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パリ五輪で英メディアはフランスに「カエルを食べる人間」と…「あまりにまずい」と酷評された選手村の食事の“実情”

文春オンライン / 2024年8月9日 17時0分

パリ五輪で英メディアはフランスに「カエルを食べる人間」と…「あまりにまずい」と酷評された選手村の食事の“実情”

オリンピック選手村のフードカウンターに立つ女性アスリートたち ©getty

〈「雰囲気はとっても親しみやすくていいんだけど、食事はダメだ」

 東京五輪の陸上100m金メダリストのラモントマルチェル・ヤコブス選手がオリンピック選手村について語った言葉だ(「Le Parisien」Web、2024年7月31日)。〉

 大食堂は3300席で1日4万食、献立の種類500以上、そして1日1000本フランスパンが消費される。運営を請け負っているSodexo Live!社の運営ディレクター、ローラン・パストゥール氏はParis2024の公式サイトで、「選手村では、食事サービスが重要な役割を果たします。エリートスポーツに適したメニューを提供し、200以上の国々からの選手たちの期待に応えることで、選手たちのパフォーマンスに貢献し、誰もが自宅にいるように感じてもらえればと思います」と抱負を語っている。

 ところが、選手村に入った選手たちから続々と不満が上がった。

「あまりにまずい」と酷評された選手村の朝食

 アメリカの砲丸投げのレーベン・サンダーズ選手は、SNSで黒焦げになった肉の串焼きのビデオを公開した。ハイチのハードルのエメリア・シャフィールド選手は「あまりにまずい」と10点満点中0点だと投稿した。ホンジュラスの競泳のユリオ・ホレゴ選手は、10時半に「朝食を食べに来たのに卵がない」と29日にフランスのAFP通信に語った。

 英国オリンピック協会は、すでに、選手村の外に自国選手のための施設をつくっていたが、その食堂に英国からシェフを増員し、そこで食べるようにした。もともと、英国のメディアは「カエルを食べる人間」だとか、フランスに対して辛辣で、評判が良かった開会式でもわざと雨に濡れる観客の姿を大きく出して「レ・ミゼラブル!」などとこき下ろしていたが、当然、ここぞとばかりに報じた。

 Sodexo Live!社は、これらの批判を「真摯に受け止め」実際の消費状況に基づいて供給を改善するとした。原料の供給はスーパーマーケット大手の「カルフール」が行っているが、急遽合計で700kgの卵と1トンの肉が届けられた。

 フランスの競泳のマリー・ワテル選手は「組織委員会は、アスリートがたくさん食べることを過少評価したのではないか」という。日本人の成人男子に必要なエネルギー量は1日2500キロカロリーといわれているが、水泳選手は5000キロカロリー必要である。

 オリパラ組織委で食堂担当責任者のフィリップ・ヴュルツ氏は「最初にサービスにしたとき、アスリートが動物性タンパク質に群がるので驚きました」と認めた。一人あたり一日900gの肉を消費するので、注文を4倍にふやしたという。(「Le Parisien」Web、2024年8月1日)

デザートやパティスリーの評判はいいものの…

 一方で、フランスのホッケーのティモテ・クレマン選手はフランスの民放TF1で「健康的な食事をしようと思うのなら、できる。フランス料理、アジア料理、ハラール料理、そして世界中のたくさんのスタンドがある」と言う。「生野菜、白身パスタ、全粒パスタ、米、赤身の肉、鶏肉など、本当に何でも見つけることができる。そして、ソースを追加したい場合は、自分の好きなものが選べる」

 ドイツの柔道のミリアム・ブトケライト選手は、「たしかに(メイン食堂では)10分から15分待たなければならないが、アジアの部門に行くともっと早くておいしい」と話す(「Le Parisien」Web、2024年7月31日)。まあ、フランスまで来て、わざわざ焼きそばや餃子、インドカレーを食べよう、というのもおかしな話だが。

 クレマン選手によると、朝食もボリュームたっぷりで「伝統的なバゲット・ア・ラ・ミニット、パン・オ・ショコラのようなペストリーがあるパン屋がある。ランチタイムや夕方も同じで、選択肢に事欠かない」

 たしかに、デザートやパティスリーの評判はいいようだ。フランスでは、朝食には甘いものだけで、卵などは食べない。そういう違いもあったのかもしれない。

 英国選手団が「肉が生だった」とクレームをつけているが、フランスと英国の焼き方の違いもあったのだろう。ふだんでもフランスのレアは英国人には「生」だといわれるし、英国で「レア」を頼むとかなり焼かれていてがっかりする。

 アメリカの体操の金メダリスト、シモーネ・バイルズは「フランス料理じゃない」と批判した。ミシュランの星付きシェフが献立を作る、というのを目玉にしていたが、1日600食だけで、すぐなくなってしまうのだとか。そもそも、フランス料理に幻想を持っていたのではないか。日本のテレビでもフレンチのシェフがよく出てくるが、フランス在住の筆者からすると、あんなお洒落な料理はふだん町で食べているものではない。

 ちなみに、バイルズは26日にスーパーマーケットで買ったチョコレートパンを食べているところを投稿していた。そこで31日、「リベラシオン」紙の記者が「もっとおいしいものがある」と町のパティシエが作ったパンやクッキーを届けた。

 Sodexo Live!社は、フランスの大手国際企業Sodexoの子会社だが、普通の社員食堂やイベント、見本市の感覚でおこなったのではないか。選手たちは、闘いに来るのだ。その根本的なことを忘れてしまっていたのではないか。アスリートの食事というものをそもそも見誤っていたのではないだろうか。一食一食が勝負だ。普段の練習中に何を食べていたかが結果にあらわれる。自転車のツール・ド・フランスでは、選手は朝食にステーキを食べていた。負けた選手に聞くと「何月何日にあれを食べたのがまずかった」と話していた。

 運営会社は、「選手村で提供される献立は、Paris2024で定められた仕様を満たしており、数カ月前にパリ2024とIOC(国際オリンピック委員会)のお墨付きをもらいました」という。

 オリ・パラ組織委員会のエティエンヌ・トボワ事務総長はさまざまな苦情が寄せられたことを受けて、29日に「タンパク質が豊富な」食品を強化したと発表した。

 事前のプレス向けの公開での説明では、「献立の半分はヴェジタリアン」と得意げに話していた。牛のゲップは大きなメタンガス排出源で、また草を大量に食べることもあって、いま目の敵にされている。「地球にやさしい」オリンピックをめざすので、こういうものは控えめにしたのだ。植物由来のタンパク質をアスリートたちに知ってもらうことを期待していたが、アスリートたちは明らかに「本物の食事」を好んだ。

冷房問題も…根負けして2500台のエアコンを注文

 選手村の建物の冷房問題と根は同じだ。環境保護からあえてクーラーは入れない。床の冷水管で外気温よりも6度低くなるから大丈夫という。だが、各国が自分でエアコンを調達し、これでは、金持ちの国とそうでない国の差別になってしまうと、7月初め組織委員会も根負けして2500台のエアコンを注文した。

 食事の内容については、IOCを通じて、選手委員会である代表団と事前に何度も話し合いがおこなわれてきたという。一体何を話し、何を考えていたのだろう。まあ、アスリート・ファーストといいながら、別のところに話が行っているのが、いまのオリンピックなのだが。

〈 パリの仮設トイレは「チラ見え」「外から丸見えも」…臭くて不衛生なトイレが撤去された後の“フランス人の本音” 〉へ続く

(広岡 裕児)

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