【被害者には9歳の女の子も】“処女とする”ため12人の若い女性を殺害…狂気の犯人男に妻はなぜ協力した?
文春オンライン / 2024年8月10日 17時0分
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処女とすることを願望に持つ夫。そんな「彼の恐るべき計画」に、なぜ妻は協力したのか…? 写真はイメージ ©getty
被害者のなかにはわずか9歳の女の子も…。己の残忍な欲望を満たすため、12人の若い女性を強姦・殺害したフランスの連続殺人犯、ミシェル・フルニレ。「処女としたい」という身勝手な欲望を叶えようとする彼を、妻も支えた“恐るべき理由”とは? 新刊 『世界の殺人カップル』 (鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編を読む )
◆◆◆
フランスの残虐非道のシリアルキラー
1980年代後半を中心に、フランスで残虐非道の限りを尽くしたシリアルキラーがいる。ミシェル・フルニレ。処女信仰に取り憑かれていた彼は、妻のモニク・オリヴィエとともに若い女性12人を誘拐・強姦・殺害し「アルデンヌのオーガ」の異名を取った。オーガとは残忍な性格で容赦なく殺人を犯す、ヨーロッパ諸国の伝承に登場する人形の怪物である。
ミシェルは1942年、フランス・アルデンヌ県スダンで、金属加工業の父親と専業主婦の母親の次男として生まれた(兄が1人、妹が2人)。その生い立ちは不明ながら、後に本人が精神科医に語ったところによれば、4歳のころから母親に近親相姦を強制され歪んだ性格を形成したという。両親の離婚後、彼を引き取った父親は重度のアルコール依存症で一切の育児を放棄する。
荒すさみきった環境下、ミシェルは学校でも同級生の持ち物を盗むなど問題行動を繰り返し、その手癖の悪さは成人になっても変わらなかった。大工の職に就いていた1964年に結婚したものの、2年後も窃盗と暴行の容疑で逮捕、実刑判決をくらう。呆れた妻に見捨てられ、1970年に別の女性と再婚。しばらくはまともに暮らしていたが、1984年に5人の少女を強姦し懲役5年の判決を下される。
この一件で2番目の妻とも離婚することになったミシェルは獄中から雑誌に「孤独を忘れるため、年齢を問わず誰とでも文通したい」とのハガキを出し、文通欄に掲載される。これに目を止めたのがモニク・オリヴィエ(1948年生)だ。2人は当初、手紙とのやり取りだけだったが、モニクが幾度も刑務所へ面会に訪れたことで仲が急接近。
1987年10月の仮釈放後に結婚しヨンヌ県サン・シル・レ・コロンに居を構えた。
ここで、ミシェルは文通でも明かしていた己の強い願望を改めてモニクに話す。処女に凌辱の限りを尽くしたい。理解しがたいが、彼は10代後半から処女を犯さなければ生きていけないという強迫観念にとらわれていた。対してモニクは夫の欲望を満たすための協力を買って出る。ミシェルに惚れていたことは当然として、彼が口にした提案が大きかった。犯行に加担すれば元夫を殺してくれるというのだ。モニクはミシェルと出会う前に、自分に酷いDVを働いた夫と離婚しており、いつか復讐することを誓っていた。それをミシェルが代わって果たしてくれるなら、願ったり叶ったりだ。
こうして夫妻は犯行を開始する。1987年12月11日、ヨンヌ県オセールで高校から帰宅途中のイザベル・ラヴィル(当時17歳)がさらわれた。彼女は2日ほど前から夫婦が狙っていたターゲットで、このときモニクは車で家まで送ってあげると彼女を同乗させ、別の場所で車が故障したふりをしながら待機していたミシェルのもとに直行。
手助けを装い車から降りたところでミシェルがイザベルを強引に自身の車に乗せ、モニクとともに自宅に向かう。そこでミシェルが何度もレイプした後に首を締めて殺害。遺体を自宅から20キロ離れた井戸の中へ投げ捨てた。イザベルの遺体はその19年後、2006年7月に発見されている。
イザベルが処女だったか否かは定かではないが、1988年4月に殺害された2番目の犠牲者、ファリダ・ハンミッシュ(同30歳)は違った。同年3月、ミシェルの刑務所仲間でその時点でも服役中だった男から、俺の妻と一緒に財宝を運び出してくれとの依頼があった。なんでも、フォントネー・アン・パリの墓地にイタリアのギャングが強奪した50万フラン相当(約1千100万円)の金品が隠されているという。にわかには信じがたいが、ミシェルがこの話を見過ごすわけがない。そこで彼は実際にあった金品を独り占めにし、男の妻を殺害してしまう。彼女こそがファリダだったことは言うまでもない。
大金を手に入れたミシェルとモニクは同年6月、アルデンヌの森に建つソトゥ城を購入する。フランスには古城物件を紹介する専門の不動産屋があり、城を自宅にすることも珍しくなかったが、ミシェルとモニクは以降、ここを舞台に犯行を続けていく。
「私には恋人がいます」と言った相手を絞殺
1988年7月8日にマリー・アンジェル・ドメス(同18歳)、同年8月3日にファビエンヌ・ルロワ(同20歳)が犠牲になった後、モニクがミシェルとの子供を出産。彼らは生まれたばかりの我が子までも犯行に利用する。1989年1月、当時21歳のジャンヌ・マリー・デラモーは夜行列車で、ポールとピエネットという偽名を使ったミシェルとモニクに出会った。2人は愛想が良く親切で、連絡先を交換し別れた。2ヶ月後の3月、彼女は夫婦から連絡を受ける。あなたのような良いお嬢さんに、ぜひ私たちの赤ちゃんの子守をしてほしいのだという。
ジャンヌは即答せず、同月18日に駅で夫婦と落ち合い、誘われるまま彼らの自宅へと向かう車に乗る。森に囲まれたソトゥ城に入り、彼女は不吉な予感を覚えた。それは間違っていなかった。いきなりミシェルが「君は処女か?」と聞いてきた。平静を装い「いえ、私には恋人がいます」と答えるジャンヌ。途端にミシェルは激昂、粘着テープで彼女の体をテープで縛ったうえで凌辱し、事を終えると容赦なく絞殺した。
この後、夫婦は1989年12月20日にエリザベート・ブリシェ(同12歳)、1990年5月16日にジョアンナ・パリッシュ(同20歳)、同年11月21日にナターシャ・ダネ(同13歳)、1993年12月18日にリディ・ロジェ(同29歳)をソトゥ城で魔の手にかけ、遺体を自宅敷地内や近隣の森に遺棄する。一方、警察はそれぞれの家族から失踪届を受けていたものの、彼女らに目立った共通点はなく、ましてや同一犯により殺害されているとは考えもしなかった。ちなみに、1989年12月に殺害されたエリザベートが誘拐されたのはベルギーで、行方不明者が他国にまたがっていることも捜査を撹乱させる要因となった。
「全身を野生動物に食いちぎられていた」
ただ、ミシェルとモニクは危険を察したのかその後、ソトゥ城を保持したままベルギーに転居し、7年間鳴りを潜めてから、2000年に犯行を再開。同年5月16日に高校から帰宅途中のセリーヌ・セゾン(同18歳)を誘拐、強姦・殺害した挙げ句、ベルギー国内の森に遺体を捨てる。翌2001年5月5日にはフランスに戻り、地元の図書館で知り合ったタイ出身のマナンヤ・トゥンポン(同13歳)をソトゥ城に連れ込み強姦し絞殺。彼女の遺体は翌2002年3月に発見されたが、全身を野生動物に食いちぎられていたそうだ。
そして2003年1月9日、最後の犠牲者となるエステル・ムーザンが殺される。死亡時、彼女はわずか9歳だった。
〈 「母から受けた性的虐待、父親のアルコール依存症もすべて作り話」己の欲望を満たすため12人の若い女性を殺害…「狂気の殺人カップル」の最後 〉へ続く
(鉄人ノンフィクション編集部/Webオリジナル(外部転載))
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