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「パソコンの電源の入れ方がわからない」「小さい文字の『ぃ』や、『ゔ』が打てない」レベルの低い19歳社員→それでも超最速で“会社役員”になれたワケ

文春オンライン / 2024年9月3日 11時0分

「パソコンの電源の入れ方がわからない」「小さい文字の『ぃ』や、『ゔ』が打てない」レベルの低い19歳社員→それでも超最速で“会社役員”になれたワケ

レベルの低い19歳社員はなぜ成長できたのか? そこには多くの仲間の支えがあった…。写真はイメージ ©getty

「パソコンの電源の入れ方がわからない」「小さい文字の『ぃ』や、『ゔ』が打てない」…1年目の配属先では、簡単な作業もできなかった光通信の新入社員。しかし、そんな彼もさまざまな人たちの協力を経て、努力を重ねることで立派なビジネスパーソンとして成長していく…。

 2003年、19歳で光通信に入社したのち最年少の役員に。さらにその後、HIKAKINと出会い、UUUMを創業し、日本のYouTuberの躍進を支えた鎌田和樹氏による初の著書『 名前のない仕事──UUUMで得た全知見 』(ダイヤモンド社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆◆◆

「一体感」は悪いものではない

「ゾス! 失礼します!」

 そう言って社長室に入る。「ゾス!」は「オス!」の上位互換だ。

 さて、何のことやら、さっぱり意味不明でしょう。

 あのときの僕もそうでしたから──。

パソコンの電源の入れ方がわからない

 社会人として、「会社に染まる」という話です。

 営業から飛んだ僕は総務に異動し、「光センタービル」に出勤することになりました。

 当時の総務は6階で、7つの机がある島にいました。

 僕の机の右には男性のサブマネジャー(係長クラス)、向かいには男性の先輩(ビル担当)、左には女性の先輩(社宅担当)、そのまた左には男性の先輩(消耗品担当)という配置でした。あとの2つは空席です。

 当時の光通信は、社員が1万人ほどいたと思います。

 その中で、社員の社宅管理だったり、稼働しているオフィス(ビル)管理だったり、営業が使う車輌の管理、消耗品発注、コールセンターの通信費管理などを取り扱い、まとめていました。

 今でも驚くのは、それを少数精鋭でこなしていたことです。

 会社としては、バックオフィスはコストセンターという扱いなので、少なくするメリットがあるのはわかりますが、それでも「5人」で1万人の規模を回していたのは、本当にすごい。

 そんな総務課の中で、僕が最初に担当になったのは「社宅担当」でした。

 一人暮らし用の社宅「単身者用」と、家族用の社宅「家族世帯用」が、全部で1500戸ありました。

 光通信は各地方に拠点を持っていたので、社宅は必要不可欠でした。

 それらの社宅を一人で管理している先輩女性がいて、僕はそのサポートとして入ったわけです。

 最初の仕事は、溜まりに溜まった物件の契約書を「物件台帳」というものに手入力することでした。

 物件名、住所、水道光熱費の連絡先、管理会社の連絡先、そして、いつから誰が入居しているかなどの情報をすべて入力します。

 僕の隣にいた先輩女性は、仕事に対して厳しくて怖い存在でした。

 いつも先輩女性の左に座っている人を叱っていました。

 あとから聞くと、僕よりほんの数ヶ月前に移ってきた方でした。

「前にも言ったよね? なんでメモとか取ってないの?」と、詰められているのを見て、「一度聞いたことは、二度と聞いちゃダメなんだ……」と理解しました。社会人はそういうものなのだと。

 そんな光景を見て、僕は戦々恐々としたのですが、どうしても質問しないと仕事が進まないことがありました。

 というのも、当時の僕は、大学にほとんど通わなかったこともあって、パソコンスキルが皆無でした。

 今でも2つのエピソードを覚えています。

 1つ目は、「パソコンの電源の入れ方がわからない」ということです。

 そのレベルです。

 デスクトップ型でモニターと本体が別のタイプだったので、本体のパワーボタンが見当たらないのです。

 そもそもボタンを押したら電源が入ることすら知らなかったので、おそるおそる「どうやって電源を入れるんですか……?」と、聞いたことを覚えています。

 優しく教えてくれましたが、「このレベルか」って、一瞬、それを悟ったときの先輩女性の目を今でも忘れません。

「小さい文字の『ぃ』や、『ゔ』が打てない」

 2つ目が、「小さい文字の『ぃ』や、『ゔ』が打てない」ということ。

 契約書への入力で最大の関門は、物件名が難しいカタカナだったときでした。

 一度目は、その入力方法がわからず、先輩女性に聞きました。

 しかし、ある日、また同じことがわからなくなってしまったのです。

「○○さん、お忙しいところすみません。以前も聞いたのですが、もう一度教えてください。小さい『ぃ』ってどうやって入力したらよかったでしたっけ?」と、ちゃんと2回聞いていることを伝えながら聞きました。そうすると、怒らずにもう一度教えてくれたんですね。

「以前も聞いたのですが」という一言が、本当に大切なんだなと思い知りました。

 それを添えるだけで、また説明しないといけないという相手の気持ちがクリアになるんですよね。

 そういった、「社会での生き方の基礎」を、ここで学びました。もちろん、たくさん怒られることもありましたが。

総務時代に叩き込まれたこと

 社会人になって、初めて「自分の頭で考えた」という瞬間があります。

 それは、エクセルで入力作業をしていたときのことです。

 一つ一つの数字を入力していたのですが、

「こんなムダな作業はおかしい。もっとラクな方法があるはずだ」ということがふと頭に浮かんだのです。

 そんなときは、右にいる上司のサブマネジャーに聞くようにしました。

「ああ、それならブイルックアップ関数を使えばいい」「そういうときはサブトータル関数が便利だよ」と、そのとき自分が欲している情報をバッチリ教えてくれたのです。

 仕事を覚えている僕にとって、それは毎回、感動の連続でした。

 これがもし、自分で疑問に思ったことではなく、最初から「こうしなさい」と与えられたとしたら、ここまで大きな感動はなかったでしょう。

 そして、次から次へと自分の頭で考えなくなったはずです。

 そんな中でひと月が経ち、大きな仕事がやってきました。

 大規模な引っ越しを担当することになったのです。

 当時の光通信では、OA機器(コピー機やビジネスフォン)の販売が全盛期でした。

 全国に営業拠点がある中で、小山市と郡山市と仙台市の3つの拠点で、責任者とそのチーム10人ずつが全員異動になるということでした。

 それを聞いたのが月曜日。そして、週末には引っ越しが実行されるとのこと。つまり翌週には、新しい体制で営業ができる状態にするということでした。

 これだけの仕事を新人に任せる会社は、正直、ないでしょう。

 まだ契約書の入力しかしていないわけですから。

 しかし、結果的に、先輩女性に教えてもらいながら、やりきることができました。

 土曜日と日曜日で引っ越しの時間帯をそれぞれずらし、前の入居者が退去したらすぐにハウスクリーニングをし、玉突きで入居者たちを受け入れる……。物件が足りなくて金曜日までに新規の物件を契約し、鍵の受け渡しまでやったりもしました。

 これが社会人になって最初の成功体験かもしれません。

 総務の仕事なんて、「何でも屋だ」と言いたくなることでしょう。

 しかし、仕事はそういうことの積み重ねです。

 そして、そんな中でも、学び取れることは、山ほどあるのです。

総務の仕事をやってよかった

 今振り返ると、日々、物件の契約書を見ることで、「賃貸借契約書」が読めるようになったことは非常によかった。

 また、「物事の順序」が嫌というほどわかりました。

 物件を見る、契約書をチェックする、事前に入金する、鍵を受け取る……という流れがわかったのも大きな経験です。

 そして、社内の偉い人と会話する経験もできました。

 どんなに会社で偉い人でも、社宅担当の僕に電話をしてきて、「自分が住みたい物件のリクエスト」を伝えてきます。

 そして、プライベートな話ができる。

 この経験が大きかった。

「それは大変ですね~」とか言って、偉い人のグチを聞くことができるのです。

 一般的な組織では、一般社員が偉い人と会話することは少ないです。

 それができることは、会社という組織の中では非常に強いコネクションを持つことにつながります。

 さて、当時、僕も社宅に入居しましたが、最初の給与18万円から諸々が控除されて、手取りは「3万円」でした。

 一体、どうやって生きていたのでしょう。

 親に頼んで携帯代を払ってもらったり、いろいろな人に支えてもらいました。

 20歳になったときには、総務のみなさんから「成人といえば」という意味で、お酒(一升瓶)とタバコ(ワンカートン)をいただきました。大人の階段を上った瞬間でした。

 そうして社会人1年目から、総務としてバリバリのゼネラリストになります。

 社宅担当から事務所担当、通信費担当といろいろなことを経験して成長していくわけです。

〈 「とりあえず『オス!』と言えば大丈夫」ナゾの挨拶「オス!」と「ゾス!」の“正しい使い方” 〉へ続く

(鎌田 和樹/Webオリジナル(外部転載))

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