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まさかの本命に躍り出た小泉進次郎さんに「消去法で勝っちゃうかも」な人まで…自民党総裁選に名乗りを上げた12人を比べてみた

文春オンライン / 2024年8月27日 11時0分

まさかの本命に躍り出た小泉進次郎さんに「消去法で勝っちゃうかも」な人まで…自民党総裁選に名乗りを上げた12人を比べてみた

小泉進次郎 ©文藝春秋

〈 12人の勇者が乱立し、4人の長老が暗躍…自民党の総裁選は結局どうなっているのか「長老をバックに世襲議員」というオールドな体質は健在? 〉から続く

 12人が乱立し、思いがけず大変なことになってしまった自民党総裁選。「自らが出馬意思の表明を行った(ことが報じられた)順」で、前編では小林鷹之さん、青山繁晴さん、高市早苗さん、上川陽子さん、石破茂さんまで紹介してきました。

 後編は、まさかの本命になりつつある小泉進次郎さんからです。

「人気あるし真面目だし毛並みもいいんだけど能力的に全く未知数」小泉進次郎(43歳)

 いつかは勝負をかけてくるはずのプリンス、どうも出馬含みの話が出てきて踏ん切りがついた模様です。出馬方針が明らかになれば推薦議員20名のハードルも楽勝でクリアになるとしつつも、なぜか本人が電話かけて推薦人集めをしているご様子。

「まだ推薦人集まり切っていないので、先生にもぜひご協力をお願いします」と下手に出る作戦なのでしょうが、さすがに海千山千の先生方は「出馬表明後に議員票をお願いするより出馬前に一本電話を入れておくような芸って、いったい誰が仕込んだんだろうね」と仰っておりました。進次郎さん自分で考えた作戦なんですかね?

 もちろん最大の障害は、人気あるし真面目だし毛並みもいいんだけど能力的に全く未知数なことで、周りにまともな奴をつけて担げばどうにかなるだろうとしつつも「軽い神輿にも限度がある」「飯を食っていてもやる気は伝わるが、何をやろうというのか良く分からない」など身近なところでの評判もさんざんです。古い自民党政治を立て直す的立ち位置なのに、実は長老が後ろ盾の世襲4世であって、おまえいろいろ言うけどしょせんは体制側じゃんってのはあります。

 一番面白かったのは「あいつは富士山みたいなもので、遠くから見ていればかっこいいんだけど、近くにいるとゴミだらけだからいい距離感でメリットを引き出しつつ付き合うしかない」という長老のお言葉でありました。頑張ってほしいと思います。

 「人気は陰り気味だけど熱心に推す議員も」河野太郎(61歳)

 自然エネルギー財団お手盛り事案にデジタル庁での失態と、国民からの人気も陰り気味の河野太郎さんももう61歳。若手どころか中堅すら超えて重要閣僚経験者ですから、そろそろ勝負をかけないといけない時期に差し掛かってきました。かねて脱原発を掲げて自民党内の左派として論客商売をしていたのもいまは昔、議員票を集めるためにも原発推進に回ったものの河野さんを信用できるのか問題が付きまとうのも致し方ないところかなあとは思います。

 他方でこの難局で突破力があるのは河野太郎だとばかりに太鼓判を捺す議員も周辺にはおり、なんだかんだ「河野さんが出るというのなら推薦人で出る」「能力と人気を比べれば、本格政権を見込める河野太郎さんに期待するのも当然」と熱心に推す議員がいるのも事実です。

 もちろん、後ろ盾として期待するのはガースーや麻生派なのですが、本当に突破力があるのなら今回乾坤一擲で麻生派からの離脱も選択肢にあったんじゃないですかねえ。案の定、ガースーからは小泉進次郎推しを表明され、麻生派も幕下の甘利明さんが小林鷹之推しなのもあって自由投票になりかねない雰囲気です。……何のために麻生派にいるの?

 一時期は「官房長官に齋藤健をつけるから河野太郎で」とメディアに話を流していた長老もいたんですが、最近は話を聞かなくなりました。もっとも、齋藤健さんも今回出馬したがってますからね……。

「役人から人柄と能力を絶賛されるも…」林芳正(63歳)

 自重して出ないのではと思われた林芳正さんですが、上を目指せる政治家はとりあえず出馬意欲を示せ的な雰囲気に煽られたのか何か言ってました。いや、本人からすれば今回みたいなどさくさに紛れて出馬して総理総裁を目指すというよりは、もっと幅広な政策議論をしながら重厚感のある総裁候補としてエレガントに当選したいんじゃないかとすら思うんですが……。でも結局、出馬意欲あるよ会見まではしており、役人からも絶賛される人柄と能力を併せ持つ人物故に待望論は出るでしょう。

 どっちかというと器用な中継ぎ投手として問題があるたびに担ぎ出されて便利使いされる傾向が強かったのも寝首をかかない参議院議員だった頃の話で、衆議院に鞍替えして1回生ということもあり「言うだけ言って、結局(官房長官の仕事が忙しいなどの理由をつけて)自重するのでは」という予測も多く出ています。どうなるんでしょう。

 他方で「表情一つ変えず面倒な質問を捌く官房長官が適任」「輝く親方がいるから林芳正がシブく仕事できるんじゃないかな」という、能力を認めてるんだか地味だから引っ込めと言われてるんだか分からん議員からの下馬評も多いのが特徴とも言えます。

 まあ実際には知名度が低いので選挙の顔としては厳しいと思われるのも仕方がないのかもしれません。

「悪い人ではないと思うよ。いい人でもないけど」加藤勝信(68歳)

 名官房長官とされた菅義偉さんが政権を担った時の官房長官に指名されて、いるんだかいないんだか良く分からないながら謎に政策通という評価だけが残った加藤勝信さん。ネット的にはいつ見ても画像に加藤勝信が見切れている「かつのぶフレーム」が人気で、岸田文雄さんが突然の総裁選不出馬=総理辞任見込みで世間が大騒ぎになっているなか、何も気にすることなく地元でうどん喰ってる画像が堂々と掲載されていた加藤勝信さんのハートの強さが光ります。何してんだよ。

 議員間の評価では、推したくない茂木敏充さんに対する指名打者みたいな感じで「(平成研究会的に)茂木さんを推せないので加藤勝信さんに」「悪い人ではないと思うよ。いい人でもないけど」という実に冷めた雰囲気が広がりながらも「消去法でどさくさに紛れる展開ならダークホース的に勝っちゃう展開もあるかも」という声も絶えません。消去法という点では上川陽子さんなみに名前が仕方なく上がる加藤勝信さんに勝機はあるのかどうか。

 良くも悪くもみんな凄く推しているわけではないけど、展開次第でまあ加藤勝信でいいじゃんみたいな状況になると一発あるぞ的な状況はその控えめなお人柄ゆえでしょうか。数少ない非パワハラ系の小渕恵三路線でいけるのではと思います。昔なら、密室で加藤勝信総理が爆誕してたんでしょうけどね。

「誰が勝ってもとりあえず官房長官に」齋藤健(65歳)

 年齢的にはラストチャンスに近く、重要閣僚も経験したけど地味すぎてどうするのかと思われていた齋藤健さんも出馬に意欲を示していました。しかし、出馬の理由が「まわりからの声に押されて」的な、芸能人オーディションに勝手に友達が応募してしまい仕方なく来たら優勝しました風のエピソードの時点で当事者性をあまり感じません。

 重要閣僚を任されるぐらいには期待されている人物なんですけど、大物政治家にありがちなギラギラとした権力欲的なものを一切感じないんですよね……。

 もともと河野太郎さんが総裁になるのなら齋藤健さんを官房長官にという声があったぐらい安定感のある人ですが、基本的に政策面ではかなり左翼なため選挙管理内閣で早期の解散総選挙になった際には割とゴチャゴチャしそうな御仁でもあります。

 齋藤健さんに声をかけた議員によれば「齋藤さんぜひ(総裁選に)出ましょうよと尋ねたら、やっぱり出るべきかなあという緩い返事だったので、むしろ出馬意欲を示すコメントを出していてびっくりした」とのことなので、総理総裁になってまで実現したいすごい政策的な何かがある人ではないのだなあと思ったりもします。

 その分、誰が勝ってもとりあえず官房長官に置いとこうぜってなりやすい政治家なんでしょうね。重要閣僚である経済産業大臣なども歴任している、それなりに大物なのですけど。

「本来なら全力で先行して牽制すべきところが…」茂木敏充(68歳)

 今年で幹事長1年かける3回の最終年、岸田文雄出馬が無くなって勇躍主力候補に躍り出たのが我らがモテ幹・茂木敏充せんせであります。今回こそはと言いつつ、立場的に別にラストチャンスってほどでもないし、しかも茂木派(平成研究会)は一枚岩には程遠く……。ということで、本来なら全力で先行して早めの出馬会見で牽制すべきところが馬群に揉まれているのが気になるところです。

 余裕があれば、一度若い奴にやらせてみて、大変なことになって、やっぱり能力の裏打ちのあるベテランがいいという揺り戻しを次で期待する感じなんでしょうか。

 世評でこそ政治家としては切れ者とされ、能力的にピカイチとも言われるものの、お仕えした官僚たちからの評価はそこまで高くなく、パワハラ問題を差し引いても「今回は記念出馬までで、決選投票には残れないだろうから重要閣僚へのスライドがせいぜいでは」「負けるのはともかくウチの大臣には来ないでほしい」と評価がさんざんなのは気の毒であるとも言えます。

 さらに、知名度の低さが気になったのかネット戦略をしかけてはいますが成功しているとはとてもいえず、あまりそういう方面に勘所のない人なのだなあというところが茂木さんの面白さと言えましょう。実はすごくシャイでピュアなお人柄なのに、なんかもったいないよなあ。

「20名の推薦人は集まりがたい状況か」野田聖子(63歳)

 前回総裁選でも意欲的だったにもかかわらず推薦人が集まらず、二階派から議員を借りて出馬するも惨敗という結果となりました。まあ、野田聖子さんもいろいろありますからなあ……。

 今回も名乗りこそ挙げていますが、うっかり上川陽子さんが出馬意欲を示したことで相対的に埋没し、また共同親権法案の衆院採決で造反したことから「政治家として筋を通したいのは分かるけど、(党の根幹を左右するほどの重要法案でもない)そこでやるのか」ということで、人は離れてしまって20名の推薦人は集まりがたい状況のようです。

 まあ、うっかり野田聖子さん担いだところで勝ち目が薄いので、良きところで降りて他の勝てそうな候補に乗っかり直して実利を得る以外に方法がない候補になってしまっている面はあります。

 もっとも、頑張って人を集めて出馬まで漕ぎ着けるのが総裁選だとするならば、オリンピック同様出馬することに意味があると割り切って頑張っていっていただきたいというのが正直な見解です。ここでガッツリ踏ん張れれば、再び重要閣僚での起用で日の目を見ることもあるかもしれません……。

岸田さんの「重要な仕事はきっちりこなしてきた感」

 候補者の振り返りをしていると、菅義偉さんが爆死した後に出てきた本格派・岸田文雄さんの、何をしたい宰相なのか良く分からない割に重要な仕事はきっちりとこなしてきた感は強くあります。

 本来は岸田さんの責任とまでは言い難い政治とカネの問題に応えきれず、最後は本人の美学で任期満了にて総裁を降りる決断をしたというところに、筋論で政治が回る日本社会の侘び寂びを強く感じるんですよ。

 岸田さんの偉業は枚挙にいとまがない反面、去年は公私混同が、今年は政治とカネが、と周辺に足を引っ張られては解散の決断ができず流されているようにも見える雰囲気でした。

 ただ、従来は票にならないと思われてきた外交・安全保障問題においては岸田さんはまぎれもなく日本政界の第一人者として君臨し、対米外交も対中国もアジアも欧州・ウクライナ問題から最後はパレスチナ・イスラエル間の紛争まで、G7広島サミットを金字塔としてオールジャンルで水準以上の成果を出すことができたのが岸田政権であったかと思います。

 内政面でも増税メガネと揶揄されブチ切れながらも、脱コロナ経済と物価高対策には一定の成果を出し、曲がりなりにも日経平均バブル後最高値更新を果たしたあたりは本来はもっと称賛されてしかるべきものです。

総裁選で誰が何を言うのかはちゃんと見ておこう

 他方で、岸田政権の積み残した荷物を新総裁が引き受けるにあたっては、まず何よりも解散総選挙を早期につつがなく実施し、来年の参院選と都議会選挙で勝利の道筋をつける選挙管理内閣としての役割があります。

 それと並んで、実は喫緊の課題である政府や自治体の情報化や円安物価高、何より高齢化に伴う社会保障改革は待ったなしであり、国民の生活の基盤となる年金や社会保険料も含めた世代間格差をどのように埋めていくのかは難題として残されました。

 選挙で勝てる顔を選びたいというのは間違いなくそうであるとしても、その若く新しい総裁総理が早期解散総選挙で勝つ横には高齢者の貧困や地方の人口減少問題などの特効薬のない政策分野が横たわっていて、国民の生活に直結する問題がそのまま残っています。

 今後、自民党総裁選では出馬各氏が華やかに政策論争を行う裏で、診療報酬改定や国防・警察DX、年金・社会保障、エネルギー基本計画の策定など重要な政策課題が目白押しであることも踏まえて、誰が何を言うのか、国民にとって誰が為政者として本当に相応しいのか見極めていく必要があるのではないかと思ったりもします。

 さらに、今回の自民党総裁選は、なんだかんだでせいぜい100万人の党員と自民党国会議員だけが投票権を持つ、別に法律で決められたわけでもない何でもありの内輪の選考に過ぎません。そこで選ばれる疑似的な政権交代の結果、実はほぼ全国民の生活が左右されるという歪で不公正な枠組みになっていることはよく理解しておくべきです。

 もちろん、公党がそういう形で党のトップを決める、そしてそれが与党として政権を担うのだから、間接民主主義の原点からすれば当然なのだとも言える一方、自民党総裁選が毎回盛り上がるたびに「本当に、これでいいんだっけ」って思ってしまうんですよね。

(山本 一郎)

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