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20年の時を経て映画化されたベストセラー小説『ミルクティーを待ちながら』…新世代の台湾アイドルはなぜ起用されたのか?

文春オンライン / 2024年8月27日 17時0分

20年の時を経て映画化されたベストセラー小説『ミルクティーを待ちながら』…新世代の台湾アイドルはなぜ起用されたのか?

『ミルクティーを待ちながら』台湾版ポスター ©️Mandarin Vision Co., Ltd.

〈 サッカー・コーチと関係を持ち、妊娠して棄てられた14歳の少女は売春を始めた…衝撃作『少年と少女』が描いた“台湾社会の暗部” 〉から続く

 リム・カーワイ監督をキュレータ―に迎えてリニューアルした「台湾文化センター 台湾映画上映会」。その第5回が8月25日、台湾文化センター(東京・港区)で開かれた。

 累計100万部を突破、2年連続でベストセラー1位となった大人気インターネット小説「一杯熱奶茶的等待」を、約20年の時を経て著者のジャン・フーホアが自らの脚本・監督で映画化した。アイドルグループSpeXialの元メンバーのサイモン・リアン、エレン・ウー、アレックス・チョウら新世代台湾アイドルの出演も話題。(全5回の5回目/ #1 、 #2 、 #3 、 #4 を読む)

◆◆◆

 この日上映されたのは2021年製作の『ミルクティーを待ちながら』。トークイベントには、本作のジャン・フーホア監督がオンラインで、会場にはWEBメディア「Howto Taiwan」編集長の田中伶さんが登壇した。

『ミルクティーを待ちながら』

バレンタインデーの寒い夜。美術大生のシャオホア(エレン・ウー)は、学生寮の前で恋人の帰りを待つアウェン(アレックス・チョウ)を見かけ、自販機で缶の熱いミルクティーを買って手渡し親しくなる。アウェンの恋人が二股をかけていると思ったシャオホアが、その相手ズージエ(サイモン・リアン)に忠告したことから、2人の距離が縮まっていく。次第に心を寄せ合うズージエとシャオホアだったが、それぞれ心に傷を負っていた。監督:ジャン・フーホア/出演:サイモン・リアン、エレン・ウー、アレックス・チョウ/2021年/台湾/114分/©️Mandarin Vision Co., Ltd.

止まっていた世界が再び動き出す

田中伶さん(以下、田中) こんなに寒そうな台湾映画は初めてでした。タイトルや予告編から、胸キュン・トキメキ・ラブストーリーかと思っていたら、意外と人に見せたくない心の中のことが描かれていたり、事件も次々に起きる。すごく繊細な作品だと思いました。フーホア監督が原作の小説を書かれたのは2001年のことだそうですが、なぜ20年の時を経て映像化されたのでしょうか。

ジャン・フーホア監督(以下、フーホア監督) 小説を書いたのは私が大学4年生の時から卒業までの間でした。その後、私は映像の仕事をするようになり、脚本を書いたりしていました。『ミルクティーを待ちながら』はとても人気のあった小説でしたので、映像化したいという話をいくつもいただいていました。けれど、映像化に対処するにはまだ私自身が未熟だと思っていて、断ってきたのです。そして、コロナ禍の時期になり、世界がまるで止まってしまったようになりました。その時私は別の作品を作ろうとしていたのですが、それもストップしてしまった。

 そんなときに『ミルクティーを待ちながら』の話が出たんです。小説を書いてから20年が経ったけれど、この小説に出てくるのはみんな、何かを待っている人。これからどんな道を進んでいくか考えていたり、過去と決別して生まれ変わりたいと思ったり、人生の節目にある。その時、コロナで世界が止まってしまって、再び動き出すのをみんな待ちわびていました。再び世界が動き出す温かい物語を、今こそ映画にしたいと思ったのです。

悲しみを表に出さないで笑顔を作る難しい役柄

リム・カーワイ監督(以下、リム) キャスティングについても聞きたいですね。

田中 ズージエ役のサイモン・リアンは本心を見せずににこにこ笑っている感じがぴったりですね。

フーホア監督 そうですね。ズージエを演じたサイモンはアイドルをしていて、これが初めての映画出演でした。映画の中と実際の彼はあまり共通点はありません。けれど、ズージエは心の中の悲しみを表に出さないで笑顔を作っています。サイモンも自分では意識していなくても、笑顔の底に何かがあるような、複雑な心情を感じさせる人でした。それで彼を起用したんです。なかなか演じるのに難しい役柄でしたから、役作りについて彼とずいぶん話をしました。ヒロインを選ぶのには、多くの女優と面接をしました。エレン・ウーと会ったとき、彼女の内に悲しみをたたえているような佇まいに惹かれました。

 観客からは、なぜコーヒーやお茶ではなく、ミルクティーだったのかと質問が出た。

フーホア監督 もとの小説の7割くらいには実際にモデルがいました。温かいミルクティ―を傷ついている人に渡すことで、自分も救われるというのは、私自身の経験です。そういうことが実際にあって、私は小説を書き始めたのです。なぜミルクティーかというと、そういうことが実際にありましたし、当時私がよく飲んでいたからです。コーヒーと違って苦みがなく、甘みがあって、幸せな気持ちになれますよね。

どんな人でも受け入れる寛容さ

リム 台湾映画の魅力を聞かせてください。

田中 私は台湾が大好き、台湾旅行が好き、台湾の人々が好きです。台湾映画を通して、台湾の人々や文化や習慣をリアルに知ることができます。『ミルクティーを待ちながら』では、バレンタインデーに対する台湾の人々の情熱がすさまじいことを知りました(笑)。こういう映画を観るとロケ地に行きたくなりますし、台湾に行くとまた映画を観たくなります。

フーホア監督 台湾の魅力、台湾人の魅力は、どんな人でも受け入れる寛容なところだと思います。台湾映画は形式はさまざまですが、身近な善良さを描いています。台湾の人々の実生活に近いところを描いている、それが台湾映画の魅力のひとつではないでしょうか。

INFORMATIONアイコン

『ミルクティーを待ちながら』の上映があります。

 あいち国際女性映画祭・海外招待作品
 9月5日(木)午後6時30分~
 ミッドランドスクエア シネマ2(名古屋市・名駅)にて
 詳しくは映画祭HP  https://www.aiwff.com/2024/ まで

(週刊文春CINEMAオンライン編集部/週刊文春CINEMA オンライン オリジナル)

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