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「音楽人として誤解され、まっとうに評価されないことに悩んだ時期もある」悩み続けた桑田佳祐が辿り着いた“サザンオールスターズの本当の姿”

文春オンライン / 2024年10月14日 11時0分

「音楽人として誤解され、まっとうに評価されないことに悩んだ時期もある」悩み続けた桑田佳祐が辿り着いた“サザンオールスターズの本当の姿”

©︎時事通信社

〈 「全然売れねぇ~」桑田佳祐が振り返る名曲「TSUNAMI」が生まれるまでの“苦しかった日々” 〉から続く

 1977年のデビュー以来、“国民的バンド”として人気を集めている「サザンオールスターズ」。彼らの半世紀近くの歩みを綴ったノンフィクションが 『いわゆる「サザン」について』 (水鈴社)である。ここでは一部抜粋し、悩みぬいた末に桑田佳祐が辿り着いた“サザンオールスターズの本当の姿”を語る。(全3回の3回目/ #1 、 #2 を読む)

◇◇◇

これから先のサザンオールスターズ像とは?

 茅ヶ崎ライブの少し後のこと。再び桑田にインタビューする機会があった。その時、彼はこんなことを言った。「今回の茅ヶ崎は内容的にも非常に充実し、やり尽くした感もあったし、なによりやっていて楽しかったし、実はあれがファイナルでも良かった」。

 この場合のファイナルは、サザンオールスターズというバンドのファイナル、ということでもあり、この言葉は実に重たい。しかし間を置かず、彼はこうも続ける。

「でも、これこそがサザンの“やめそびれた歴史”というか……。メンバーやスタッフに向けては困り顔なのに、ファンの皆さんに対しては、“待っていてください!〞なんてことを、つい言ってしまう」

 確かに桑田は茅ヶ崎ライブの〆の言葉として、こんなメッセージを客席に届けた。

「また楽しい逢瀬が叶いますよう、サザンオールスターズ、次なる計画を練って、皆さんにご報告することをお約束いたします!」

 現在はサザンオールスターズのレコーディング中であり、2024年6月25日に「恋のブギウギナイト」を発表後、現時点の計画では、冬のリリース予定でフル・アルバムを目指すという。アルバムが完成したら、きっとツアーに出掛けていくことになるのだろう。これから先のサザンオールスターズ像というのは、いったいどんなものなのか。

「おかげさまでこれだけ長い間活動でき、それで調子づいてやってきたところもあるけど、例えば45歳のころに何も考えずやっていたことも、最近は考えてしまうわけでね。自分自身、声もだんだん出にくくなっている。かつての自分達と較べてしまうと、さまざまな齟齬 に悩むことになる」

 では、どうしていけば?

「今後サザンオールスターズを起動させる際は、本音としてもうあまり無理せず、肩肘張らない“気軽な気持ち”がベストだと思っている。もちろん今まで通り、メンバー・スタッフ一丸となって、満を持してファンやメディアの前に出ていくべきだと思うけど、あくまでそのことを忘れずにね」

「誤解され、まっとうに評価されないことに悩んだ時期もある」

 現在の心境・境地というものは、昨日今日、芽生えたわけではない。本書を読めば判るだろうが、このバンドは恵まれた日向の道を歩んできたようで、時に暗がりで躓つまずきもしたのである。桑田に話を聞いていても、時折、話はそんなゾーンへ突入した。

「こう見えても自分は、音楽人として誤解され、まっとうに評価されないことに悩んだ時期を経験している。というか、サザンの活動というのは、それに抗うための歴史だったかもしれない。ただ、歳を重ね、経験を積んだせいか、大衆が持つ“イメージ〞こそが“自分達の本質〞であり、さらには“武器なのではないか?”と考えられるようになった。そのことは大きい。そんな思いが、ここ数年の仕事のスタンスをとても楽にしてくれてるし、昨年の茅ヶ崎ライブにも貫かれていた気がする」

 さらに、彼が正直な気持ちとして話してくれたのは、原由子の存在である。改めて、彼女について訊ねてみると、こんな言葉が返ってきた。

桑田佳祐から原由子へのメッセージ

「原さんには私の妻としての部分、子供に対する親の部分、そしてもちろん、46年もやっているバンドの、前人未踏の紅一点のミュージシャンとしての部分がある。彼女はピアニストとして、フレーズ・メーカー、作曲家として、本当に素晴らしいと思う。デビューして4、5年までの時期は、メンバーとの関係や、それ以外にも関わる人々が増えていき、団体活動をしていくなかで僕は疎外感や孤立感を味わうことも多く、そういう時、原さんが相談相手になってくれたし、僕も彼女から相談されたし、色々と話し合ってきた。それは“大勢のなかの二人三脚”ともいえて、これが精神的に大きかった」

 このあと、桑田はある写真の話をした。それは特別なものではなく、先にもふれたように。

 45周年のとき、ひろくメディアに拡散された、メンバーの集合写真である。全員スーツ姿でフォーマルといえばそうだが、ネクタイは緩めであり、先ほどの桑田の「気楽な気持ち」も伝わってくるものだった。

メンバー5人の“理想的な形”

「あの写真は、原さんが真ん中に座っているんだけど、それがメンバー5人の位置関係としても、すごく“理想的な形”に思えてね。今のサザンオールスターズを説明するうえでも、いちばん分かりやすいんじゃないかと。原さんという女性を中心に、みんなで自然に前を向き、微笑んでいる、あの姿がね」

 デビュー以来、サザンオールスターズはバンドの宿命とも言える集合写真を、何千、何万枚と撮影してきたことだろう。コミックバンドと間違われた初期は、おどけたポーズを求められた。音楽が認知され自信が出てくると、カメラに正対した堂々としたものへ変化した。楽曲コンセプトに合わせ、コスプレをしたこともあるし、世の中のモードも移り変わり、表情ひとつにも、齢とともに思慮深さが加わった。そして今、サザンオールスターズは、この一枚の写真へと至ったのだ。

 ところで本書を書き終えようという時、桑田からメッセージが届いた。それは正直すぎるほどの文面で、読みようによっては、「そんなことないですよ、桑田さん」と、思わず声をかけたくなる内容だった。でも、最後に原文のまま、掲載させていただくことにした。

(小貫 信昭/ノンフィクション出版)

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