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「無料でいいから誰か持っていってくれ!」築75年の実家を賃貸に出したい…家中のゴミの山を処分した「これぞ令和」な方法とは

文春オンライン / 2024年8月16日 11時0分

「無料でいいから誰か持っていってくれ!」築75年の実家を賃貸に出したい…家中のゴミの山を処分した「これぞ令和」な方法とは

写真はイメージ ©AFLO

〈 「片付け費用は最低40万円」仏壇だけでも10万円…昭和の遺物あふれかえる“実家じまい”が大変すぎてつらい 〉から続く

 祖父が遺したのは、築75年のボロい一戸建てだった……。作家の高殿円さんは、相続した父と叔父に代わって“負動産”を売りに出すことに。しかし「売れない」という大きな問題にぶち当たってしまう。

 ここでは、そんな高殿さんの実家じまいの一部始終を収めた『 私の実家が売れません! 』(エクスナレッジ)から一部を抜粋。売れないならと賃貸に出すことを視野に入れ、祖父の家を片づけることにした高殿さんだったが……。(全4回の4回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

人力作戦決行…「やるんだ、破壊するんだあの昭和を」

 一番のパワーは人力だ。私は完璧な計画を立てた。まず一日でこの家のゴミを片付ける。私、父、母、家人、息子で家中に散らかるゴミ類をなんとか片してしまうのだ。まずはそこからだ。 

 アマゾンで購入したシゲマツ(重松製作所) 使い捨て式N95マスクはすぐに届いた。防塵マスクってすごい。朝九時。水も出ない、トイレもない、もちろん電気も暖房もない祖父の家の片付けがはじまった。なにせ電気がないので、日が暮れる前に作業を終えねばならない。しかし、人間というものはいったん時間があいてしまうと、もういっか、という気分になってしまう生き物である。

 すべての問題解決の鍵は人間のメンタルだ。つまり今回の片付けの問題は継続性にある。片付き、変化を視認できれば人はなんとかし続けようとするもの。なんとしてもここで片付けに進歩を見出し、実際、片付けねばならない。

地獄のルーティン、エンドレス……プラケース!

 我々は猛烈に働いた。ありとあらゆるものをゴミ袋に分別しはじめた。そして悟った。片付けられない人間を増やした悪魔は百均である、ということを。百均のプラケースは悪魔のボックスだ。あそこに入れればなんとなく片付いた気分になってしまう。しかし元来片付けられない人間は、そのプラケースになにを片付けたか記憶を失う。そしてそのプラケースごと見失う。そして「あれ、間違って捨てちゃったかもしれない」と勘違いする。

 負のルーティンはこれでは終わらない。なくなってしまったことに焦った片付けられない人間は、まず補充しようとする。そしてここにも100均の罠が潜んでいる。すなわち、「100円だからいっか」、「100均だからいっか」という手軽さによって、またプラケースとプラケースに保管するべき爪切りだの耳かきだのなんだのを購入するのだ。そして買ったことに満足して、プラケースはまた家の中に1セット増え、そして忘れ去られる。片付けられない人間は、探し出すことも出来ない。よってまた、「あれ、間違って捨てちゃったかも」と誤認し、100均に補充にでかける。以下地獄のルーティン、エンドレス……。

 いったいいくつでてきただろうか!!!!このプラケース!!!気が狂うぞ、エンドレスプラケース!!絶対許さない。

「片付けられない人間はプラケースを買うな‼」

 やっつけてもやっつけても出てくる地獄のプラケース、100均で買ったであろう品々、洗剤、洗剤、また洗剤。はい、魔界ならぬ腐界との戦い開幕戦はまさに100均プラケース戦。プラケースだけではない。ちぎっては投げ、ちぎっては投げしてもまだ出てくるタッパー、タッパー、またタッパー。

 死ぬのか⁉ 

 いやもう死んどる‼

ただでやる。無料で出すからだれか持っていってくれぇ‼

 初日はもう、ちぎって投げていた記憶しかない。 うちの巨大なるノアに詰んでも詰んでも終わらないゴミ。ゴミ、ゴミの山。すべての引き出しを開け、すべての棚からものを引きずり出し、プラスチック100均ゴミを処分するのに丸一日かかるとは思わなかった。それでも一日悪戦苦闘した成果もあって、この家にあるものの大部分は把握できた。何があるのかわかれば次の手は打てる。

 すなわち、

「ガレージセールだ‼」

 私の目にはゴミに映っても、世の中にはいろんな価値観を持った人間がいる。そして思い出せ若かったころを。結婚当初、我々だって、どこのだれだかわからない人から譲り受けたソファやダイニングテーブルをありがたく貰って使っていたのではなかったか。

 私のスマホが火を噴くときがきた。

「見せてやんよ、令和の力を」

 古い古い水屋箪笥から母が引きずり出してきた食器は、なんといま風でいう昭和レトロ。なんと再ブームが来ているレトロかわいいというやつだった。いいかんじに写真を撮りまくった。家具という家具も撮影した。なんと私の目にはたいしてどうとも映らなかった藤の家具がダイニングセットとシェルフ、チェストとそろっており、(おばあちゃんの家とか銭湯とかの脱衣所にある感じのあれである)。ヤフオクで検索したらまあまあな値段で販売されていたのだ。

 いや、発送をしている暇はない。ただでやる。無料で出すからだれか持っていってくれぇ‼

そうして、奇跡は起きた。

「ジモティー」に投稿した。

 “祖父の家の家具、食器、服、全部無料であげます。興味のある方はご連絡ください”

 正直、反応があるかは眉唾だった。しかしなにごともダメ元、40万払うくらいならばなんだってやってみる。やってみるは魔法の合い言葉。父がノアでゴミを焼却所まで何往復もして運び、衣装ケースを二階から下ろし、我が家の労働力様息子はいちばんよく働いた。偉い。好き。愛してる。さすが我が息子よ。息子には餃子の王将で好きなものを好きなだけ食べさせた。もうお母ちゃん、なんだっておごっちゃる。さあもう一働きして、若さであのゴミの山をなんとかするんだ。

 そうして、奇跡は起きた。

『興味があります。場所はどこですか?』

 王将から戻ってきたあと、私のスマホには、30件を越える問い合わせが届いていた。

(高殿 円/Webオリジナル(外部転載))

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