休暇届を出して沖縄に飛んだ
お塩やお水からは、沖縄を思い出すように、アンモニア臭からは、その行いを思い出すように、人の気配はそのお墓にお入りになっておられる方だったのではないでしょうか。
広崎さんは、直ぐに会社に休暇届を出して、再び沖縄に、そのお墓を掃除しに行かれました。その時、偶然、そのお墓のご家族の方がお参りに来られたようで、事の顚末(てんまつ)をお話しし、心より謝罪されたそうです。
すると、そのご家族は「お墓にご先祖様がいて下さっている証明にもなりましたね」と笑って許してくださったそうです。
悪行には、悪いと分かっていてするものと、悪いとは知らずにするものがあります。
この二つの内、早く止められるのはどちらの悪行でしょうか。
もちろん、悪いと分かっている方が、早く止めることが出来ます。しかし、悪いとは知らずにしてしまった悪行は、その行いが悪いと理解出来るまで止めることが出来ません。そうなると、その報いをいつの日か受けることとなってしまいます。
そうならない為に、自分の行いが正しいかどうかを確認しなくてはいけません。それを確認する為にはどのようにすれば良いかと言いますと、お経を勉強することだと私は思います。
悪行に気がつくことは、その人の人生において、大きな幸福の一つだと思います。
(三木 大雲/文春文庫)
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