1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「高齢者は免許を返納しなくていい」運転をやめた高齢者は要介護リスクが激増…日本人が知らない“免許返納問題”の意外な事実《和田秀樹が解説》

文春オンライン / 2024年8月20日 6時0分

「高齢者は免許を返納しなくていい」運転をやめた高齢者は要介護リスクが激増…日本人が知らない“免許返納問題”の意外な事実《和田秀樹が解説》

写真はイメージ ©hika_chan/イメージマート

 高齢者専門の精神科医として、36年間、延べ6000人の患者を診てきた和田秀樹氏。高齢者は重要な消費者で、「日本経済が復活する芽」だと考え、高齢者の生き方にスポットを当てた著書を多数出版している。

 ここでは、そんな和田氏が、高齢者が人生を楽しむためのヒントを綴った新著『 老いるが勝ち! 』(文春新書)より一部を抜粋。和田氏が「高齢者は免許を返納すべきではない」と考える理由とは——。(全2回の1回目/ 2回目に続く )

◆◆◆

高齢者の事故率は決して多くない

 世の中は理屈通りにはいかない。その認識を深めるべきです。

 しかも、理屈だけで終わるわけではありません。理屈通りに物事を進めようとすると、やはり被害者が出てしまうのです。薬だって副作用もありますからね。

 ゼロコロナのときもそう思ったのですが、どんなものにも害はあるわけです。自粛生活や自粛政策にも害がある。ワクチンにも害がある。

 理屈通りにはいかない良い例が、さきほど触れた免許証の返納です。もう少し詳しく考えてみます。

 私の著書『80歳の壁』で、もっとも高齢者に支持されたのは、「高齢者は免許証を返納する必要はない」という件です。

 高齢者の事故の理屈と現実についてお話ししますと、【図表2】をご覧ください。

 2023年の警察庁のデータによれば、高齢者の事故率は、人口10万人当たりで考えた場合でも決して多くはありません。むしろ、10代、20代のほうが多いのが現実です。さすがに75歳を超えるとちょっと増える傾向にはあります。

1人の人身事故により49999人が連帯責任を取らされている

 85歳以上の運転者が第一当事者である事故に特徴的なのは、他人をはねているのではなくて、車両単独と言って、自分が犠牲になることが多いのです。

 85歳以上の死亡事故は10万人に11.4件で、その18パーセントが人をはねる事故です。つまり、人をはねる死亡事故は、10万人に2件ですから、5万人に1件です。はねていない人が5万人中に49999人いるわけです。

 大麻で問題を引き起こした日大アメリカンフットボール部の場合には、11人が大麻をやっていて、残りの約100人が連帯責任を取らされました。

 高齢者の事故に関しては、1人が人身事故を起こすせいで、49999人が連帯責任を取らされていることになります。この比率から見れば、高齢者に対しては非常に厳しい措置と言えます。

免許証返納による社会保障費の増大

 問題は、65歳以上の人が免許証を返納すると、要介護率が2.16倍になってしまうことです。これはバカにならない数字で、仮に100万人の要介護者が増えれば、それだけで年間2兆円のコストがかかります。

 社会保障費の増大という意味では、軽く見られないような金額です。

 高齢者に免許証を返せと言っている人たちは、それだけの国民の負担増まで考えているのかどうかが問題です。

ボケている人は意外に事故を起こしていない

 理屈通りにいかないもう一点は、実は高齢者でニュースを騒がす大事故を起こしている人は、みんな認知機能検査をパスしているのです。池袋の上級国民と言われたおじいさんだって、5人を死傷させた97歳の福島のおじいさんだってそうです。

 私はたぶん3000人くらい認知症の人を診ていますけど、ボケている人は意外に事故を起こしていないし、事故の被害にもあっていないのです。どんなにボケていても、車の前方に人が見えたらわざとそっちに向かって行ってはねるようなことはしません。

 認知症の人のほうがかえって怖がりです。徘徊していても、車が通ると怖いから逃げるんです。土手から落ちてけがした人はいますよ、何人か。だけど、私の診ていた認知症の人で、車にはねられた人は1人もいません。

 認知症の人が攻撃性を持つことはあります。噛みつくとか叩くとかです。じゃあ、認知症の人に刃物を持たせたら、それで人を刺すかと言えば刺さないわけです。

 世の中は認知症の人に対して勝手なイメージを抱いているかもしれませんが、知的機能が落ちたら悪いことをするかというと、必ずしもそういうわけではありません。

〈 「日本は露骨に高齢者差別をしている」「どこがシルバー民主主義なんだ」精神科医・和田秀樹が“日本社会は高齢者に冷たい”と断言する理由 〉へ続く

(和田 秀樹/文春新書)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください