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「ゲームは1日1時間」に科学的根拠はナシ…子供をゲームに依存させないために親ができる“効果的な手段”とは?

文春オンライン / 2024年8月25日 11時0分

「ゲームは1日1時間」に科学的根拠はナシ…子供をゲームに依存させないために親ができる“効果的な手段”とは?

©mapo/イメージマート

〈 読み書きが学べる、デジタル技術への慣れに繋がる、地理や歴史に詳しくなる…だけじゃない 「子供にゲームを遊ばせるべき」と断言できる“納得の理由” 〉から続く

 ビデオゲームにまつわる仕事をしている筆者は、子供が成長するにつれて「子供にゲームを遊ばせるか否か」といった話題に巻き込まれることが増えてきた。

 もちろんゲームは楽しいだけでなく学びにもなるし、子供たちにとって重要なコミュニケーションの要素でもある(詳しくは #1 を参照されたい)。しかし、当然ながらゲームにデメリットや問題がないわけでない。

 ここでは、子供にゲームを遊ばせることによるデメリットと、それに対して親がどう立ち向かうべきかを考えていきたい。

◆◆◆

ただ「ゲーム障害」を恐れても仕方がない

 ゲームを子供に遊ばせるデメリットはいくつか考えられる。大きく分類すると「熱中しすぎる」、「いらつく」、「コミュニケーションによる問題」、「お金の問題」あたりが目立つものであろう。また、具体的な要素としては「ガチャ」や「狭義のオンラインゲーム」に注意が必要となる。

 こういった問題に立ち向かうには、やはりゲームのことをよく知り、子供とコミュニケーションをとるほかない。

 さて、ゲームにまつわる問題で最も注目を集めているのが「ゲーム障害」であろう。実際、よその親御さんの話を聞いていても「ゲーム障害にならないか心配」などと言う人はいる。

 WHOが定義したところによると、

・ゲームを遊ぶことのコントロールができない

・ほかの生活・日常の活動よりもゲームを優先する

・問題が起きているにも関わらずゲームを続ける

・個人・家族・社会における学業・職業上の機能が果たせない

 上記が12ヵ月以上続く場合、ゲーム障害に診断されるという(重症の場合短くとも診断可能)。

 要するに、学校や会社にも行かず、食事・風呂なども無視して、問題をほったらかしてゲームを遊び続けるのを1年近くも続ける必要があるのだが、これはゲーム好きからしてもなかなか稀である。

 すべてを放棄してゲームを遊ぶのであれば、1日10時間以上はゲームに費やせるかもしれない。1週間で70時間、1ヶ月で約2100時間、1年で2万5200時間となる。しかしいくらゲームが好きでも人間には「飽きる能力」があるわけで、ここまでプレイするのは容易ではない。

 買い切りゲームの場合、ここまで遊べることは滅多にないだろう。確かにいろいろなゲームが出ているものの、そのすべてが趣味・嗜好に合うとも限らない(むしろ全体を見れば好みに合うほうが少ない)し、一本のゲームは長くとも数10時間に収まることが多い。やりこみでプレイ時間を伸ばしたり、あるいはアップデートされることはあれど、ひとつをずっと遊ぶゲームがリリースされることは商売上の観点からも難しい。

注意するべきゲームジャンル

 注意するべきはMMORPGのような一部のオンラインゲーム、あるいはサービス提供型ゲーム(もしくはライブサービスゲーム、基本プレイ無料の形態をとることが多い)であろう。これらのゲームはプレイヤーをより長く拘束し、長期間遊べるような仕組みが用意されている。

 ゲーム障害という言葉が存在する前から“ネトゲ廃人”という言葉があり、これはまさしく仕事や生活を投げ打ってでも没頭する人のことを指していた。

 よいアイテムを落とすボスを独占するために深夜にプレイする、トイレに行く時間も惜しいのでペットボトルに用を足す、1日20時間以上プレイできる仲間を募集するなど、ひどい話は探せばいくらでも出てくる。また、オンラインゆえのコミュニケーションがデメリットにも繋がりうることもある。

 ゲームに飽きたとしても仲間と喋るためにログインする、ほかのプレイヤーに負けないために長時間プレイするといった事態につながりやすいのである。MMORPG以外でもギルド同士で戦うようなゲームは同様のことが起こりうるだろう。

 とはいえ、この手のゲームが必ず廃人を生むとも限らない。筆者も遊んだことはあるし、熱中したこともある(とはいえさすがにトイレで用を済ませていたが)。それでも、1ヶ月もすればプレイヤーを縛り付ける仕組みに嫌気がさしてしまった。何より作品によっては、意図的にそこまで熱中させないような仕組みを用意しているケースもある。結局のところ、プレイヤーおよびプレイするゲーム選び次第である。

「子供が熱中してほかのことを忘れるかどうか」

 だが、それはあくまで私の場合であって、そうでない特性を持つ人もいる。児童精神科医である吉川徹の著作『ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち』によると、発達障害の子供はゲームやネットに没頭しやすい傾向があるという。

「子供が熱中してほかのことを忘れるかどうか」が重要なのだ。遊んでいるゲームがそうさせるものなのか、そして子供が熱中しすぎてしまうタイプなのかを確認し、必要に応じてスクリーンタイムなどでうまく制限を加える必要があるだろう。

 また、なぜ子供がゲームにばかり熱中するかも確認しておきたい。ただ楽しいからゲームをやめられないのか? それならばゲームを取り上げるのもひとつの手かもしれないが、学校に行きたくないだとか、現実から逃げたいがためにゲームに没頭しているのであれば、ゲームを取り上げたところで問題を棚上げにするだけだろう。

「ゲームは1日1時間」は根拠なし

 もちろん、ここまでいかずとも「子供がゲームばかりで宿題をしなくて困る」というレベルの話もありえるだろう。これに関しては、親が子供の遊んでいるゲームに興味を持つことが重要となる。

 甥が小学生だったころの話をしよう。彼は『ポケットモンスター X・Y』を遊んでおり、母親に「そろそろゲームをやめなさい」と言われた。しかし、「まだセーブできないから!」と言い返して、ゲームを続行していたのである。

 だが、「ポケットモンスター」シリーズは多くの場面でセーブができるゲームである。実際、彼のセーブできないという言い訳は嘘であった。ただ、私はその様子を見てもう少し待つことにした。

 切羽詰まるような状況でなかったのも一因だったが、何より甥の遊ぶゲームがひとつの佳境に差し掛かっていたのが大きい。少しするとその盛り上がるシーンを抜けたので、「じゃあ、そろそろやめようか」と声をかけると、彼は素直にやめることができた。

 一口にゲームといっても、いつやめられるのか、どれくらい時間が必要なのかは異なる。親もそれを知っておけば、子供がまだ納得しやすいやめ方を提案できる可能性が出てくる。ただ頭ごなしに「ゲームは1日1時間」などと言っても、反発するのがオチだろう。

 なお、「ゲームは1日1時間」を提唱した高橋名人によると、この時間設定には根拠がないという。あくまで当時のファミコンブームを嫌う親をフォローするために発言したものであり、40年以上前の古い常識であると考えを改める必要があるだろう。大事なのはゲームの時間よりも、すべきことを済ませているかどうか、である。

 また、子供とゲームのネガティブな関係性については、これまで取り上げてきたもの以外にも、対戦型ゲームで性格や発言が豹変したり、勝手に課金をしたりなどさまざまだ。これらの諸問題を解消できる方法はあるのだろうか。 #3 では、ゲームを取り巻くデメリットを解消する“究極的な解決法”を考えていきたい。

〈 子供が対戦ゲームで豹変、勝手に課金までして…ゲームを取り巻くデメリットを解消する“究極的な解決法”とは 〉へ続く

(渡邉 卓也)

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