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5歳の娘を死ぬまで虐待、身内には逮捕者も…「犯人夫婦」の“浮世離れ”した生活事情――目黒5歳女児虐待死事件(2018年)

文春オンライン / 2024年8月25日 17時0分

5歳の娘を死ぬまで虐待、身内には逮捕者も…「犯人夫婦」の“浮世離れ”した生活事情――目黒5歳女児虐待死事件(2018年)

我が子を虐待死に追いやった父親・船戸雄大(写真:筆者提供)

〈 「子供にこんな文章を書かせるなんて鬼ですよ」5歳の娘を「体重12キロ」になるまで虐待した“両親の非道”――目黒5歳女児虐待死事件(2018年) 〉から続く

「あの家は、ちょっと。なんというか、ここらの田舎からしたら浮世離れしているというか、そんな感じの家かな」。2018年、5歳の娘を虐待死させた、父親の船戸雄大(当時33歳)と母親の優里(同25歳)。いったい2人はどんな人物で、なぜ出会ったのか? 高木瑞穂氏と、YouTubeを中心に活躍するドキュメンタリー班「 日影のこえ 」による新刊『 事件の涙 犯罪加害者・被害者遺族の声なき声を拾い集めて 』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

高松のキャバクラで出会い結婚、上京

 1985年、岡山県で生まれた雄大は父親の仕事の関係で関東などに住んでいたこともあったが、小学校高学年で北海道札幌市に転居する。このとき、歳の離れた妹もいた。

 中学校の同級生に話を聞いたところ、当時は特に暴力性が際立つようなことはなく、バスケットボールに夢中になっていたという。

「運動神経が良くて、活発な子でしたよ。ちょっと相手によって言葉遣いとか態度を変えるようなところはあったけど。子供なんてそういうところ誰でもあるでしょう。強い者に憧れて媚びるというか……」

 中学卒業後、道内でバスケットボールの強豪校として知られる公立高校に進学。一時はバスケ部に籍を置きレギュラーを勝ち取り全国大会への出場を目指していたが、練習についていけず志なかばで退部。現実を知り卑屈になったのか、ついには不良と付き合うように。が、高校を卒業し東京・八王子にキャンパスを置く帝京大学に進学すると、改めてバスケサークルに籍を置き青春時代を費やした。当時のサークルメンバーは言う。

「遊び半分で入っていた連中が多いなか、強豪のバスケ部出身だけあってやっぱり抜群に上手かったですよ。だんだんと本気のサークルになっていきましたけど、雄大はチームの中心でした」

 誰に聞いても雄大を悪く言う者はいない。みんなを引っ張っていく熱血漢。そんなイメージを持たれていた彼は、大学卒業後にシステム開発関連の会社に就職し、ほどなく三軒茶屋に、頻繁に姿を見せるようになる。のちに東が丘に引っ越しをする際に、近くの「三軒茶屋はいいところだ」と優里に語っていたように、雄大は雑多なカルチャーの入り交じる不思議なこの街を、いたく気に入っていた。前出のサークルメンバーは語る。

「三軒茶屋の話はよく聞いていました。業界人と知り合いができたとか自慢げに話していましたよ。でも雄大は酒がそんなに飲めないんですよ。人脈を作りに行っていたんですかね」この頃から、雄大は大麻に手を染めるなど遊びが派手になっていく。

 業界人が集まる三軒茶屋で飲み歩いていたのだから、特筆すべきことではないだろう。が、ここから雄大は奇妙な人生をたどる。安定したシステム開発の仕事を辞め、高校卒業まで住んでいた札幌に移転、なぜかススキノでキャバクラ店の黒服になる。水商売は年齢よりも経験がものを言う。社会人経験が長い彼であっても、黒服としては末端の序列。先の見えない下積み生活が始まった。

 そこへ意外な声がかかる。香川県高松市のキャバクラに勤める大学時代の知人からの、人手が足りないから手伝ってほしいというオファーである。雄大は誘いに乗り、高松へ。

 のちに妻になる8歳年下の優里は、この店のキャバ嬢だった。

 高松市から電車で1時間ほどの善通寺市。中心街から少し外れた山間に離れや納屋を備えた日本家屋が並ぶ地域で、優里は4人兄妹の末っ子として生まれ育った。

「田舎からしたら浮世離れしている」

「あの家は、ちょっと。なんというか、ここらの田舎からしたら浮世離れしているというか、そんな感じの家かな」

 近くで畑仕事に精を出していた好々爺が話すように、周囲の聞き込みで知り得た彼女の家庭環境は決して良くはなかった。元自衛官の父親は厳格で、子供を叱りつける声が四六時中、長閑な地域に響いていたという。親族の中には大麻で逮捕された者もいたようで、「あまり付き合いたくはない」と語る住民もいた。

 それでも優里は田舎の子供らしい快活さを持ち、中学ではソフトボールに明け暮れ、地元の高校に進学。19歳、卒業してからすぐに、地元の同級生との間に子供を身籠り出産した。それが虐待被害にあった結愛だ。

 若い2人の結婚生活は早々に破綻した。のちの裁判で彼女自身の口から「夫の経済力やDVが原因」だと語られている。離婚後、結愛を引き取り、生活のため水商売の世界へ。雄大と出会うのは20歳のときだ。それまで地方都市から出たことのなかった彼女は、東京で暮らし社会経験も豊富な雄大に夢中になった。すぐに寝食を共にする仲に発展し、結愛も雄大のことを「お兄ちゃん」と呼び慕った。やがて優里が雄大の子供を身籠り、2人は親の反対を押し切り結婚。2015年12月のことだ。

 結婚後、2人は揃って水商売から足を洗い、優里は専業主婦に、雄大は香川ではCMが流れるほど有名な食品関連会社に職を得る。善通寺市内のアパートで、地に足をつけた一家4人の暮らし。だが、平穏な暮らしはほどなく破綻する。

(文中敬称略)

(高木 瑞穂,YouTube「日影のこえ」取材班/Webオリジナル(外部転載))

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