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渋滞を悪化させているのはあなたかも? 「サンデードライバー」や「あおり運転」だけじゃない…“普通のドライバー”が意外とやりがちな「NG行為」とは

文春オンライン / 2024年8月9日 20時0分

渋滞を悪化させているのはあなたかも? 「サンデードライバー」や「あおり運転」だけじゃない…“普通のドライバー”が意外とやりがちな「NG行為」とは

写真:show999/イメージマート

 休暇シーズンの高速道路では、しばしば「挙動のおかしな車」に出くわすことがある。

 後ろの車列に構わず追い越し車線をのんびり塞ぎつづける車、やたらとブレーキランプを光らせる車、ジグザグ車線変更を繰り返す車……後続車のブレーキを誘発するこれらの動きは、「渋滞の原因」と指摘されることも多い。

 実際のところ、個人の運転はどれほど渋滞に影響しているのだろうか。「渋滞の原因になる運転」について、道路交通関連の資料をもとに考えてみたい。

◆◆◆

渋滞の4割以上は「上り坂での速度低下」から生じる

「高速道路の渋滞の原因」としてまず思い浮かぶのは、事故や故障車、インターチェンジ付近の混雑かもしれない。しかし意外なことに、渋滞の原因としてもっとも多いのは「上り坂での速度低下」である。

  NEXCO東日本の発表 によれば、2023年中に同社管内で発生した渋滞のうち、事故や工事などに起因しない「自然渋滞(交通集中)」は70%を占める。さらに自然渋滞の約60%が「上り坂・サグ部」で起きており、これは全体の40%以上になる計算だ。

「サグ部」とは道路の傾斜が下りから上りへと切り替わるポイントのことで、こうした箇所では「上り坂なのに平坦に見える」といった錯覚が起きやすい。その結果、傾斜の変化に気づかないまま速度を落としてしまうドライバーが続出し、速度低下が後続車両にも連鎖していくことで、しだいに渋滞が始まっていくわけである。

 とりわけ景色の変化に乏しく、漫然運転に陥りがちな高速道路においては、運転に慣れたドライバーでも傾斜の変化を読み違えることがある。渋滞多発地点のサグ部には、「速度低下に注意」といった標識が掲示されているので、こうした目印を見落とさずに速度をキープしていきたい。

 あるいは、自動的に車速や車間距離を保つACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を搭載した車両であれば、それを積極的に使っていくのもよいだろう。疲労を軽減するうえでも、便利な機能はどんどん使っていきたいところだ。

「合流が苦手」なドライバーほど事前の加速を十分に

 先のNEXCO東日本のデータを見ると、自然渋滞のうち3割近くは「インターチェンジ」や「接続道路」から生じていることがわかる。とくに合流部付近では、ペースの異なる車が交錯することにより、ブレーキの連鎖が起きやすい。

 合流部において減速が生じる典型的な状況は、合流車線の車がギリギリのタイミングで本線車両の前に割り込むケースだろう。とくに一般道から入ってきたばかりの車は、本線の走行ペースにまだ目が慣れておらず、距離感を見誤る可能性もある。

 運転に慣れていないドライバーや、合流に苦手意識のあるドライバーは、まず合流車線でしっかりと速度を上げておくことを意識したい。本線を走る車と近い速度まで上げながら、「この車の後ろに入ろう」と狙いを定めておけば、合流のタイミングも掴みやすくなる。

「合流ポイント手前の車線変更」が渋滞の一因に

 さらに合流部においては、自身が本線を走行しているときの動きにも注意したい。

 あらかじめ右車線に入って合流車両のスペースを空けておけば、たしかに合流時の減速は防げるだろう。しかし一方で、合流部前後においては右側の車線に車両が集中し、それが渋滞を引き起こすこともある。

 実際に、 合流部における渋滞の要因としてNEXCO東日本が挙げている のは「右車線への車両集中」である。「左車線は合流で遅くなるから」と、さまざまなペースの車両が右側に集中した結果、遅い車両の後ろに車群が形成され、しだいにブレーキの連鎖が引き起こされていく。

 空いている状況では有効な「合流ポイント手前の車線変更」だが、右側に何台も車両がいるようであれば、基本的にキープレフトが望ましいだろう。車線を移すにしても、右側の混雑状況や走行ペースについて十分に確認する必要がある。

渋滞は「一番右の車線」から始まる

 合流ポイント以外でも、追い越し車線を走りつづけることそのものが、間接的に渋滞を引き起こすこともある。

 一般に、高速道路上では右側の車線ほど交通量が増え、また速度に比して車間距離も短くなる傾向にあるため、どうしてもブレーキが踏まれやすくなる。ちょっとしたブレーキが次々に連鎖し、大きな減速を引き起こしていくことから、自然渋滞の多くは一番右側の車線から発生すると言われるのだ。

 そのため、ゆっくり追い越し車線を走りつづけることはもちろんNGだが、そもそも車が連なった状態で右側の車線をキープすること自体が「渋滞が生まれやすい状況」を作っていることになる。

 反対に、多くのドライバーが走行車線を積極的に利用することで、車線ごとのバランスが改善し、混雑も緩和していくと期待できる。実際に、 NEXCO東日本が東北道(上り)の佐野藤岡IC~館林ICにおいて実施した実験 では、LED標識などで走行車線の利用を促進した結果、車線ごとの利用率が平準化され、渋滞時間や渋滞長が軽減される効果が確認された。

 なお、あまり意識されないが、道交法上でも追い越し車線を走りつづけることは「通行帯違反」にあたる。追い越しが必要な状況以外は走行車線をキープし、追い越し後にはすみやかにもとの車線に戻ることが、法令遵守の面でも望ましい。

「車間ベッタリの車」がさまざまな混乱を引き起こす

 渋滞の原因を考えるうえで、もっとも重要なファクターは車間距離かもしれない。車間距離を十分に確保していれば、不要なブレーキを踏まずに済むし、周囲の状況も見通しやすくなるからだ。

 反対に、短すぎる車間距離はブレーキの原因になるばかりか、追突事故などのリスクを引き上げることにもなる。

 高速道路上で発生する事故の多くは追突事故であり、 2023年の警察庁発表資料 によると、車両相互事故の8割近くを追突事故が占めている。車間距離の短さや前方不注意といったヒューマンエラーが、絶望的な長さの渋滞を生むこともある。

 一般に、車間距離は「停止までに必要な距離」をキープすることが望ましいとされる。車種や天候にもよるが、高速道路上では「時速100kmで100mほどの車間距離」というように、「速度のキロ数と同程度のメートル数」がおおよその目安になる。あるいは「前走車が通過したポイントを自車が通過するまで3秒」といった測り方もある。

 高速道路上でこれだけ車間距離をとっているドライバーはおそらく少数派と思われるので、意識的に車間を開けていくことが大切だ。この点でも、個々人の主観に頼らないACCの利用は有効である。

タイヤの状態を知らないまま走る「普通のドライバー」

 運転以外の面で見落としがちなのが、出発前の点検である。 JAFの資料 を見ると、高速道路上で生じるロードトラブルの約4割がパンクやバーストなどの「タイヤ関連のトラブル」であり、去年のお盆期間(6日間)だけで723件の救援が発生している。

 このトラブルの多さは、タイヤ点検に対するオーナーの意識の薄さにも起因しているだろう。 日本自動車タイヤ協会(JATMA)によるアンケート調査 では、2019年から2020年の年末年始に長距離を運転したドライバーのうち、事前にタイヤを点検した人の割合は「38.1%」に過ぎなかった。6割以上の「普通のドライバー」は、タイヤの状態を把握しないまま長距離を運転していたことになる。

 実際に、高速道路を空気圧不足で走っているドライバーも多い。先の JATMAは定期的に各地でタイヤ点検調査を実施している が、2023年の集計を見ると、高速道路においては対象車両の「36.2%」が空気圧不足の状態だった。

 多くの車が観光や帰省に向かうなか、ロードトラブルによりポツンと道端で救援を待つ車……休暇シーズンに必ずといっていいほど目にする光景は、誰にとっても無縁ではない。

 とくにタイヤの状態は月に一度のペースで確認し、長距離移動の際の事前チェックも忘れないようにしたい。やり方がわからない場合には、ガソリンスタンドやカー用品店で実施している無料点検を利用するとよいだろう。

「渋滞を起こさない運転」は「安全運転」にもつながる

 以上のように、渋滞の原因となるドライバーの特徴として、「上り坂で速度を落とす」「右車線を走りつづける」「車間距離をとらない」といった点が挙げられる。これに加えて、車の点検不足も事故やトラブルの原因となり、混雑を悪化させる可能性があるだろう。

 もちろん個々人がどれほど気をつけていても、交通量が道路のキャパシティを超えてしまえば、渋滞の発生は避けられない。しかし一方で、ドライバーの不注意や判断ミス、あるいは「何気ない習慣」が渋滞を悪化させてしまう面も少なからずあるだろう。

 十分に車間距離をとり、なるべく左側車線を走行し、上り坂では速度をキープする……こうした運転は、必ずしも自身の到着時間を早めてはくれないが、周囲の流れを円滑にし、余裕のある安全運転にもつながるはずだ。

(鹿間 羊市)

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