1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「一番うれしいのは納税できること」日本最大の企業・トヨタが5年間法人税ゼロだった“巧妙なカラクリ”

文春オンライン / 2024年8月22日 6時10分

「一番うれしいのは納税できること」日本最大の企業・トヨタが5年間法人税ゼロだった“巧妙なカラクリ”

写真:akiyoko74/イメージマート

〈 なぜ日本だけ世襲議員が多いのか…政治家に悪用されブラックボックス化する「政治団体」の実態とは 〉から続く

 国家は税によってつくられ、税がつくられると必ず発生する脱税。「大化の改新」「源平合戦」「織田信長の延暦寺焼き討ち」そして現代に至るまで、歴史の大きなターニングポイントの裏には必ずといっていいほど脱税が絡んでいた。思わぬ事実に目からウロコ。脱税の視点で日本史を読み解く『 脱税の日本史 』(宝島社)より一部抜粋して紹介します(全3回の3回目/ 最初 から読む)

トヨタは日本でほとんど税金を払ってない

 日本最大の企業というと言わずと知れたトヨタ自動車です。

 令和6(2024)年3月期の連結決算でも、日本企業で過去最高となる5兆円を超える利益を計上しました。

 にわかには信じられない話かもしれませんが、別に極秘ニュースでも何でもなく、トヨタの会計データを見れば誰でも確認できる事実なのです。

 まず、トヨタは平成20(2008)年から5年間も法人税を払っていません。この5年間、トヨタは決して景気が悪かったというわけではありません。この間に、トヨタは最高収益を更新しているほど儲かっていたのです。

 トヨタというのは、よくも悪くも現在の日本企業を象徴するものです。

 トヨタが5年間、法人税を払っていなかったのも、昨今の日本経済や税制を象徴する現象だったのです。

 平成26(2014)年3月期の決算発表の際に、豊田章男社長が衝撃的な発言をしました。

「一番うれしいのは納税できること。社長になってから国内では税金を払っていなかった。企業は税金を払って社会貢献するのが存続の一番の使命。納税できる会社として、スタートラインに立てたことが素直にうれしい」

 この言葉の意味がよくわからなかった人も多いはずです。

 日本最大の企業が、日本で税金を払っていなかったというのです。

 ここでいう税金というのは、法人税と事業税、法人住民税の一部のことです。

 これら三つの税金は、事業の収益に対して課せられるものです。つまりは、黒字の企業に対して、その黒字分にかかってくる税金です。

 平成21(2009)年から平成25(2013)年までというのは、リーマンショックと大震災の影響などがあり、確かに業績のよくない企業は多かったのです。

 しかし、トヨタはそうではありませんでした。この5年間で、トヨタはずっと赤字だったわけではありません。近年赤字だったのは、リーマンショックの影響を受けた2010年期、2011年期の2年だけです。それ以外の年はずっと黒字だったのです。

 それにもかかわらず、なぜトヨタは平成21(2009)年から平成25(2013)年まで税金を払っていなかったのでしょうか?

 実は、そこには巧妙なカラクリがあるのです。

 そして、そこに、日本税制の最大の闇が隠されているのです。闇というのは、近年の日本の税制が、大企業を中心に設計されてきたことです。

 その象徴的な出来事がトヨタの「5年間税金なし」なのです。

トヨタ優遇税制の数々

 トヨタが、税金を払っていなかった最大の理由は、「外国子会社からの受取配当金減税」と「試験開発費減税」が行われたからです。

「外国子会社からの受取配当金減税」とは外国の子会社から配当金を受け取った場合、その95%は課税対象からはずされる、というものです。これは、現地国と日本で二重に課税を防ぐ、という建前でつくられた制度です。

 外国子会社からの配当金は現地で税金が源泉徴収されているケースが多く、日本でも課税すれば二重課税になるという理屈です。

 しかし、二重課税を防ぐのであれば、外国で払った税額を控除すればいいだけです。実際に以前はそうされていました。

 ところが、平成20(2008)年からは外国で支払った税金を控除するのではなく、外国子会社からもらった配当金そのものを所得から控除できることになったのです。

 これにより、外国で支払った税金が日本の法人税よりも安ければ、その分、企業が儲かることになったのです。そのため、タックスヘイブンのような税金の安い国に、子会社を設け、その子会社に利益を集中させるというような企業も増えました。

 そして、トヨタが税金を払わずに済んだもう一つの減税、 「試験開発費減税」にも触れておきましょう。

 平成15(2003)年に導入されたこの減税は、製造業の大企業に大きなメリットがあります。

 試験開発費の減税というのは、簡単に言えば、「試験開発をした企業はその費用の10%分の税金を削減しますよ」という制度です。限度額はその会社の法人税額の20%です。

 これを大まかに言えば、製造業の大企業の法人税が20%も下げられたのです。減税対象がかなり緩く設定されているので、製造業の大企業のほとんどは対象となりました。

 試験開発費による減税額は、2023年度に7636億円にも達しています。そして、7636億円の減税額の65%を、日本企業全体の0・2%の大企業が享受していたのです。

 紛れもなく、トヨタなどの大企業のための減税策なのです。そのため、トヨタは平成20(2008)年から5年間も法人税を払わずに済んだのです。

(大村 大次郎/Webオリジナル(外部転載))

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください