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「問題なのはお隣の家です」あまりの絶望感に叔父は寝込み、父はさじをなげ…築75年の祖父の家が売れない“衝撃の理由”

文春オンライン / 2024年8月16日 11時0分

「問題なのはお隣の家です」あまりの絶望感に叔父は寝込み、父はさじをなげ…築75年の祖父の家が売れない“衝撃の理由”

写真はイメージ ©AFLO

〈 400万で売れたと思ったら…「残念ですが、お取引はできなくなりました」相続した祖父の家が抱えていた“まさかの問題”とは 〉から続く

 作家の高殿円さんの祖父が遺したのは、築75年のボロい一戸建てだった……。祖父の死後、その家に住んでいた叔父も他界すると、高殿円さんは相続した父ともう一人の叔父に代わって“負動産”を売りに出すことに。しかし「売れない」という大きな問題にぶち当たってしまう。

 ここでは、高殿さんの実家じまいの一部始終を収めた『 私の実家が売れません! 』(エクスナレッジ)から一部を抜粋。さっそく買い手が現れたかと思いきや、仲介業者から「お取引はできなくなりました」と連絡が……告げられた衝撃の事実とは?(全4回の2回目/ 続き を読む)

◆◆◆

隣家の土地交換が招いた悲劇

 いま私たちが売ろうとしている祖父の家は、祖父が結婚し商売を始めたころに建てた築75年以上の古いものだ。登記簿謄本には、祖父の前の持ち主や、祖父が死んで叔父と父が相続したことをはじめ、権利の移転などの情報が記録されている。

 私たちは当然なめるように目を通し、「……いや、べつにヘンなところないですけど」

「いえ、松本さん(仮)の登記簿は問題ないのです。問題なのはお隣の家です」

「隣……」

 たしかお隣は亡くなった祖母の元実家で、現在父のいとこ夫婦(A家)が住んでいるはずである。親戚づきあいはまったくないが。

「じつは、お隣の家が、松本さんのご自宅の前面道路と、所有する土地を市と交換したのです」

 衝撃の事実。っていうか、初耳。

「え、え、どういうこと?? 交換??」

「どうも道路の拡張工事をしたかった市が、お隣のA家の道路側の土地を譲ってもらうかわりに、松本さんの家の前の道路を交換したみたいです。ですので、厳密にいうと松本さんの家の前の道路は道路ではなく、Aさんの私有地です」

「私有地」

「公道に接してる部分はありません」

「そんなことある⁉︎」

 いや、しかしそんなことは実際にあった。登記簿ではたしかに家の前はA家の土地になっており、我が家の敷地の前面は1ミリたりとも公道に接していなかったのである。

「いや、そんなことある???」

 さすがにこれはひどい。公を名乗る団体が善良な一市民に対する仕打ちではないと思う。だって、そんなことをすればうちが、のちのちどんな目にあうか、考えなくてもわかるだろう。公道に接していない家は再建築不可物件になるのだから。

「変わったのはうちだけ」困惑、そして激怒

 呆然とする私、父、叔父、そして母。そしてその前を悠々と通り過ぎる近所のおばあちゃん。

「おばあちゃん通ってるが???」

 私たちはおばあちゃんを見送ったあと、あれはどういうことだと不動産屋さんを激詰め……はしなかったけど食いつくように聞いた。

「あれどういうことですか、学校帰りの子どもも通ってますよね。でもそこは私有地では?」

「ああ、それはみんなが通れなくなったら困惑するだろうと、市とA家が話し合って私道通行権の許可を出したみたいですね」

 俺らも困惑してるます‼

 困惑してるます‼

 しかし、我々の困惑は市にはいっさい考慮されなかった。つまり、A家は近所の人もいままで通り通れるように通行許可を出した。(これを私道通行権と通行許可といいます)だからうち以外の人はなんら変わっていない。変わったのはうちだけ。祖父が亡くなり、叔父と父が相続したあと、ひそかに市と隣家がぶつぶつ交換をして再建築不可になったうちの家だけ!

 我が家は激怒した。

あまりの絶望感に叔父は寝込み、父はさじをなげ…

「これはもう市を相手に裁判するしかねえ!!!!!!」

 もし、私が直木賞作家でありあまる富を有していたら、話のネタに市を訴えていた可能性もあった。だってこんなことある??

 道路を拡張したいならちゃんと土地を買収しなさいよ。道路と交換すな!

 しかし私は残念ながら直木賞作家でもなく、大学受験を控えた高校生に湯水のように教育費を溶かされる無力な一般家庭……。

 市を相手取って裁判している余力も資金も気力もない。

 かくして、決まっていた買い手さんも「再建築不可ならちょっと……」と去って行き、不動産屋さんも「築75年の再建築不可物件は難しいですねえ」とフェードアウトしていった。

 残されたのは、叔父の遺物で足の踏み場もない築75年の売れないゴミ屋敷のみ!

「……これは、詰んだのでは?」

 あまりの絶望感に叔父は寝込み、父はさじをなげ、そうして2年。

 だれも、どうしようもないと思っていた家を、私は自分の手で売ったのです。

〈 「片付け費用は最低40万円」仏壇だけでも10万円…昭和の遺物あふれかえる“実家じまい”が大変すぎてつらい 〉へ続く

(高殿 円/Webオリジナル(外部転載))

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