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12人の勇者が乱立し、4人の長老が暗躍…自民党の総裁選は結局どうなっているのか「長老をバックに世襲議員」というオールドな体質は健在?

文春オンライン / 2024年8月27日 11時0分

12人の勇者が乱立し、4人の長老が暗躍…自民党の総裁選は結局どうなっているのか「長老をバックに世襲議員」というオールドな体質は健在?

総裁選への不出馬を表明した岸田文雄首相 ©時事通信社

 大変なことになっている自由民主党の総裁選2024。

 初めに書いておきますと、割と近くで見ていた岸田文雄さん、てっきり総裁選への出馬は超絶意欲的で再選目指してやる気100%でガッチリ頑張ると見込んでいたんですよね。俺たちの岸田文雄、人気がなくて何をしたいのか良く分からない以外は割とよくやっているし、衆議院も来年の任期満了まで引っ張れればどうにかなるんじゃないかと。

 そしたら、かなり本音で「派閥政治を終わらせ、(岸田さん)自身が身を引くことで自民党を変える決断をする」というムーブになってしまいました。えっ、どういうことなの文雄!

 日頃あれだけ岸田文雄批判で『増税メガネ』やら『検討使』やらとさんざん揶揄してきたメディアさんサイドも、いざ岸田さんが辞めるとなるとしおらしく「でも、やっぱり岸田文雄っていろいろ頑張ってたよな。あれもこれも実現したし」って言い始める始末。いや、いま褒めるんなら在任中にもっとちゃんと評価してあげろよな。

 なもんで、完全な追い込まれ辞任にはならず、総裁任期満了での勇退となった岸田文雄さんは、まだ67歳の「若い元総理」として、自由民主党がこれからなんかあったときにまた登板できる人材ストックとして鎮座ましますことになります。その点でも、引き際が潔かったのは岸田文雄一流の美学だったと言えましょう。

 情勢としては、小泉進次郎さんの出馬表明で一気に小泉本命に。マジかよぉー。確かに43歳で若いし刷新感はあるけど、真面目で誠実な人柄はともかく能力には疑問符が付くうえ、長老をバックに世襲4世のオールド自民党そのものという本質は変わらないんですけど、大丈夫なんでしょうか……?

勝馬探しに奔走するいつもの「麻生さんムーブ」

 そういう長老主導の派閥政治からの脱却をするために、別に本人の咎ではない政治とカネの問題で、自らの金看板でもある宏池会さえ解散してしまった岸田文雄さん。しかし、今回の総裁選では派閥を解散したがゆえにキーになる自民党古参長老4名の動きに改めて注目が集まっています。

 ひとりはご存じ志公会(麻生派)を率いる麻生太郎さん(83)。相変わらずダンディでご健在な一方、幕下に総裁候補の一角・河野太郎さんを抱え、また麻生派の実力者・甘利明さんが小林鷹之さんを支援、そして俺たちの幹事長・モテキングこと茂木敏充さんからの支援依頼を蹴っ飛ばすなど、いわゆる麻生さんムーブを敢行しており勝ち馬探しに奔走しています。

 ご本人も周辺も、みんなが言うほど「キングメーカーになりたい」というよりは派閥を維持するために勝ち馬に乗らないとせっかく大きくした船が沈没してしまうという危機感のほうが強いんじゃないかと思ったりはします。

 次いで、脱派閥を掲げて頑張ってきたはずのガースー元総理こと菅義偉さん(75)。そもそも派閥解消で頑張ってきた人なので、ようやく我が世の春でも来たと満足しているかと思いきや謎の岸田文雄ヘイトを発症してしまいました。いや、菅さんからしたら岸田さんの派閥全解消の英断は泣いて喜ぶべき立場じゃないの?

 なにぶん人を呼んでおいて15分の持ち時間のうち10分は寝てるとか「往年の、あの菅義偉」を知る面々からすると寂寥感も覚えますので、まわりの人もあんまり菅さんを表に出したり人に会わせたりしないようになってしまいました。すだれの向こうで院政を敷くと、間に立つやつが権力握ったりするのは朝廷や幕府の伝統ですが、大丈夫なのでしょうか。

 さらに東京五輪で派手にやらかしたのにまだ権勢を誇っている森喜朗さん(87)。裏金問題に揺れた旧安倍派(清和政策研究会)復興という謎の使命を抱いて小林鷹之陣営に推薦人を送り込む了承をし、実質的に後ろ盾に近い存在になりつつあるようです。相変わらず身近な人からの人望はかなりあるため、小泉進次郎が登板してきて不思議な人事介入や、謎予算などなど森さんの周辺にいる人たちが全力で入り込んできそうで注目が集まります。

 ただ、能登半島地震や面白知事・馳浩さんの一件では、周辺への細やかな配慮で立身された長老ならではのムーブも光りました。

 最後に俺たちの二階俊博さん(85)。老害四天王と揶揄される4人の中でもっともボケてない人物として、今回の総裁選でも中核に存在する逸材であります。本人のご勇退は決定的ながらも世耕弘成さん絶対に許さないマンとして屹立し、幹事長を退いてからも謎の存在感で、今回も安定の大ボス感を醸し出しています。

 長老の中で一番シャッキリしているの、実は二階さんなんじゃないでしょうか。普段はぼんやりしているくせに、ひとたび政局だ人事だ総裁選だとなると途端に電源が入って稼働し始めるのはさすがです。

なんだかんだ長老中心にかき集められる議員票を無視できない

 このような長老がなぜ隠然たる勢力を保てているのかと言えば、結局は総裁になりたい各候補者が積極的にご挨拶に顔を出したり、ご意向を伺ったりするからで、誰が誰のバックにつくのかで、推薦人20人だけでなく議員票をどのくらい積めるか期待する面があるのでしょう。そして、派閥が無くなってもなんだかんだで長老中心にかき集められる議員票は無視できないというのが実情なのだろうと思います。

 結果的に、自民党の古き良き、一方で弊害も多かった派閥政治はいったん解消するものの、結局は数は力、不透明な政治情勢をせめて数メートル先でも見通したい人たちが集まってきています。小惑星が集まって地球となるかのように、新たな政策集団として再編成されていく途上が今回の総裁選なのでしょう。

 そして、なんだかんだ自民党も当選4回以下が議員の半数以上を占め、中堅より下がギッシリ詰まっているのが特徴です。いまや中堅だ、40代だし若いんだというのはさしたる差別化・売りにはならないのだと理解しておくことが大事とも言えます。

 そんなわけで、今回自民党総裁選に名乗りを挙げた11名(+1名、記事執筆8月20日時点)のラインナップを見ていきたいと思います。

 なんでこんなに出てきたの、という点では、岸田文雄さんの「閣僚でも総裁選に出たいなら業務に支障のない範囲で頑張ればいいじゃないか」という容認が出た上、派閥も解消になったのでいろんな人に声が掛けられる点、さらに上を目指す議員にとっては今回出馬で名前も上がらないようでは先が見えてしまうという点で、記念出馬だとしても出られる馬がいい馬だという面はあるのでしょう。実際、名前も挙がらず出たくても出られない議員のほうが多いのですから。

 掲載の順番は「自らが出馬意思の表明を行った(ことが報じられた)順」でございます。

「金ぴかの経歴と、岸田文雄さんをキレさせた実績」小林鷹之(49歳)

 自民党4回生の中でも抜群の体力と金ぴかの経歴に裏付けられたスキのない地元対策で、選挙での盤石な強さを引っ提げ小林鷹之さんが大逃げを打っています。一番乗りだったためにメディア露出も増えて、今回勝つかどうかはともかく次回以降も注目候補として名前が挙がっていくことでしょう。ただ、小泉進次郎さんの出馬表明後は、徐々に勢力も下り坂。どこまで主要候補として粘れるかが焦点となってきました。

 出馬演説を見る限り、もうすぐ50歳という素材に相応しい重みが感じられない一方、政治とカネの問題では序盤から旧安倍派の面々を擁護するような発言をブチかまし、岸田文雄さんをキレさせ退陣表明を繰り上げさせた実績を持っています。

 議員としては中堅やや下に位置することもあり、選挙に弱い超大物・甘利明さんの傀儡になるのではという懸念もありつつ、実際に小林鷹之さんの推薦人は過去に高市早苗さんを支援した面々も並んでいて非主流派と若手の声望を一気に集める展開になっていますね。どちらかというと清和研究会的な保守寄りの立ち位置で、裏金議員を擁護する発言をしてしまったことで微妙な雰囲気になっています。

「地味に自民党員獲得数で23年度のトップ」青山繁晴(72歳)

 割と早いタイミングで名乗りを挙げていたはずが、みんなあまり本気で取り合ってくれない青山繁晴さん。まあ、議員としての実績はほとんどありませんからなあ……。参議院議員(それも全国比例)なので河野洋平・谷垣禎一に続く「総裁選に勝っても総理になれなかった人」を目指すことになるんでしょうか。本人がYouTubeでワーワーお話をされていますが、取材していても誰一人として青山繁晴さんに触れる人がいないので、エア出馬なのか本人の勘違いなのか、とにかく無風です。

 そういう微妙な人もウェブではなんだかんだ人気があって、30万票ぐらい取ってくれます。ふだん自民党なんて投票しない人でも一票入れていきなよっていう自民党の支持のウイングを広げてくれる人なので、身体から金粉が出ても気にしない。面白党員票の収容先として高市早苗さんあたりと悪魔合体してくれればもう少し青山繁晴さんにも注目が集まるのではないかと思わなくもありませんが。

 地味に自民党員獲得数では青山繁晴さんが23年度に関してはトップだった、というのは忘れてはなりません。

「いつの間にか慎重な観察が求められる候補に」高市早苗(63歳)

 前回の総裁選でも安倍後継を掲げて善戦したものの、その後の奈良県知事選での体たらくや放送法文書捏造問題で議員や関係先から呆れられ、一部の民族右派界隈以外は“名前を口に出してはいけないあの人”扱いされてしまっている高市早苗さんも名乗りを挙げています。

 ただ、高市さんをかつて支えた人たちは小林鷹之陣営に流れていき、全国行脚しつつもその土台は相変わらず日本会議系、付き合う議員にも大物は少なく、「出馬することに意義があると思ってそう」「ジェンダー的な数合わせで、(自分以外の)別のやつが推薦して出馬してくれないかと思っている」など、評価はさんざん。しかし、萩生田光一さんの漢気モードで推薦人もやや増えて、無事出馬まではできそうな雰囲気です。

 経済安全保障担当大臣も今回でお役御免であることを踏まえれば、これが最後の輝きになるのかどうか、慎重な観察が求められる候補になってしまいました。

「上川さん、いいと思うんだけど、何をしたい人なのか…」上川陽子(71歳)

 長老がうっかり「上川陽子は(総裁選に)どうか」と口に出したら、周辺の派閥議員がざわざわした結果なんとなく総裁選候補の一角になってしまった、みんな大好き上川陽子さん。優秀だし控えめだし淡々と仕事をするという意味では、日本憲政史初の女性総理大臣として割といい感じな気もしますが、任期最後に外務大臣の職責をぶん投げるかのようなムーブがあって、あれ、上川さんってそういう人だったっけという流れに。

 結果的にガセネタだったんですが、思い返せば上川陽子さんの話題ってそれぐらいしかないほど地味なんですよね、いまや日本憲政史初の女性総理大臣にもっとも近い人物なのに。

 議員からは「上川さん、いいと思うんだけど、何をしたい人なのか良く分からないんですよね」「ずっと一緒にいるけどどうしたいか話したことがない」など、味のしないスルメ的なポジションでやってきた、女性議員としては稀有な存在と言えます。

 党務方面ではその優秀さとつかみどころの無さ故に「おんな竹下登」「野球部にいる地味なほうのマネージャー」という評価が定まっています。面倒な雑務の多い重要閣僚に起用すると誰も文句を言わないので人事面で便利という扱いで、林芳正さん以上にいい具合の自民党政治パーツになっている面があります。

 他方で、緩いスタートだったのに上川陽子支持者が周りに意外といたのでびっくり。総裁選に出馬すると割といいところまでいくのではないかという話もあり、選挙管理内閣の顔としてどうだという議員も少なからずいるようです。

 ただ、実は本人も旧民主党への政権交代時に比例復活もできず派手に落選してるんですよね。しかし、貴重な女性候補なのに「消去法で上川陽子」という人たちばかりなのは何なのでしょうか。もっと熱量上げていこうぜ。

「腹芸も空気を読むことも絶対にしない」石破茂(67歳)

 未完の大器とかダークアンパンマンなど蔑称も多い割に国民的声望の高い石破茂さん、どうも出馬にめどが立つと言ってます。ほんとかね。いや、まあ出られるんなら是非どうぞってことで、久しぶりにクーラーつけたらカビ臭かった系の総裁選出馬芸人みたいになっております。大丈夫なのでしょうか。

 候補者が乱立しているところでうっかり石破茂さんが出てしまうと、勝てる見込みのない石破茂さんに貴重な党員票が集まってしまい、結局議員票を多く獲得できる候補者が有利になる決選投票になってしまうジレンマがあります。

「石破茂さんが出ると党員票が割れるので、一回目の投票で過半数を取って勝ちたい小泉進次郎さん陣営からすると、迷惑な存在じゃないですかね」という火の玉剛速球な評価も散見されておりますよ。

 石破茂さんのことですので、身を引く代わりに重要閣僚のポストを要求するような腹芸などできるはずもなく、20名の推薦が集まったら何も考えず出馬、政策討論ではいろんなことを放言し、古い自民党政治で議員票をかき集めた新総裁の引き立て役的に終わるのではないかと心配で昼も寝られません。

 一番の懸念は、選挙管理内閣としての期待をもって総裁になった石破茂さんが、総理としての仕事をしたがって解散しないまま来年の衆議院任期満了まで引っ張ろうとすることではないかとも思います。口では「すぐに民意を問う」と早期解散ぽい話はしてますけどね。

 国民への人気をあてこんで石破さんを選ぶ議員からすれば、さっさと解散総選挙してくれって考えるはずなんですけど、石破さんは絶対に空気読まないでしょう。ほんと、大丈夫なのでしょうか……。

〈 まさかの本命に躍り出た小泉進次郎さんに「消去法で勝っちゃうかも」な人まで…自民党総裁選に名乗りを上げた12人を比べてみた 〉へ続く

(山本 一郎)

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