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〈前駐米大使が徹底分析〉トランプが"お手本"にした90年代の政治家がいた!

文春オンライン / 2024年8月9日 6時0分

〈前駐米大使が徹底分析〉トランプが"お手本"にした90年代の政治家がいた!

狙撃されたトランプ氏 ©AFP=時事

〈それはあたかも戴冠式を思わせる風景であった。

 共和党全国大会の最終日、ドナルド・トランプ前大統領は指名受諾演説のため1時間半以上にわたり演壇に立ち続けた。それは、暗殺未遂事件からの健在ぶりを示すと同時に、共和党が名実ともに自分の党であることを誇示するものであった〉

 正式に大統領候補として指名されたドナルド・トランプについて、こう言及したのは、冨田浩司氏だ。2020年12月から2023年11月まで駐米大使を務めた人物である。冨田氏は外務省北米局長を務めた後、駐イスラエル大使、駐韓大使も歴任したベテラン外交官だ。

ポピュリスト的政治手法の“お手本”とは?

 共和党をほぼ手中に収めたトランプ氏は、アメリカ第一主義を標榜し、反・移民政策など反リベラリズムを先鋭化させることで、熱狂的支持者を集めている。長くアメリカ政治をウォッチしている冨田氏によると、こうしたトランプのポピュリスト的政治手法は、ある政治家を“お手本”にしているのだという。

〈トランプ主義の歴史的継続性は1990年代のポピュリスト運動を主導したパット・ブキャナンの政治姿勢との相似性を見ると明白だ。

 レーガン大統領のスピーチライターとして活躍したブキャナンが共和党主流派に反旗を翻した背景には、20世紀後半における米国の製造業の衰退がある。国際経済環境の急速な変化によって「取り残された人々」をターゲットとする点で、ブキャナンのアプローチはトランプ主義と軌を一にする。実際に、トランプ主義の代名詞である「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン(MAGA)」は、ブキャナンのキャッチフレーズ、「メーク・アメリカ・ファースト・アゲイン」を下敷きにしている〉

 さらにブキャナンは、NATOはもちろん、日本や韓国との同盟関係を見直すことや、移民受け入れ数の制限に加えて、国境への軍隊派遣や防御壁の建設なども政策提案していた。まさにトランプの政策を先取りしていたと言えよう。

トランプが支持を集めることができた理由

 これほど両者が似ているにもかかわらず、その違いが生じた原因について、冨田氏は問う。

〈以上の相似性にもかかわらず、ブキャナンが00年の大統領選挙でわずか0.4%の得票率で惨敗したのに対し、トランプは16年の選挙で勝利し、今また政権復帰に向けて共和党の候補者指名を獲得した。この違いはどこから来るのか。

 結論を先に言えば、トランプが自らに忠誠心を持つ熱狂的支持層、いわゆる「MAGAベース」を掘り起こすことに成功したからだ〉

 トランプを熱狂的に支持する「ベース」の多くは、中・低所得層で高等教育を受けていない人々だ。いわば、選挙で投票などしたことがない層である。こうした支持者たちが大挙して投票所に向かう破壊力は、2016年の予備選で実証されている。

〈フロリダ州の予備選を例にとれば、同州を地元とするマルコ・ルビオ上院議員は、前回12年の勝者、ミット・ロムニーに遜色のない63万票余りを獲得したが、40万票近い大差をつけられてトランプに敗北した。投票した党員数は前回に比べて約60万人増え、実に40%以上の伸びを示した。全国的にも共和党予備選の投票率は前回に比べ約5割上昇しており、「ベース」による動員力の凄まじさを示している〉

 これがトランプの強さの秘密だ。

ハリスが民主党候補になったことで様相が変わった

 だが、バイデン大統領が撤退し、ハリス副大統領が民主党候補に指名されたことで、大統領選挙の様相が変わった、と冨田氏は指摘する。

〈指名を確実にしているカマラ・ハリス副大統領の候補者としての力量はいまだ未知数であるが、バイデン撤退前に支持離れが顕在化していた、非白人、若年層の回帰に成功すれば、民主党への支持の底上げにつなげることができる。トランプから見ても、女性で、20歳近く年下の対立候補を相手にした選挙戦は全く違ったゲームとなり、戦略の練り直しが求められよう〉

 冨田氏は銃撃事件がトランプ陣営に与えた影響を分析し、支持層を拡大する機会を失った可能性にも言及している。前駐米大使がトランプ主義を徹底分析した論考「 それでもトランプ主義は強い 」は、「 文藝春秋 」9月号、および「 文藝春秋 電子版 」で全文掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年9月号)

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