「人間が理想とする最終形態」は頭から段ボールを被って路上を徘徊する“箱男”だ 「箱男」を採点!
文春オンライン / 2024年9月3日 17時0分
©2024 The Box Man Film Partners 配給:ハピネットファントム・スタジオ
〈あらすじ〉
頭から段ボールを被り、路上を徘徊し、覗き窓から世界を一方的に覗き、ノートに妄想を記述する箱男。社会的なしがらみから解き放たれたその存在は、人間が理想とする最終形態だ。
カメラマンの“わたし”(永瀬正敏)は街で偶然見かけた姿に心を奪われ、箱男としての人生を歩み始める。しかし、箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ医者(浅野忠信)や箱男を犯罪に利用しようとする軍医(佐藤浩市)、謎の女・葉子(白本彩奈)が現れ、わたしを翻弄する。そして、ニセ医者と本物の箱男の座をめぐり争うことになり――。
〈解説〉
安部公房の小説の実写化。石井岳龍監督(『狂い咲きサンダーロード』)が、一度は撮影中止となった企画を27年の時を経て完成させた。「箱男」という装置を媒介に人間と社会、自己と他者の関係を描く。120分。
中野翠(コラムニスト)
★★★★☆ダンボール箱の中に姿をかくし、外界をのぞき見る男。見られることなく見ること。箱男自体の描写、もっと欲しかった。
芝山幹郎(翻訳家)
★★★☆☆勢いを感じさせる立ち上がりだが、失速も早い。既視感のある哲学的言辞の氾濫。画面の暗さと独白の多さも気にかかる。
斎藤綾子(作家)
★★★☆☆段ボール箱で全身を隠してパルクールっぽい逃走の闘争が仰天の面白さ。50年前の原作と思えない自己消滅と他者観察。
森直人(映画評論家)
★★★☆☆伝説的な企画の実現に感涙しつつ時代的な齟齬も痛感。都市の異物か、アングラの遺物か。箱男の持つ批評性が掴み難い。
洞口依子(女優)
★★★★☆全ては箱の中と気づく時、劇場から出て都会の片隅の掃き溜めに箱を探さずにはいられない。サウンドと白本彩奈に星。
INFORMATIONアイコン
箱男(映画『箱男』製作委員会)
新宿ピカデリーほか全国公開中
https://happinet-phantom.com/hakootoko/
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年9月5日号)
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