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パリの仮設トイレは「チラ見え」「外から丸見えも」…臭くて不衛生なトイレが撤去された後の“フランス人の本音”

文春オンライン / 2024年8月9日 17時0分

パリの仮設トイレは「チラ見え」「外から丸見えも」…臭くて不衛生なトイレが撤去された後の“フランス人の本音”

サニゼットの個室の中

〈 パリ五輪で英メディアはフランスに「カエルを食べる人間」と…「あまりにまずい」と酷評された選手村の食事の“実情” 〉から続く

 パリで困るのがトイレ。日本なら、駅には必ずあるし、コンビニもある。ところが、パリにはない。かつては街に有料トイレがあって入口におばちゃんが座っていたものだが、いつの間にか消えてしまった。カフェに入ってコーヒーでも頼むしかない。

 大きなデモがあると、コース周辺の路地には明らかに犬のものとは違う液体の跡がいたるところに残り、「音楽の日」など街を挙げてのイベントの翌朝のメトロのホームではアンモニア臭がただよう。

 それなのに、オリンピックをめがけて大量の観光客が来たら?

何十年も続く「パリのトイレ問題」

 パリの歩道にはかつて緑色の鉄製の小用トイレがあった。「ヴェスパジアン」というのが正式名称だが、真ん中に太い柱があって2人が対面するように、そこに向かって立つ。その背中を覆うように半円形の鉄板があることからカタツムリに似ているということで、「エスカルゴ」と呼ばれた。臭くて不衛生なので、撤去され、いまでは14区のサンテ刑務所の横に一つだけ残っている。もう遺跡のようなものであまり使う気にはなれない。

 これにかわって1981年からキャビン型のトイレができた。これが、「サニゼット」である。エスカルゴは外側が半円形の鉄板で囲ってはいるが、「サニゼット」は電動式の扉がついた完全密閉の個室である。

 ストリートファニチャや野外広告の大手JCDecauxが公共役務の民間委託方式で受託・設置し、1フラン(当時30円程度)の有料であった。昔からパリの公衆便所は有料であったのでそういう発想になったのだろう。ただ当時のカフェのカウンター立ち飲みコーヒーも同じぐらいの値段だった(ちなみに、いまも大きなターミナル駅には有料トイレがあるが、1ユーロでコーヒー代より少し安いだけ)。それに、1回終わると便器ごと洗浄される。前の人が出たと思っても洗浄・消毒に時間がかかり、自動ドアもゆっくりなので、ずいぶんイライラさせられたものだ。また、故障しているものも多かった。

 トイレの壁の広告収入と利用料で、パリ市はお金を出さなくてもいいという皮算用があったのだが、そうはいかず、パリ市は2003年には当時のレートで毎月約15万円の補填をしていた。そういうわけで、試験的にいくつかの「サニゼット」を無料にしたが、「無料のところのほうが、他よりも問題が少なかった」ということで2006年から全面的に無料になった。 

 使用効率を上げるために、外に男性小用を加えたものができた。たしかに、待ち時間が減り、使い勝手が飛躍的によくなった。といっても、改修は遅々として進まず、パリ市全体で50カ所だけだった。

 そこに、オリンピックである。男性小用をはじめから組み入れた最新型がつくられた。

最新型トイレと情報アプリが登場

 最新式は、パリ市の発表によれば、現在の設備と比較して水の消費量がほぼ3分の2、電力の消費量が3分の1削減され、100%再生可能エネルギーがつかわれているという。また、内部の洗浄消毒時間も短縮され、待ち時間は従来の3分の1の30秒になった。

 パリ市は、435個の「サニゼット」があり、今年の2月から順次交換し、7月までにそのうち150カ所が最新型になったとしている。まるで前から435あったような書き方をしているが、増設したものもある。実際、エッフェル塔の近くなどでは5月頃、前になかったところに設置されて「7月1日から使用可」と書いてあるものがあった。

 この他に、公園などで、男性小用を含めて300を超えるトイレがあるから十分対処できるという。

 またオリンピック期間を前に、「Ici Toilets(ここがトイレ)」というアプリケーションが導入された。地方のスタートアップ企業が開発したもので、トイレを貸してくれる商店などにトイレットペーパーの購入資金として地方自治体が負担する月額120ユーロが支給される。すでに地方都市で実績があり、観光省の外郭団体のプロジェクトに選ばれた。だが、6月から始まった実際のサービスを見ると、加盟店は少なく、カフェやレストランばかり。「サニゼット」の位置が分かるのは便利なのだが、それなら前からパリ市のホームページで見られる。

仮設トイレも続々と設置されたが…

 パリの郊外にある、7人制ラグビーや陸上競技、閉会式がおこなわれる8万人を収容するスタッド・ド・フランスではスタンドの前の広場の随所に臨時トイレがつくられていた。中には、トイレの壁に向かって男たちが並んでいるところもあった。集団立小便ではない。外壁に便器が並んでいるのだ。なお、オリンピックに合わせて各国の催し物が行われているパリ市のヴィレット公園にも外から丸見え型のトイレがあった。ここに使われた鉄板に水を流しただけの間仕切りのないトイレは、ちょっと洒落たカフェでも時々見かけることはある。このあたり、あまり気にしないようだ。

 スタジアムに向かう駅前にも仮設トイレがつくられた。男性小用に並んで、女性用もある。便器に接触せずに立ったままできるタイプで、便器と接触しないので衛生的なのだという。行列も減らせる。男性用よりも扉が大きく、使っている人の顔がみえないようになっている。こういうピクトグラムが必要だっただろうか、という気もするが……。

 開会式のためには、30万人の観客用に1400個の仮設トイレがつくられた。(VIPや高い席の人は近くの博物館や会館などと協定を結んで使えるようにした)。観光客も多いセーヌ川沿いだから、そのまま残すのかと思ったら、跡形もなくなった。

写真=広岡裕児

(広岡 裕児)

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