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築50年風呂なし共同トイレのアパートの一室が映画館に…狭すぎる空間が産んだ他ではゼッタイ味わえない“圧倒的没入感”

文春オンライン / 2024年8月13日 6時0分

築50年風呂なし共同トイレのアパートの一室が映画館に…狭すぎる空間が産んだ他ではゼッタイ味わえない“圧倒的没入感”

現在は15席で営業しているが、30席程度までは増やせるという。 ©芦部聡

〈 初めての劇場運営、離れていた常連たち…窮地のキネ旬シアターを救った“映画を愛するスタッフたち” 〉から続く

「商店街の喫茶店やお食事処はもちろん、最近オープンした書店“本町文化堂”とハシゴしてくださるお客様が多いです」(高水さん)

 座席数が数十席というミニシアターは珍しくないが、アパートの一室をリノベーションした映画館となるとシネマ203をおいて他にない。スクリーンは縦180センチ、横270センチほどだが、椅子との距離が近いので没入感は十二分だ。

「北ぶらくり丁会館は、もともと昭和40年代に建てられた商店主向けの風呂なし、共同トイレのアパートでした。生活様式の変化とともに空室が増え、老朽化も進んで廃墟のようになっていた建物に、地元の情報を発信するフリーペーパーの編集部が発足したのがきっかけで、クリエイティブな人たちが集まる梁山泊のような拠点になったそうです」

 主宰者の高水(こうすい)美佐さんは和歌山出身で、大学入学を機に上京。卒業後はアンゲロプロス監督作品などを日本に紹介したフランス映画社に入社し、映画配給の仕事を学んだ。

どうしてアパートの一室が映画館に……?

「家庭の事情で12年ほど前に和歌山に戻りました。和歌山大学の職員として勤務するかたわら、地元で開催した映画祭に協力して、北ぶらくり丁会館近くの本町公園にスクリーンを設置して野外上映のイベントをしたり、不定期の自主上映会をやっていました。1400万人が暮らす東京都のミニシアターでの1作品あたりの平均的な集客数を、人口35万人の和歌山市と対比させると、400人ぐらいが和歌山市での潜在的な集客数だろうと計算していましたが、1日限りの上映でも200人ぐらいのお客様が来てくれた。でも、イベント上映では瞬間的に盛り上がることはあっても、映画ファンを育てることはできない。やはり常設の映画館をつくらなければ、持続性は生み出せないんです」

 だが、映画館の適正キャパは20人程度だろう。そこで高水さんは10年前から仕事部屋として借りていた203号室を映画館にしてしまうアイデアを思いついた。

「どうすれば400人のお客様を取りこぼさずに当館に足を運んでいただけるか、試行錯誤の日々です。ひとりひとりのお客様に向き合って、丁寧に作品を届けていきたいと思っています」

《映画の後で》「商店街の喫茶店やお食事処はもちろん、最近オープンした書店“本町文化堂”とハシゴしてくださるお客様が多いです」(高水さん)

INFORMATIONアイコン

シネマ203
和歌山県和歌山市中ノ店北ノ丁22
北ぶらくり丁会館203号室
☎:090-8172-7074
HP: cinema203.com
座席数:15席
オープン:2023年10月

〈 「いい年かもしれませんが、まだ怒りの感情は忘れていない」息苦しい社会に染まらず、抗議の一石を投じる大人の映画館 〉へ続く

(芦部 聡/週刊文春CINEMA 2024夏号)

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