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ビキニの上からシャツを羽織り…パリ五輪スケボー・銀メダルの開心那(15)のセンスがずば抜けていたワケ〈身長20cmアップ〉

文春オンライン / 2024年8月7日 17時0分

ビキニの上からシャツを羽織り…パリ五輪スケボー・銀メダルの開心那(15)のセンスがずば抜けていたワケ〈身長20cmアップ〉

銀メダルの開心那 ©JMPA

 パリ五輪のスケートボード・女子パークの決勝が行われ、15歳の開心那(ひらきここな)が2大会連続となる銀メダルを獲得した。東京五輪の金メダリスト四十住さくらは予選敗退、五輪初出場で予選3位だった16歳の草木ひなのは、3回ともに空中技で失敗し、8位となった。

タイトなウェアで優雅な滑りを披露した開

 3年前、12歳で臨んだ東京五輪の姿から大きく成長し、長髪を靡かせ、スラッとしたモデルのような体型で、他とは一線を画すトリックを繰り出した開。タイトなウェアに身を包むことで、優雅な滑りはさらに強調されていた。

 開は、北海道虻田郡倶知安町で生まれ、苫小牧市に在住。5歳でスケートボード競技を始め、札幌にある室内スケートパーク、HOT BOWLに通う生活を送るのだが、ここでの生活が今の彼女を作り上げたといっても過言ではない。

 当時10歳ながら7位に入賞し、世界的に名前を知られるきっかけとなった、2018年の中国開催の「VANS PARK SERIES」。

 他の選手と比べて、かなり年齢が低いこともあり、現地のスタッフにも可愛がられたのだが、当時彼女の着ていたTシャツに書かれていたメッセージが「49% MOTHER FUCKER 51% SON OF A BITCH」だった。

 わずか10歳の少女が言葉の真意まで理解して着ていたわけではなかったと思うが、もともとストリートカルチャーをルーツに持つスケートボードコミュニティにおいては「お前、そのTシャツクールだな!」と笑って受け入れてもらうことができ、コアな世界へと入り込んでいったんだそう。

 スケートボードの世界ではスキルはもちろんなのだが、それ以上に“個性”が重要だということがわかる。「上手いよりもカッコいい」そのセンスがずば抜けていたのだろう。

 開をサポートし遠征に帯同していたMBM park builderの木村將人さんは楽しそうに話す。

「心那は天才だね。一生懸命やるとかじゃなくて、本当にスケートボードが好きでやってて、カッコいいことをしている。他にも名だたるスケーターはいるけど、だいたいケガをしてる。でも心那は骨1本折ったことないんじゃないかな。才能もあるし、センスもある。母ちゃんもすごく熱心だよね」

「上手さ」ではなく「カッコよさ」を貫いたワケ

 彼女を一言で表すなら「スタイル」という言葉に集約することができる。これはスケートボードコミュニティの中で、長年コンテストでの順位以上に大切にされてきた「個性」に当たる部分。開はその芸術点が際立って高いのだ。

 多くのスポーツでは、“勝つため”のトリックを練習するのが普通だろう。

 だが彼女はそこにこだわっていない。よく開の滑りの特徴として挙げられるのが、トラックと呼ばれるT字型の金属を使ってリップ(コース最上部の縁の部分)をゴリゴリと削る「ノーズグラインド」の完成度の高さと、空中に跳び上がって回転する「エア」で勝負しない2点。ただ女子パークにおいてエアの技「540」は、長年“勝てる”トリックと言われている。

 実際に金メダルに輝いたアリサ・トルーがわずかな差で勝てた最大の要因は、エアの「540」を徹底的に磨き上げ、バリエーション豊かにランを構成したからである。銅メダリストとなったスカイ・ブラウンもエアトリックに特徴のある選手だ。

 ではなぜ開は「エア」で勝負しないのか。それは彼女が追求しているものが「上手さ」ではなく「カッコよさ」にあるからだ。

「ノーズグラインドは地元で滑ってるお兄さんの得意技で、その人に教えてもらいました。技の難易度以上にスタイルを重視してる人たちが多いんです」

 そういった先輩たちの姿に影響を受け、技を磨いてきたのだ。なりたい自分像はスタイルのあるライダー。「あの技の点数が高いから練習しよう」ではない。それよりもトリックチョイスやコースの使い方の方が重要であり、己の美学として貫いていると言うわけだ。

 これは個人的見解ではあるのだが、彼女ほどのスキルがあれば「540」も練習すれば習得できるのではないかと思っている。でもあえてやらないし、やりたいとも思っていないはず。

 もちろん勝ちたい気持ちは当然あるだろう。でも勝てるような技を出して、王道の勝ち方をしたいのではなく、あくまで自分のスタイルで勝ちにいく。だからこそ彼女は玄人受けするし、ジャッジングにも影響を及ぼしているのではないか。

 さらに彼女は自らの武器をより鋭いものにする努力も怠っていない。

優雅に流れるようにトリックをこなしていたワケ

 今回のランを見ると、豪快ではなく優雅。流れるようにトリックをこなす姿が印象的だった。聞けば食生活までしっかりと考えたトレーニングをしているからだという。

 スケートボードを競技として考えた時に、どうしても脚力が必要になってくるが、そこをただストイックに鍛えて脚を太くさせるようなことはしていない。髪の毛が長いのも、ビキニの上からシャツを羽織るファッションもそう。見られ方においても常に努力してる証拠なのだ。

 またそこはスポンサーを見てもよくわかる。大手一般企業が少ないのだ。それも自らがカッコいいと思ったブランド以外スポンサーはいらないというスタンスからなのだという。多くの選手は活動費や自らのPRのために契約を結ぶことが多いが、その選択は自らの客観的イメージに大きく影響する。

 そこも頑なに自分を貫き通しているのだ。

 将来の夢はスケートボードの本場であり、発祥の国であるアメリカに自分の家を持つこと。純粋にアメリカでスケートボードをすることに憧れ、世界的にカッコいいスケーターになりたい、自分のシグネチャーモデルを出したいとはっきり答えているところに、開の魅力のすべてが集約されていると思う。

 最近の彼女を見ているとこんなことを感じてしまう。

「このスタイルで結果が出たら、スケートボードって最高にクールなものになるよな」

 4年後に彼女が黄金に輝くメダルを手に入れた時、日本のスケートボードシーンはより高みへと足を踏み入れているに違いない。

〈 「日本選手の両親とも仲が良く、一緒にご飯を…」スケボー・金メダルのアリサ・トルー(14)を陰で支えた日本人母の姿 〉へ続く

(吉田 佳央)

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