父は息子と正面から向き合わない、妹は出ていきたがっているが…軽度の知的障害を持つ男性が“家族に与える影響”
文春オンライン / 2024年8月9日 11時0分
奥野瑛太さん
「最初に台本を読んだ時、『これ、心平が主人公の必要ありますか?』って思わず聞いてしまいました。お話の中心に描かれているのは確かに心平ですが、ある意味、彼の話じゃない。心平を取り巻く人々、彼の妹や父親の物語だと、強く感じたんです」
個性的な風貌とアクの強い演技で、一度見たら忘れられない強烈な印象を残す俳優の奥野瑛太さん。このたび、山城達郎監督による2作目の映画『心平、』で、軽度の知的障害を持つ主人公・心平を演じる。
この難しい役どころを演じるにあたっては、「最終的に専門家に入っていただき、表現に作為的な間違いがないよう、動作や言葉などを一つ一つ確認してもらいました。心平の描き方に、脚本上の都合を持ち込み過ぎることが嫌でしたので」と、慎重に語る。
「作品上でも役柄上でも、利己的にならないように関わりたいという気持ちがあります。そして、なるべく求められているものに応じながら、自由に演じたい。このスタンスは、どんな役でも変わりません」
2014年、福島県の小さな村。心平は、兼業農家の父・一平(下元史朗)と妹のいちご(芦原優愛)との3人暮らし。原発事故の影響で農業を出来なくなって以来、職を転々とし無為な日々を送っていた。
人けのない町や、草が茂った田んぼの中の道を、心平は歩く。あるいは自転車で風を切って走る。何でもないのに心揺さぶられるシーンが続く。
「ロケはすべて福島県で行いました。劇中はあれから3年後ですが、実際には10年以上の月日が経っています。でも、まだ立入禁止区域はあり、転覆してそのままの船もある。圧倒的な現実がそこにはあって……ことさらにそれを強調している作品ではないですが、福島に行って撮ったことには意味があったと思います」
そんな中、心平の父は、普通の成人男性とは違う息子を大切にしながらも正面からは向き合おうとしない。妹はしきりと兄の自立を促すが、自分こそ、ここを出ていきたいと強く思っている。どこかギクシャクした家族の態度に気づいているのかいないのか、心平は大きな目を輝かせながら、今日も出掛けていく。傘屋の娘のもとへ、フェンスの向こう側にある無人の家々へ――。
「震災があって、事故が起きて、村の景色や人々の暮らしは変わってしまった。家族の未来や希望も潰えてしまった。だけど、心平は変わらないんです。その存在も、心のありようも。変化は人が生きている以上、仕方のないことですが、ずっと変わらないということも同じくらい価値があると僕は思います。誰よりも純真無垢な彼の行動が、2人にどんな影響を与えるのか。それをぜひ見てほしいですね」
おくのえいた/1986年生まれ、北海道出身。大学在学中からインディペンデント映画や小劇場で活動を始める。『SR サイタマノラッパー』(09/入江悠監督)のMC MIGHTY役で注目を集め、シリーズ3作目『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)で映画初主演。以後、数多くの映画やドラマに出演。
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映画『心平、』(8月17日公開)
新宿K's cinemaほか全国順次ロードショー
https://shinpei.jp
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年8月15日・22日号)
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