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400万で売れたと思ったら…「残念ですが、お取引はできなくなりました」相続した祖父の家が抱えていた“まさかの問題”とは

文春オンライン / 2024年8月16日 11時0分

400万で売れたと思ったら…「残念ですが、お取引はできなくなりました」相続した祖父の家が抱えていた“まさかの問題”とは

写真はイメージ ©AFLO

 祖父が遺したのは、築75年のボロい一戸建てだった……。作家の高殿円さんは、相続した父と叔父に代わって“負動産”を売りに出すことに。しかし「売れない」という大きな問題にぶち当たってしまう。

 ここでは、高殿さんの実家じまいの一部始終を収めた『 私の実家が売れません! 』(エクスナレッジ)から一部を抜粋。さっそく買い手が現れたかと思いきや、契約締結の直前に起こった“予想外の事態”とは――。(全4回の1回目/ 続き を読む)

◆◆◆

日本は貧しくなった…ついに「空き家税」導入へ

 突然、京都市が、空き家に税金をかけるとか言い出しましたね。いわゆる空き家税。正式には「非居住住宅利活用促進税」といって、つまり空き家や別荘など住民税を払ってないやつからも利用料をきっちり取ろう。あるいは倒壊したり火事の原因になりそうな家は見た目もよくなく治安の悪化にもつながりかねないので減らそう、ということで、長年そこで生活をしている人たちからすると、こういう流れになるのも至極当然であると思います。

 が、問題は京都だけじゃないんだ。一つ導入されれば心強い前例によってわれもわれもと増えていくのが税金というもの。このニュースを聞いたとき、これは近い将来、全国的な問題になる。いまのうちに着手しなければ、と腹をくくりました。

 税金、どんどん上がってるのに、これ以上びたいち払いたくねえ。いままでは田舎のボロ屋なんて固定資産税もたかが知れてるし、まあ放置でいっかーと思っていた田舎にボロ家抱える勢、いたよね?

 ってかいっぱいいるよね。私だけじゃないよね。ああ諸行無常、日本は貧しくなった。まさかの「ボロだろうが地目山林だろうが放置してたら税金をかける」流れには驚愕、メロスでなくとも激おこですよ。

仲介業者さんにお願いして売りに出すことに

 叔父と父に頼んでもどうせなにも動かないのはわかっていたので、祖父の家からなるべく近い場所で長年、不動産業を営んでいる不動産仲介業者さんにお願いすることになりました。タウンページという黄色い凶器を探すまでもなく世は令和。我々は全員エデンでリンゴをかじったエヴァの末裔。ありがとうiPhone、ありがとうグーグルマップ。ありがとうありがとう業者一瞬で絞り込めたわ。

 不動産業者だけが見ることができる「レインズ」という業者専用SUUMO(説明雑……)みたいなサイトがあります。しかし我々素人でも、そんな専門サイトを見るまでもなく、ネットで近隣の家が近年だいたいどれくらいの相場で売れていったのか把握することは可能です。

 もっとも、仲介業者さんを入れれば、いくらで売りに出して実際はいくらで売れたのかとか、いつ売れたのかとか、そのへんの詳しいデータはきちんと報告書にしてくれます。値付けの根拠にするためですね。同じご町内のこれくらいのおうちはこのお値段で売れました。なので実際はこれくらいで売れるだろうと思われます、値引き交渉のことも考えて、プラス100万くらいで売り出してはどうですか、とかいう感じに進みます。

400万で買い手がついて、引き渡し日も決まっていたのに…

 さすが仲介業者さん、餅は餅屋、このあたりの流れはスムーズです。やがて、うちのボロ家にも買い手候補が現れました。築75年の上物に価値はないので、一度更地にして小さなおうちを建てるのだと聞きました。祖父の家は田舎とはいえ、JRのまあまあ主要駅から歩けないことはない遠いが!

 という物件。幸いなことに近くにまあまあ大きな病院も、ショッピングモールもありました。めちゃくちゃいい環境ではない。どっちかというと寂れてはいる。しかしこれから若い夫婦が土地付きの家を建てるのには手頃ではあるし、なにより綺麗な長方形の土地で南側が道路に面しており、日当たりもいいです。売れんことはないだろう、と踏んでいました。

 実際500万で売りに出していたところを400万でという申し込みがあり、叔父と父も納得の上売買契約書が作られ、いよいよ引き渡し日も決まりました。ここまでくると私も、ああよかった叔父か父が死ぬまでに現金化できて、と安心して契約完了報告をまつだけの状態だったのです。

 ところが、これが地獄の始まりでした。

 すんなりことが進むと思われたあるとき、不動産屋さんから一本の不審な着信がありました。てっきり契約完了報告だと思って折り返したならば、「大変残念ですが、お取引はできなくなりました」 

 えっっっっ、ど、ど、どゆこと???

「接道義務を満たしていなかった」…ってどういうこと?

 先方さんがローン通らなかったとかそういうことなのかな、と思って(しかし実際住宅ローンは400万以下の物件は通らない)事情を聞いてみると、予想外の事態になっていました。

「松本さん(仮・うちの祖父)のお宅は、じつは接道義務を満たしていなかったのです」

「せつどうぎむ」

「接道義務です」

「え、だって家の目の前道ですよね」

「そうです」

「あれはなんですか?」

「道のように見えますが、じつは違います」

 な、な、なんやて????

 そんなばかな。祖父の家は小さいとはいえ30坪ほどはあり、きれいな長方形をしていて、南側の長い面が道路に接している。その車道も車が2台すれ違うのにギリギリではあるが、一般的なアスファルト舗装の道で、ごくふつうに車は走っているし、なんならそのへんのおばちゃんだって子どもだって駅やスーパーへ行くのに通行しているではないか。あれを道といわずになんと言うのか!

「ちょっと複雑なので、お会いして説明させてください」

 わけがわからない我々は、すぐさま時間を作って不動産屋さんにおしかけた。そこで我々を待っていたのは土地の登記簿謄本だった。

〈 「問題なのはお隣の家です」あまりの絶望感に叔父は寝込み、父はさじをなげ…築75年の祖父の家が売れない“衝撃の理由” 〉へ続く

(高殿 円/Webオリジナル(外部転載))

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